角川文庫版では、本文のあとに「附高瀬舟縁起」という小文が収録されています。
この作品を読まれた方が思うであろうこと(僕は思いました)を、鴎外は同じように思ったようです。
1)財産(金)の問題
2)死にたい人を死なせてやることは罪なのか
です。
学生時代に教科書で読んだ記憶がない(当時乱読していたときに読みました)ので、授業ではどんなふうに先生が解説するのか、気になるところです。
この作品の面白いところは、
罪人の喜助はこれまでの罪人たちとは違うことに、同心の庄兵衛は気づき、気になってしまう。
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いったい喜助はどう言う心持ちなのか(謎)を知りたくて訊ねてしまう。
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喜助が島流しを苦にしていない理由が明かされ、そしてなぜ罪を犯したのかが語られる。
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庄兵衛は揺さぶられ、自身では(善悪の)判断がつかなくなってしまう。
という綺麗な流れ、そして問いかけです。
判断はお奉行様ではなく、わたしたちが下さなくてはなりません。即座に返すことのできない問いを提出すること、そして読者は一度抱えた問いを考え続けること。それが小説の面白みの一つであり、使命かもしれません。