父を求めて飛行船へ

夕日ゆうや

旅路

 白色、ピンク色、黄色、オレンジ色のキャンディの入ったペットボトルをからからとシャッフルする。

 ペットボトルからキャンディを取りだそうと蓋を開ける。

 黄色が出たら今日の運勢は最高。白色なら最悪。

 そう念じて飲み口からキャンディを転がして手のひらにのせる。

 黄色だ。

 なにか幸福なことがあるかも!

 ルンルン気分で私は階段を駆け上がる。その先には飛行船の入り口がある。

 運勢最高なので、乗っても問題ない。

 そう思い客室に案内される。

 隣に紳士でエレガントなイケオジが座り、少し興奮する。

 私は彼みたいな人と結婚したいと思っていた。

 でも奥さんとかいそう。

「おや、どうかしましたか? お嬢さん」

「い、いえ」

 隣にいるだけで心臓がバクバクとうるさい。

「可愛いお嬢さんだ」

 にこやかに微笑むイケオジ。

「これをあげよう」

 そう言ってイケオジは手にキャンディをのせてきた。

「ありがとうございます」

 紫色のキャンディ。

 ペットボトルを開けて入れる。

「お礼が言えて偉いわね」

 目の前の恰幅のいいおばちゃんが微笑ましく見てくる。

「私はこれでも九歳。立派なレディなんだからね!」

 ぷいっと顔を背ける私。

「ふふ。そうね」

 恰幅のいいおばちゃんとイケオジが笑う。

「わしの子にしたいくらいじゃ」

 イケオジにそんなことを言われると、顔が熱くなる。

「一緒に旅、して?」

 私はイケオジに頭を下げる。

「ふふ。いいじゃろうて」

 子どもだけで旅をさせるのを心配したのか、イケオジはこの子を守ると誓った。

 飛行船は高度を上げて飛び立つ。

 目的地はアースノートレス。

 母を失った私は旅に出る。

 父と出会えるその日まで。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

父を求めて飛行船へ 夕日ゆうや @PT03wing

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ