第116話 海底都市アトランティス

 来栖たちと分かれ、『水妖精ウィンディーネ』の待つ『アトラ』にやって来た煉。

 『アトラ』に向かっている途中に、新たに発生したダンジョンについては調べてみたが、現時点は『アトラ』よりも出現するモンスターのレベルが高いことくらいしか分からなかった。

 そもそも『アトラ』でさへ海中と言うこともあり、普通の探索者には攻略困難なダンジョンである。そんな『アトラ』よりも攻略難易度が高いダンジョンであれば、短時間での詳細調査など出来る筈も無いのだが。

 

 いつもの煉ならそのまま直接新ダンジョンへ突入していただろう。しかしただでさへ海中ダンジョンで難易度が高く、ダンジョンボスである海神蛇リヴァイアサンは原初スキル持ち。情報無しで挑むといくら煉でも返り討ちに合う危険性が高い。

 そのため『水妖精ウィンディーネ』から情報収集をしようと『アトラ』に立ち寄った煉であったが、煉の『魔力感知』が、『アトラ』の最深部と別の何かと繋がっている様子を感知する。おそらく繋がっている場所は、海神蛇リヴァイアサンが管理するダンジョンなのだろう。

 

『君主、お待ちしておりました』

「こっちに入った情報だと、『アトラ』と海神蛇リヴァイアサンがいるダンジョンは別って話だったが?」

『海神蛇さまは、海の神ですので。ここ『アトラ』のようなダンジョンに干渉し通路を開けることなど造作もありません。勿論、君主の権限で通路を閉じることも可能ではありますが…』

「折角、向こうが近道を用意してくれているんだ。使わせてもらう。その前に向こうのダンジョンの情報とか知っているものがあれば教えてくれ」

『承知しました。海神蛇さまのダンジョン『海底迷都市アトランティス』について知る限りの事をお話します』


 海神蛇の思惑は分からないが、煉の目的は海神蛇の討伐である。であれば折角の海神蛇のダンジョンへの直通ルートを使わない手は無い。

 『水妖精ウィンディーネ』から情報収集を終えた煉は、『アトラ』最深部から海神蛇が待つ『海底都市アトランティス』へと向かうのであった。 


―――――――――――――――

 

 『アトラ』に開けられた通路を通り『海底都市アトランティス』に来た煉。

 海底都市と言う通り、海底に都市が形成されていた。ダンジョン大好きな煉としてはとてもテンションが上がる光景であった。しかし今は一刻を争う状況である。


「感知したところ『主人マスター』連中は来ていないか。となると『憤怒』の方に向かったか?」


 『嫉妬』を所有しているであろう海神蛇リヴァイアサンとは別に、原初スキル『憤怒』を所有するモンスターがいるダンジョンも発生している。それだけならそのダンジョンに向かっているユラたちで事足りるだろうが、原初スキルを収集している敵組織『主人マスター』たち一行も『憤怒』の方に現れる可能性が高い。


「まあユラさんたちがどうこうなるとは思わんが、楽しんでダンジョン攻略は難しいか。悲しいけど」


 煉に課されたミッションは、出来る限り早く海神蛇リヴァイアサンを討伐することである。悠長に海底都市探索をしている暇は無い。普通ならば。


「『水妖精ウィンディーネ』の話だと『海底都市アトランティス』は攻略に専念しても数日は余裕で掛かる大規模なダンジョンって話だ。となると速攻で海神蛇リヴァイアサンを倒せば少なくとも2、3日はダンジョン探索を謳歌できるな」


 しかし一刻を争う状況であっても、ダンジョン探索を謳歌するための努力は怠らない煉には、ダンジョン探索を省略する秘策があった。


「『水妖精ウィンディーネ』から聞き出しといて良かった。『海神蛇リヴァイアサンの恩寵』をグラルで喰わせたらどうなるか」


 煉が前にはぐらかされた件を尋ねると『水妖精ウィンディーネ』は返答を少し戸惑ったが、口を開いた。海神蛇リヴァイアサンは怒り狂い喰わせた者の目の前に現れるだろうと。

 つまり『アトラ』の君主の証である『海神蛇リヴァイアサンの恩寵』は『海底都市アトランティス』ではお手軽ボス召喚アイテムとなるのであった。


「別にこれがなくても君主で無くなる訳でもないようだし、な!」


 であれば迷わず喰わせる選択をするのが煉であるのだ。



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特級探索者、配信者となる~攻略マナーを配信してただけなのに何故かバズって困ってます~ 和ふー @qupitaru

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