カクヨムコンを振り返って

春海水亭

最終日、進捗0文字

 今から責任逃れをするので、皆様には私の逃亡を幇助して頂きたい。


 クッキークリッカーというゲームがある。

 ブラウザ上で無料で遊べるひたすらにクッキーを焼き続けるゲームである。

 クッキーを焼き続けるゲームと聞くとどことなく牧歌的な印象を受けるが、全く牧歌的ではない。最終的に世界のすべてをクッキーにするラスボスみたいなことになる。何を言っているのかわからない人は実際に遊んでいただきたい。何時間か遊んでくれれば私の言いたいコトの片鱗が見えてくる。


 フレーバー的な面は置いておいてシステム的な面について語らせて頂くと、とにかくクッキーを増やし続けるゲームである。クリックと自動生産アイテム、そしてアップグレードの購入などでひたすらにクッキーを増やしていく。


 最初は1クリックで1枚のクッキーが増える非常に可愛らしいゲームなのだが、私が今遊んでいる段階だと1回のクリックで712.9611正(10の36乗――よりわかりやすく言うならば、兆の次の次の次の次の次の次の次の単位……のはずだが、数字が大きすぎて自分でもピンと来ていない)ものクッキーが世界に発生し、自動的に製造されるクッキーにいたってはその六倍弱である。たった三秒で載のクッキーが世界に発生するのだ。そしてクッキーの果てはまだ見えない。行き着く数字は恒河沙か那由他か無量大数か。


 クッキークリッカーにあるものはなにか、胸を震わせるシナリオか、熱いバトルか、魅力的なキャラクターか、否、何もない。ただ際限なく増え続けるクッキーがあるのみである。キャラクターと呼べる存在もクッキー焼いてくれるババアぐらいしかいない。

 それが何より私を喜ばせてしようがない。


 攻撃力、防御力、魔力……これまで遊んできたゲームに存在したあらゆるパラメータの全てはクッキーに一元化され、私により多くのクッキーを焼く喜びを――すなわち、強くなる喜びを限度なき単純な数字となって与えてくれる。


 嘘だと思うのならば、一度クッキークリッカーを遊んでみて頂きたい。

 増え続けるクッキーが、数字が増え続けるという原初の喜びを貴方に与えてくれるはずだ。


 では、私のカクヨムコンの進捗が0文字なのはクッキークリッカーだけのせいなのか、ダラダラとクッキークリッカーを遊んでいた春海水亭に責任はないのか、そのように思われる方もいるかもしれない。


 もちろん、クッキークリッカーだけが悪いわけではない。スカイリムも悪い。


 スカイリムという名作オープンワールドゲームのニンテンドースイッチバージョンが半額で販売されていた。胸を震わせるストーリーや魅力的なキャラクター、そんなものに背を向けて私はひたすらに暴力に勤しんだ。


 スカイリムはすごいゲームなので適当にぶらついているだけで新たなクエストに出会うし、クエストを攻略している途中にもクエストに出会う。なんかキャラクターは色々言っているが、私は暴力と戦利品にしか興味が無いので相手の言っていることを何一つ理解しないまま、クエストマーカーに従って、ひたすらにダンジョンの探索と暴力を繰り返した。


 山賊が占拠している砦が一番好きだ。山賊を蹂躙している時がスカイリムでの生を実感する。あとちょっと良い装備をつけた山賊の装備を剥いでやって、裸になった山賊を見るのも勝利の喜びがじんと脳を蕩かして気分を良くする。

 本当は全員を裸にしてやりたいが、装備品には重量があるので全員分の装備は持ちきれないし、いちいち捨てるのも面倒くさくてなかなか出来ない。


 暴力が災いして街一つを敵に回すことになったのは流石に辛かった。

 勝つことは難しくないのだが、スカイリムの売買は一般的なRPGの店員が無制限に買い取りしてくれるスタイルではなく、店によって買い取ってくれる品物が異なる上に(特定のスキルを取得するまで武器は鍛冶屋にしか買い取ってもらえない等)買い取り金額にも上限があるため、一つの店で全ての戦利品を処理するということが出来ない。そのためにある街が利用できなくなると、その分だけ戦利品処理の手間が増えることになるのである。

 その結果、私は暴力の虚しさとスカイリムばかりやっているとマジで何もできなくなることを知ったので流石にスカイリムは封印した。スカイリムが悪い。


 だが、本当にそうなのだろうか。

 クッキークリッカーとスカイリムだけが悪いのだろうか、他にばかり責任を押し付けて、本来責任を取るべき存在から目を逸らしてはいないだろうか。


 そう、皆様もお気づきのとおりだ。


 地球が悪い。


 最強寒波とか言ってるけど、それ以前からずっと寒い。寒いから私のやる気も失せる。あと雪かきがマジで時間を喰う。っていうか雪を捨てる場所がない。溝が埋まってる。これ以上はもう歩道を埋めるしかない。あと屋根雪が落ちる時の衝撃で家が揺れてマジで怖い。落下音も恐ろしい。人一人が余裕で死ぬ音がする。もし私が近日死ぬとしたら間違いなく屋根雪のせいってぐらいに凄まじい音を立てている。あと窓が微妙に締まりきらなくて隙間風が辛い。


 さらにいえば1月31日に締め切りを迎えるのも地球が回転するのが悪い。

 地球がもう少し私に優しく回っていればこのようなことにはなっていなかった。


 さて、何故に私のカクヨムコンの進捗が0文字なのか、そしてその責任の所在は誰にあるのか、皆様にもご理解いただけただろう。

 皆様も大人なのだからそういうことにしよう。


 いや、ダメか。

 いくら地球に多大な責任があると言っても、一文字も書いていないのは春海水亭だ。自分の罪から逃げることは出来ない。


 これより私は責任を取って、母なる地球を――我が手で粛清する。

 母の罪は子が購う。


 そうしようか。

 うん、そうしよう。


 そういうことになった。

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カクヨムコンを振り返って 春海水亭 @teasugar3g

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