ディスコミュニケーション

@kamea1472

第1話

宛先:夫

件名:残業で帰り遅くなるかも

申し訳ないから今日は夕飯作らなくても大丈夫だよ!ごめんね😭


宛先:夫

件名:今日も遅くなる

夕飯食べて帰るからいらないや


宛先:夫

件名:遅くなる

夕飯いらない


宛先:夫

件名:なし

いらない


宛先:夫

件名:なし

いらない


ケータイの電源を切り、パソコンと向き合う。

夫とはもうしばらく話してもいない。


結婚当初こそお互いの仕事の時間の合間を縫ってどうにか近況報告なんかをしていたが、今となっては帰宅が遅れる連絡すら適当になっていいる。


私は夜遅くまでデータを打ち込んでいるし、夫は仕込みのために日も出てない朝早くに起きなければならない。


明日も定時には帰れそうにないし、次に夫と話せるのはいつになるだろうかと考えていると、不意に会社の照明が切れ、辺りを暗闇が包み込んだ。


どうやら上司によると電子機器のトラブルらしく、修理業者を今すぐに呼んでも仕事の再開は3日後からになるらしい。それまでは各自家で仕事を進める運びとなった。


折角残業してまで打ち込んだデータの大半が無駄になったのは辛かったが、久しぶりに夫と話す機会が出来たことで帳消しと考えることにした。


静かに家に帰ってそっとリビングを覗く。リビングはもう暗く、微かに聞こえる寝息から夫がもう就寝してることは明らかだった。


今の時刻は午前2時、夫がいつも目を覚ますまであと2時間程なので眠い目を擦りながらその時が来るのを待っていた。


3時─まだ起きないのはわかっているが、いつもより早く起きないかな、早くお話したいな、などと考えつつ、寝室で眠る夫の寝息を聴きながらコーヒーを啜る。


4時─そろそろ起きないといけないんじゃないの?と疑問に思うけれど、目覚ましも鳴らないし私の思い違いかも、と考え直して空いたマグカップにコーヒーを淹れる。


5時─マグカップが空になってることに気付かず口を付ける。起きなくていいのかな…マグカップの柄に沿った縁を何度も指でなぞり、気づいた時には眠りに落ちていた。




11時─いつもよりも眩しい陽の光を浴びて目を覚ます。目の前には注がれた生温いコーヒーとラップで包まれたおにぎりが2つ。

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