2話 転生中の話
世界が暗転して暗くなった。
落下しているような不思議な浮遊感も感じる。
漆黒の世界を落下していく中、自分の周囲に様々なウィンドウのような物が浮かび上がる。
そこには転生する自分の身体の状況など様々な事が表示されている。
『種族変更プロセス---完了。ヒューマンからシェイプシフターへ変更』
『スキルインストールプロセス---完了。
『スキルインストールプロセス---完了。
『職業:魔王パッケージをインストール---完了。』
『転生ボーナスの付与---完了。』
『転生プロセスの終了中---クリーンナップ完了。』
『警告、急激な肉体改造により魂の定着率が不安定になっています。それに伴い短時間の間自我の喪失が起こりえます』
『警告、急激な知識の付与及び魔力器官の作成により急激な頭痛及び嘔吐感などを感じる可能性があります』
そんなウィンドウのような物が顔の周りに出現しては消えてを繰り返している。
「にしても警告とか出てるけどこれ大丈夫なのか」
次々と現れては消えるウィンドウを目で追っていると体に異変が起こってきたのを感じる。
「......っ、何か頭痛がと言うか脳内に大量の情報が流れ込んで来て眩暈がしてきた、それに身体も自分の物じゃないような違和感を強烈に感じる......ッ!」
何か吐き気と言うか胃の中がグルグルとする感覚、それに高熱に浮かされた時のような幽体離脱感。
脳内に流れ込んでくる知らない知識、その他色々な感覚に耐え切れずに意識が飛びそうになる。
漆黒空間を落下してるのも相まって自分がどんな態勢になってるのかすら分からなくなっていく、そして薄れ行く意識の中で最後に見たウィンドウには。
『転生先座標、ルヴァナ大陸西部、黒樹大森林中央部、建築物名:魔王城3階玉座の間ーーー間もなく座標へ到着します』
これからの行き先が示されていた。
ーーー時は少し遡り、魔王城3階玉座の間。
その場所は広く、天井にはシャンデリアなどの豪華な照明が吊り下げられている。
柱などもしっかりとしているし深紅のカーペットが敷かれていたり、壁には絵画なども飾られていた。
加えて様々な種族が集う想定なのか部屋の広さもかなりの物だ。
その部屋の最奥には禍々しくも美しさを感じさせる、漆黒を基調とし宝石や竜骨などを装飾した玉座が設置されている。
だがその座の主は今はいない、座に座るべき魔王とは魔王に仕える将軍達や大臣達によって選出されてきた。
先代の魔王が1人の勇者と刺し違えてから早100年近く、その席は空席のままだった。
魔王になろうと立候補した将軍や大臣は少なからず存在したが、誰しもが前魔王を超える実力を証明出来ずにいる。
その間魔族たちは将軍達や大臣達の協議会によって導かれてきたが、それもそろそろ限界の時が近い。
勇者達の迎撃に駆り出される将軍達、戦火を抑えるべく各種族の連携や内政に追われる大臣達。
協議会にも集まれる機会が少なくなってきていた。
魔族の誰しもが次なる魔王を待ち望んでいた。
そんなある夜、主に書物の管理や魔術開発などの役割を持っている種族、大きな二本の角にヤギの頭が特徴のバフォメット族。その大臣の1人に啓示が与えられる。
『新たなる魔王を誕生させる、その教育係をせよ』
古来よりバフォメット族は儀式や神、夢や精神などそう言った知識を受け継いでいる種族。
失われていく知識の保存や現代では禁術とされている魔術の管理など、神性を持つ存在と近しい存在だ。
深夜に書物庫にて整理をしていたそのバフォメット族の男は突然のその啓示に驚いた。
何せ神から啓示が降るなど最近では100年に1度あるか無いかだからだ。
最初は疲れ来る幻聴かとも考えた男だが、気づくと手に持っていた手紙のような物に気づき、確信へと変わっていく。
そこには新たなる魔王についての情報やいつどこに召喚されるなどが記載されていた。
「......これは!急いで準備しなければ」
驚きと歓喜の混じった感情のまま寝ずに準備を進めていくのだった。
そうして迎えた新たなる魔王が召喚されると言う日。
その日の玉座の間はいつもと違い、複数の魔族たちが集っていた。
リザードマン、ミノタウロス、ハーピー、サハギン......等々。
ある者は期待を胸に、ある者は不安を胸に、ある者は野心胸に。
いまかいまかとその時を待っている。
その夜、月が頂点に達した時に玉座の目の前に大きな魔力の奔流が現れた。
全てを飲み込んでしまいそうな漆黒の球体がそこに現れ、そして不規則に波打つその球体の表面。
その場に居た魔族たちは誰しもがそこから目を外せずに、息を吞んでどうなるかを見守っている。
何度か大きな鼓動をしたかと思えば球体は一気に収縮し、闇が人の形を創り上げていく。
そうして、新たなる魔王は玉座の間へと転生したのだった。
これが俺の魔王道 ~邪神に呼ばれた異世界で魔族たちを導きます~ 東雲はち @shinonome_hachi
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