第18話

 新田君の話はにわかには信じ難い話だった。

でも、碧の一部が生きているのなら私にとってこんな幸せなことはない。


 この事実に私は歓喜した、この世に彼は何も残さずに逝ってしまったと思っていた。それが少しでも痕跡が残っている。


「すみません。おかしなことをお願いしてもいいですか?」

「僕でできることなら。」

「碧の腎臓はどちらですか?触っても構いませんか?」

「右側です。どうぞ触ってください。この辺りです。」

そう言い新田君は私の手を取り、自分の複部にあてた。


ああ、温かい、碧の痕跡だ。ずっとあなたを想っていた。


 嬉しくて、こぼれそうになる涙を隠すかのように空を見上げて微笑む。

大きな雪が降ってきた。

まるで雪の花のように、ふわふわと落ちてくる。

彼は十年前の約束通り、私に逢いにきてくれたのだ。

彼がくれた奇跡に「ありがとう」と、空にいる彼と、目の前にいる彼に言った。

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