魔法少女 マジックみるく

こぼねサワー

第1話【完結】

 男ヤモメにウジがわくとか言うらしいけど、まあ、あながち。

 反論の余地もない。


 どのみち三流の無名の大学に行くんなら、なにもアンタ、東京くんだりまで行かなくたって。地元の三流大学に通えばいいじゃないって正論かます母親をどこぞの論破王ばりに論点ズラして言いくるめて。


 せっかく上京してきたものの、夢にまで見たキャッキャ・ウフフなキャンパスライフは夢のまま。チー牛のお手本みたいな陰キャのオレには異世界ファンタジーでしかなかった。


 夏休みに入ったというのに、里帰りの費用も海物語の新台に溶けて消えたから、こうして四畳半のアパートで寝ころんでゴロゴロするしかスベがない。マジでゴメンよオフクロ。不肖の息子を許してくれ。


 目を閉じればマブタの裏にひとりでに現れる、知る人ぞ知る深夜アニメ「魔法少女マジックみるく」たんの可憐なパンチラ……ああ、クソッ……せめて三次元でヌケるように訓練していかないとオレ。ホントこのままだと人間失格かもしれぬ。太宰もドン引きかもしれぬ。


 ああ、けど、やっぱ……かあいいなぁ、みるくたん。

 転生する前は還暦かんれきすぎたジーサンなわけだけど。そんなのカンケーねぇ。今が大事よ、うん。


 政財界のフィクサーとか呼ばれて調子こいて、国民感情ガン無視の強権支配。ウグイス嬢にはセクハラ三昧ざんまい。んで、無免許のくせに高級車を乗りまわしたあげく、ブレーキとエンジン踏み間違えて自爆して、異世界に転生しても、まだ「車が故障してたんだ!」って言いはる老害クソジジイ。

 前世の贖罪しょくざいのために、ロリロリ魔法少女に転生させられて。毎回、凶悪なゴブリンどもにフルボッコにされて瀕死ひんしになって、あげくに魔物の触手やらなにやらでピー(※自主規制音)されてピーーーなんだよな。

 地上波のボーダーを探る心意気やヨシ! アッパレだよクリエイター!


 ざまぁ!って思う気持ちとハァハァする気持ちがあいまって、めくるめくエクスタシーなんよ、これが。

 ヤベェ、想像しただけで……コーフンしてきた。


 ……ティッシュ、どこ置いたっけ?


 あ……っと……パラパラパラッ、って……なんの音だ……?

 ………うわっ夕立ゆうだちかよ! すげぇ降ってきた!


 ベランダの洗濯モノ取りこまなきゃ……って、もう間に合わねぇか。

 はぁーあ。いいや、ほっとこ。


 このぶんじゃ、しばらく降り続くだろう。ジタバタしてもしゃあねぇや。


 オレの夕勃ゆうだちも、当分おさまりそうにねぇしな……。



 END

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