第18話
新田君の話はにわかには信じ難い話だった。
でも、碧の一部が生きているのなら私にとってこんな幸せなことはない。
この事実に私は歓喜した、この世に彼は何も残さずに逝ってしまったと思っていた。それが少しでも痕跡が残っている。
「すみません。おかしなことをお願いしてもいいですか?」
「僕でできることなら。」
「碧の腎臓はどちらですか?触っても構いませんか?」
「右側です。どうぞ触ってください。この辺りです。」
そう言い新田君は私の手を取り、自分の複部にあてた。
ああ、温かい、碧の痕跡だ。ずっとあなたを想っていた。
嬉しくて、こぼれそうになる涙を隠すかのように空を見上げて微笑む。
大きな雪が降ってきた。
まるで雪の花のように、ふわふわと落ちてくる。
彼は十年前の約束通り、私に逢いにきてくれたのだ。
彼がくれた奇跡に「ありがとう」と、空にいる彼と、目の前にいる彼に言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます