フィナーレを飾る花束

夕日ゆうや

駅伝

 走る。走る。

 俺たちは走る。

 目指すはフィナーレ。

 そこに向かって走り続ける。

 息もつかせずに。

 空気が薄い。

 酸素が足りない。

 肺腑に詰まっていた空気を吐き出した気がする。

 冷たい張り詰めた空気が吐き出した隙間を埋めていく。

 疲れた身体を無理矢理にでも動かす。

 引きちぎれそうになる筋肉を前へ前へと。

 俺たちは走り続ける。

 先へ先へと。

 感動のフィナーレを飾る花束を手にするために――。

 震える身体を押さえ込み、次への人へタスキを渡す。

《いっけー! 大宮おおみや。走れ! 走るんだ!!》

 俺は言葉にならない気持ちを大宮に投げかける。

 タスキを受け取った大宮は最期のゴールテープに向かって走り出す。

 頑張って走り続ける。

 なんで走るのか、分からなくなったり、メンタルがやられることもあった。

 それでも走り続ける。

 なんのために?

 そう自問自答したこともあった。

 でも俺はやはり走るのが好きらしい。

 一度バスケをやってみたこともあるが、走るのが好きで好きでしかたない。

 忘れられないのだ。走りきった快感が。

 走りきったタイムが少しでも早くなっていると嬉しい。

 そんな単純な話なのかもしれない。

 好きであれば、それでいいのかもしれない。

 フィナーレを飾る花束を受け取った大宮がこっちに向かってくる。

 俺の後ろには他の区間を走った仲間がいる。

 みんなで抱き合い、嬉し涙を流す。

 一人で闘っていたこともあったけど、そればかりじゃなかった。

 今は同じ気持ちでいる仲間がいて嬉しい。

 全国へいける。

 これからも俺たちの闘いは続く――。

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フィナーレを飾る花束 夕日ゆうや @PT03wing

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