第2話 トーナの願い
「次の方こちらへ!」
「あ、はい…」
「お名前と能力を教えてください!
私の能力は嘘を見抜くことができますので
盛ることのないようお願いします。」
「私の名前は、トーナ…、能力は——」
「!?、すごい能力ですね…!
貴女ならきっと優勝を目指せます!
頑張ってくださいね!」
「ありがとうございます…」
「私からは以上となります。
別の者が持ち物検査を行いますので、
あちらにお進みください。」
「わかりました…」
私はここに来るまでの間、ずっと怖かった。
周りにいる人たちの目は私と違う…
自信がある。怒りがある。想いがある。
私は…恐怖しかなかった…。
怖い…戦いたくない…。
私なんかが優勝できるはずがない…。
でもどうしても叶えたい願いがある。
お兄ちゃんに会いたい…!
お話がしたい。一緒にご飯を食べたい。
また家族3人でお出掛けがしたい…!
どこに行っちゃったの…お兄ちゃん…。
——5年前——
兄 カームが居なくなる前
「あっ居た、お兄ちゃん!
またお母さんに叱られる!!
お母さんどこに来るか教えてー」
「トーナ。また何かイタズラでもしたのか?
シシッ、お兄ちゃんに任せとけ!」
「うん!お願い!」
「よし!『
(なるほど、え、もうすぐここに来るじゃん!?
シシッ、トーナには悪いが少し騙してやる!)
「5分後にここに来るからまだ安全だぞ」
「ほんとっ?ありがとう!お兄ちゃ—」
「トーナァ〜」
「お、お母さん!?お、お兄ちゃん騙したの!?
ひどいよぉ〜」
「シシッ悪いなトーナ、たまには酷く叱られな!」
「お兄ちゃんのバカ!」
「まったくあなたって子は!——」
5年前の私は、よく笑って、よく泣いて、
よく喋る、少し明るめの女の子だった。
よく喋るとは言っても近所の人たちは苦手なため
主に家族に対してだ。
家族は 母 兄 私の3人で、
父は私が生まれてすぐに病気で亡くなったらしい
なので3人で暮らしていた。
これからもずっと3人で暮らしていきたかった。
ある日お兄ちゃんは置き手紙と共に居なくなった。
それは、私が能力を授かる3日前だった。
朝起きてリビングに向かうと、机の上に
紙が置いてある。そこには、
〔家族へ、僕の能力で少し未来を見たところ、
明日から3日間は、気象が荒れて危険なので、
外出は絶対にしないでください、絶対にです。
僕は友達の家にしばらく泊まります。
トーナへ、誕生日には会えそうにないので先に
言っておきます。誕生日おめでとう。〕
と、書かれていた。
お母さんと私はその手紙を信じ
外出はしなかった。
だけどその3日間、天気はずっと快晴だった。
お兄ちゃんの能力は『
触れたもの、もしくは自身の未来が見える能力。
そんな能力のお兄ちゃんがまた私を騙した。
そう思っていた。
私は今日手に入れた能力で仕返ししてやろうと思っていた。
だけど、次の日も、また次の日も帰ってこない。
お兄ちゃんが居なくなって1週間が経った。
流石に私たちは心配になった。
私とお母さんは、近所の人に訪ねに行った。
だけど、聞いても誰も知らないと言う。
捜索願を出すもあまり協力的でない。
それもそのはず、私たちの家族は町の人に好かれていないからだ。
昔、私が生まれてすぐにこの町に引っ越して来た時のこと、近所の人たちから、
〔子供の遊び場を奪うな!〕〔出て行け!〕などの
手紙が多く届いたという、気にはしなかった、
私たちはそもそも裕福な家庭ではないので、
気にする訳にはいかなかったからだ。
それからも、ありもしない噂などが広められ、
私たちはますます避けられて生活をしてきた。
頼る宛がなくなった。
困り果てた私は思い浮かんだ、
なんでも1つ願いが叶えられる能力が貰えるバトルロワイヤルが10年に一度開催される。
それを、お母さんに伝えるのは気が引けた。
お母さんからしたら家族の3人が近くから
いなくなるから。
私は、毎日お兄ちゃんの帰りを待ちながらも
能力の使い方を練習した。
そして5年が経った。
お母さんには悪いけど、私もお兄ちゃんのように
手紙を置いて家を出た。
たった一言、〔お兄ちゃんと一緒に帰って来ます〕
とだけ書いて。
私はこのバトルロワイヤルに勝利して、
『思造』を手に入れて願う。
———と。
だけどやっぱり怖かった。
『思造』は死者の復活はできない。
もし願って叶えられなかったらそう言うことになる。その事実を知るのが怖い。
でも、お兄ちゃんならきっと大丈夫。
信じている。
———————————————————————
「持ち物検査をします。私の能力で調べさせてもらいますのでそのまま動かず居てください」
「はい…」
「こちらの武器をお使いになられるのですか?
珍しいですねクロスボウなんて、」
————————
「はい!異常なさそうですね!
これにて、受付終了です!
予選エントリー表が3時間後に貼られますので
再度こちらに足を運んでください。
それまではご自由に。」
「ありがとうございました…」
思造 ブロブゴロー @burobu56
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