第3話 26歳・夏1-3
もちろん配信と動画ではかかる時間もコストも雲泥の差があるが、それ以上に結局のところ視聴者は「キャラクター」ではなく「人間」が見たかったということだろう。
それもそうだ、3Dキャラクターの動画なんて「可愛い、面白い」以上の感想なんて生れることがないのだから。
そこには何のドラマも生まれない。筋書き通りのチープな自主制作アニメでしかない。
配信では業界でいうところの中の人こと「魂」の対応力が求められるため、当然様々なトラブルが生まれる。
結果的に、クソほど炎上したり引退に追い込まれることになるのだが、その何が起きるかわからないところも含め配信は面白い。
私としてもわざわざ事務所に動画を取りに行くために、外出用の服に着替え化粧をする手間が省けるため、自宅での配信という環境には非常に満足している。
満足はしている。
この言葉に多分偽りはないはず。
だけど最近何か心の奥がざわつくことがある。
このままでいいのかと、漠然とした不安を抱くことがある。
VTuberなんてものは所詮――
瞬間、大きな爆発音が耳をこだました。
余りにも突然だったため、恥ずかしいことにビクッと体が反応してしまった。
どうやら敵の投げた手榴弾に運悪く巻き込まれて死んだらしい。
もちろんゲームの話だ。
「みんなごめん、すごい集中してたからちょっと無言になっちゃった」
『手榴弾に気付いてなかったでしょ?』
『殺されたときめっちゃ体動いてたwwww』
どうやら視聴者には私の驚きが綺羅星キラリを通してバレていたらしい。
デスクトップに表示されている時計を見ると、時刻は22時になろうとしていた。
とりあえず今日のノルマはこなせた。そろそろ配信を終わらせてもいいだろう。
「じゃあ区切りもいいし、今日の配信はここまでにしようかな? 明日も配信するから絶対に見に来てね~」
『おつ~』
『箱内にこのゲーム上手い人いるんだから座学してもらいな』
『明日も19時からですか?』
などなど配信を見てくれていた視聴者たちは三者三葉のコメントを投げてきた。
「明日も19時頃から配信をしま~す。それじゃみんな、おつキラリー☆」
手短に締めの挨拶を済ますと、私はすぐに配信を切った。
配信画面はブラックアウトし、代わりにモニターには照明に反射した私の顔が映し出される。
私はどんな顔をしていたのだろうか?
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「VTuber」という職業は私のすべてと言っても過言ではない。
まさに天職、これ以上の仕事が他にあるだろうか?
イヤ絶対にない。断言できる。
これ以上に満たされる仕事を私は知らない。
だからこそあえて言おう。
VTuberなんてクソくらえ、と。
絵畜生なんてクソくらえ サムラ・イエジ @samura_ieji
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