第17話
碧と俺は幼い頃から、入退院を繰り返していた。
病院で何度も顔を合わすうちに、歳も近かった俺たちはあっという間に親友になった。趣味が読書って共通点もあったしな。
俺よりも入院頻度が多い碧を、俺は通院のついでにしばしば見舞った。
入院中は、一緒にゲームをしたり、読書をしたり、たまに勉強したりして過ごした。
碧が、医師から余命宣告をされたのは高校入試直前の冬だった。
あいつは努力家だったから、満足に通学できなくても自分で勉強を進めていた。
余命宣告されても碧は予定通り高校受験し、合格した。
そして残された時間を普通の高校生として過ごしたいと言った。
高校で栞奈さんと出会い、恋に落ちた。あいつは随分苦しんでいた。
期限がある命で、栞奈さんと付き合うことは、彼女に消えない痕跡を残してしまうのではないかと。
そんな碧の背中を押したのは、俺だ。あいつはずっと普通の生活に憧れていた。
最後くらい、我儘言ってもバチは当たらない。
実際、彼女といる時のあんなに楽しそうな碧は初めて見た、あんなに楽しそうに元気にしているのなら余命宣告なんて嘘じゃないかと思ってしまうほどだっだ。
しかし、体の状態は刻一刻と危機的な状態になっていった。
そんな時あいつは俺に言った。
「俺の終わりがきたら、俺の腎臓はお前が貰ってくれよ。そして、いつか栞奈に逢いに行ってくれないか?栞奈が幸せに暮らしているか、見てきてくれよ。
もし何か困っていたら助けてやって。」
「無茶振りだな。お前の腎臓が俺に適合する確率なんてかなり低いぞ。」
「大丈夫だよ、俺は分かる。大丈夫だ。」そう言うと大きく頷いた。
「そもそも、俺栞奈さんに会ったこと無いのに俺に彼女が分かるわけないじゃん。」
「お前達、会っているよ。と言っても小さい頃だけどな。」
「え?!」
「お前さ、昔図書館で女の子に本を譲って貰ったって言ってたろ。
それで女の子にお礼に四葉のクローバーの栞渡すって、作っただろ。」
「ああ、作った。」
「その女の子が栞奈だよ。彼女は持っていたよ、お前の作った栞を大事そうに。
ちょっと妬いたよ。だから栞奈にお前のこと言ってない。自分の口で伝えろよ。」
「えええ!」
「運命感じるだろ。もし、栞奈に会ってまだ俺を引きずって一人だったら、お前に託していいか?」
「馬鹿言うなよ、そんなの栞奈さんだって迷惑だよ。お前が頑張って移植を待てよ。」
「勿論、諦めるつもりはない。ただ、現実的には、今の日本でそれはかなり無理があるのも事実だ。お前も知っているよな?俺に何かあれば、お前は生きてくれ。」
俺は栞奈さんに碧の想いを伝えた。
どんなに碧が栞奈さんを愛していたか、彼の葛藤、最後まであなたのために生きることを諦めなかったこと。
そして、俺の中でまだ彼が生き続けていること。
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