Three livinglocks,Three sided~でんでんコンバータ10周年に寄せて
米田淳一
第1話Three livinglocks,Three sided~でんでんコンバータ10周年に寄せて
「鉄研でいず!」の主人公・エビコー鉄研総裁のもつ「ヒミツのiPhone」に電話がかかってきました。
「うぬ?著者よ、こんなときに電話とはなんぞ?」
それはでんでんコンバータ10周年を祝いたい「鉄研でいず!」著者からの、プレゼントの相談の電話だったのです。
*
「うぬ? 著者よ、こんなときに電話とはなんぞ?
む? でんでんコンバータ10周年のお祝いにその作者ろすさんとキャラクターの電書ちゃんになにか贈りたい、だと?
ほう、さふであるのか。たしかにワタクシも電書ちゃんはいろいろとお世話になっておるからの。こういうこともすべきであろうの。よきことなり。
しかし向こうはそもそも金持ちぞ。回らないお寿司食べることもあるのだぞ。月並みな普通のプレゼントでは失礼になるぞ。
うっ、こっちもこの前の糸魚川クルーズで珍味の深海魚ヤガラのお寿司食べたではないか、だと?
あれは旅行先でのハレの食事、むこうは普通の日の昼餉ぞよ。カジュアルさが違うわ、このタワケ。
しかも著者、お主、未だにウェブサービスの更新の在宅バイトをするのがやっとではないか。
プログラムの勉強したら? とろすさんに奨められても、あれからサッパリ進んでおらぬぞ。ワタクシは知っておるのだ。
なぬ? PythonやRaspberryPiやPICのプログラミングした?
したのはワタクシぞ。
なぬ? RaspberryPi買ったのはどっちだ、と?
ワタクシ鉄研総裁の依代であるのだから、そんなものワタクシのために買って当然であるのだ。著者のくせに生意気申すでない!
鉄道模型も鉄研遠征の軍資金もJAM国際鉄道模型コンベンションへの鉄道模型出展費もおぬしが負担してたうぜんであるのだ!
ええい口答えするでないっ! また鉄研制裁されたいのか。
えっ、そんなことだから電書ちゃんの人気にかなわないのだ、だと?
格が違う格が。ワタクシは斯様な思い上がったことなど思うたことはないぞ!
ワタクシ、電書ちゃんのサービス精神に深く感銘をうけてはおるが、人気を比較するなどと言う発想をこれまで一切持ったことはないわ。この痴れ者が。
だからおぬしの本は売れないのだ。精進が足らぬ精進が。
そんなことだからろすさんの話もうまく聞いてあげられぬのだ。精神年齢的にも未だにお主はただの49歳児にすぎぬぞ。
なぬっ!電書ちゃんのことについて我々のしらなかった真相を聞いて驚き、我々すまない気持ちになったではないか、それなのにろすさんを責めるようなことを申してしまった、だと!
お主、ワタクシのせいにするのか!?
あのようなことがあったなど想像も付かなくて当然であろう!
そもそもあのことは聞いてはおらぬのだ!
想像すべきだった? 想像以上であったではないか。
そもそも著者、我々などといってワタクシとお主を一緒にするでないっ!なれなれしいのだ!愚か者めが。
そもそも稼ぎも細く嫁にも逃げられた情けないお主が電書ちゃんとろすさんに贈り物をするのなら、それ相応の礼を尽くすべきであろう。
なぬ? では何か書いて贈る?
すぐそうやって書くことに逃げるのは悪い癖であるぞ! 知恵が足らぬ知恵が。
う、そこで我らの関係図をGoogleスライドで整理した、だと。
見せてみよ。
うっ、三角関係にしたかったのにこれではただの一方的なあこがれだけになってしまっておる! そもそも関係図にするには要素がぜんぜん足りぬ要素が!
そのためにろすさんと電書ちゃんにインタビュー?
できるわけがなかろう!
プレゼントするのに何が欲しいか先に聞いてそれをそのまま渡してなんのサプライズがある!
こういうものはこっそりやって喜ばせるのが肝要であろう。49年も生きてきて何を学んだのだ!
うっ、ワタクシはいつまで17歳なのか、だと?
おぬしがちゃんと考えて描かないからワタクシは何年間高校生でいるハメになるのだ?
ワタクシはいつ卒業するのだ! 斯様な留年沙汰になる不勉強などしてはおらぬぞ!
ワタクシ、向学心に燃える非実在女子高生であるぞ。キラッ☆ ふー、もうだめだー。
うっ、なにをやらせるのだ。うっかり我が鉄研でいつもやってしまう口癖がでてしもうた。
著者よ、それよりおぬしの不勉強ぶりは何だ!そんな情けないことだから阿賀北ノベルジャムでも参加賞の新潟のお米しかもらえぬのだ。チームが受賞したからおこぼれに預かれたに過ぎぬ。反省が足らぬ反省が。圧倒的に練度がたらぬ。
そもそも鉄研でいずのボイスドラマにも電書ちゃんにもろすさんにもずいぶん応援してもらったのになんというテイタラク!
それも著者、お主のシナリオと演出が甘いことが原因と謙虚に反省せよ! せっかくの二人の好意を無にするでないっ!
そもそもこんな関係図では三すくみ、ThreeDeadlockにするはずがOneSidedにしかならないであろう! 最初のコンセプトから大失敗であるのだ!
何? 依代関係から言って仕方がない? メタい小説書いてるのに斯様なことで値を上げるでない!
でも……。たしかに、ワタクシも著者も、電書ちゃんやろすさんのこと、よくわかってはおらぬのに勝手に一方的に憧れていただけであったかもしれぬ。
そういえば著者はでんでんコンバータを今まで一回も使ってはおらなかったのう。いつもBCCKSやロマンサーをつかい、sigilや電書チェッカーまで使っておったのに。
著者、おぬしはその昔、2004年11月にテキストデータをネットで手売りしたり、2006年テキスト画像変換を使ってPSPで読めるようにした小説をイベントで売っていたのだったの。1999年11月の商業出版デビュー以来、11冊の本と4冊の掲載誌を数えたのに。2004年でそれが途絶えたのだったな。
そもそも2010年6月27日に池袋のイベント・サンシャインクリエイション48に手売りの本を出展したときには著者まだ結婚もしておった。あのころはiBooksのePub対応が始まったりして(2010年6月8日発表)、当時商業出版で傷つき他の道を探していたのでepubに未来を感じておったのであるのだったな著者は。KDPKindleダイレクトパブリッシングが日本で始まったのは2012年10月。2012年と言えば著者、おぬしが離婚したのが2月であった。
そしてでんでんコンバータ開発ブログの始まりが2013年2月18日。月刊群雛の創刊が2014年。それに「彼女たちの本領」を既刊抜粋としてすべりこませ、その2014年03月号に著者米田淳一として「信長の身代金」が載った。
その『月刊群雛』のインフラとなったBCCKSの会社設立が2007年7月。まさに2010年は電書元年であった。そして国会図書館の記録では米田淳一の著者名が2004年で途絶えて以来9年ぶりに2015年別冊Gunsuで再登場、著書としては11年ぶりに激闘宇宙駆逐艦が2016年に登場する。そして「鉄研でいず!」でワタクシ、エビコー鉄研総裁が登場したのは2015年3月14日であった。1999年6月6日生まれのワタクシなのに計算が合わない? おぬしが悪いが致し方なかろう。
思えばその間、電子書籍に取り組むと言っても離婚もかさなった孤立と失意の底からであったの。ただ群雛の誕生ででんでんコンバータとそのコミュニティの存在を知り、強烈なうらやましさを感じたのだったな。ワタクシもそこでの電書ちゃんのカツヤクを知り、コーフンに目を見張らせたのを覚えておる。そして『ワタクシ総裁もかくありたい』と強く思うたのだ。
そしてその後箱根で電書ちゃんとの女子会を開くことが出来た。ワタクシの電書ちゃんへ、著者のろすさんへのあこがれは、一方的ではあったが今もすこしも変わらぬ強いモノなり。
そもそも著者の1999年のデビュー作・プリンセスプラスティックの主人公・女性型女性サイズ時空潮汐力特等突破戦闘艦・シファが登場する。今思えば艦娘みたいな彼女を駆動するメインOSの開発者に近江秀美という人物がおった。彼もつらい過去をもち、それゆえ長い間摂食障害になっていたのだったな……。彼の友人の当時医学生御門雅於が再び現れ、今で言うBrain computer interface(BCI)技術によって起きる疾患の患者にして後に警視庁警部となる建部敦を担当してその疾患を巡る事件を経て、近江さんは成長し、そしてシファ建造にあたって彼女の不老不死を支える生命OSを開発することとなる。その姿には一貫しておぬしのエンジニアの世界への強いあこがれがあったのは読めばわかる。
その前後に何人かほかのエンジニアにも会って、それぞれに憧れていたのだ。みな優秀で、それゆえに繊細であり、みな独特なライフスタイルであった。ワタクシにチップLED工作を教えてくれたのも某大手システムインテグレータのエンジニアであったY氏であった。ワタクシも直接にそういう人々の独特のカルチャーに触れ、あこがれを持ったのだ。それは脚本家であり物語の師匠であった山田正弘先生、先輩作家であった青山智樹先生など物語書きのカルチャーとも違い、じつに興味深かった。
そしてでんでんコンバータを巡るコミュニティの繁栄も。
だが……。憧れていたのだが、それは一方的なものにすぎず、理解していたとは言いがたいかもしれぬ。そしてどこか敬遠する気持ちもなくはなかったのであろう。ゆえ、でんでんコンバータを使ったことはまだ無いのだ。
でも。うむ、著者、おぬしもそう思うか。
深く知ったことで興味を失うのが惜しくなる、それぐらいに強いあこがれなのであろう。
知らないということは、これから知ることが出来るという、ステキなことなのだ。
うむ。そうかもしれぬ。
あの電子書籍元年には想像できぬほど、昨今電子書籍は成功してきている。あの細々と始まった電子書籍は今や出版市場の紙媒体の退潮を埋め合わせ、市場全体、電子の雑誌・書籍・コミックの合計は2021年には4662億円にもなり、2021年の出版市場全体はずっと続いた交代戦から転じて3年連続のプラス成長になったのだ。2026年には電子書籍市場は8000億円市場になるともいう。そして今『活字離れ』という枕詞の時代も過去のモノとなりつつある。老いも若きも感度の高いものは電子書籍のさまざまな利点を感じそれを選択するのが当たり前になっておる。
電子書籍はかつて『やっても儲からない』はずだったのだが、もはや書籍の世界を支える欠くことの出来ぬモノとなった。そして物語の世界もかつて読んでもらうには新人賞をとって商業出版せねばならなかった世界が、小説投稿サイトへ投稿しての商業デビューが当たり前になった。そして自主出版(セルフパブリッシング)も文化圏が拡大しつつあり、さらに商業出版の姿は変わりつつあるのだ。かつての商業出版に絶望させられたおぬし、著者にとっては感慨深いことであろうの。
まして国会図書館の記録と書籍に家からあたれる登録が通った今日だからこそ、感慨は一層深いモノであるな。かつて年齢詐称してでも行くしかなかったのが今や家から見られるわけだ。なるほど。
うむ。
それならば、その成果として新作をカクヨムに投下して、それをでんでんコンバータで変換してAmazonKindleストアに投入し、それをプレゼントするがヨイ。
まだそれはおぬしが一度もやっておらぬことだ。
ええい、はようせい!
うぬ?
『知らないソフトをはじめて使うって、ワクワクするね』だと?
たうぜんであるのだ。感謝せよ著者」
というわけででんでんコンバータ10周年おめでとうございます!
コンピュータープログラムって、ストーリーと似ているようでかなり違うところもありますが、おなじ紡ぐモノであったり、とはいっても一度読んだらおしまいとちがって何度もお世話になれたり、逆に頻繁にお世話になるうちに存在を忘れられてしまったりと、いろいろな性質の類似と差異で強く興味を持たされるものに感じています。
きっとでんでんコンバータも、多くの人々を、それぞれに少しかもしれないけど確実に使う前よりも幸せにしてきたんだと思います。この駄文を書くために調べても、幸せの声が星々のようにきらめいていました。ものすごくステキなことです。
たまたま近しく言葉を交わさせていただいているせいか、遠慮もあってでんでんコンバータ使ってなかったのですが、私もそれがレンダリングしてくれる幸せを、ほんと、めちゃくちゃ今更ですが感じてみたいと思います。
これからの10年もよろしくおねがいします!
2023年1月31日 米田淳一
Three livinglocks,Three sided~でんでんコンバータ10周年に寄せて 米田淳一 @yoneden
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