第19話 後日談

 新田君と知り合ってしばらく経ったころ、あの四葉の栞を見た新田君が言った。

「碧が言ってたことは本当だったんだ!持っていてくれて、ありがとう。」

「何言ってるの?」

「実は俺が栞を作った男の子だよ。」

「え!!」

「あの時は本を譲ってくれてありがとう!」

「びっくり!あの小さな男の子がこんなに大きくなるのね。」

「碧は気付いたみたいなんだけど、栞奈さんが大事に持っているのに嫉妬して、その時は言わなかったってさ、どれだけ栞奈さんが好きなんだって話。」

私達は碧を通して少しずつ距離を縮めていった。


 新田君はずっと近すぎず、遠すぎず、私が居心地の悪くならない距離感で寄り添ってくれた。碧が亡くなってから、止まっていた時がゆっくりだが時を刻み始めた。


 知り合って5年、先日新田君からプロポーズされた。

三十代半ば、結婚適齢期も過ぎ『このままでも幸せだなぁ』と思いはじめていた。

だって私の心の真ん中には、いつも碧がいてくれるから。

碧は特別だった、他の男性は皆モノトーンに見える中、彼だけが鮮やかだった。

でも時の流れの中で、悲しいかな鮮やかさは少しずつ失われてきていた。

そんな時、新田君に告白された。


 初恋を胸の奥に残したままの私は返事に困った。確かに新田君のことは、好きだ。でもその想いが恋愛なのか友情なのか分からなかった。

そんなややこしい私に新田君は

「あなたの中にずっと碧がいるのは知っています。

碧ごと栞奈さんを愛しています。結婚して下さい。」

と言ってくれた。


 私は、気付けば目の前で色付き始めた新田君を見た。

「この想いの正体がまだ良くわかないの。少し時間を貰えますか?」

「勿論、ゆっくり三人で時を進めよう。」


 きっと近い未来、私は『はい』と答えるだろう。

新田君と彼の中に生きている碧、大好きな二人と時を刻める幸せ。

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銀花の奇跡 panda de pon @pandadepon

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