ゴーレムの石焼ビビンバ1
先導する師匠の背をハクは大きく手を振りながら追う。逆にゼゼは木々を伝い、跳躍、着地と何度の繰り返しては警戒しているのか獣のように臭いを嗅いでいた。
「いるか?」
「いねぇ。町が近いからかもな。人間や家畜の臭いがする」
「そりゃ、山の
他愛もない会話をしつつ町にたどり着くと農業や家畜が目につく小さな町。村人はハク達を見て動きを止め、妙な空気が流れる。その空気に師匠が「悪いことはしない。少し食料を調達に来ただけた」と切り出すと村人は何もなかったように歩き出す。
「厄介だな。この町にも噂が広まってるらしい」
師匠はハクとゼゼを指差し一言。
「此処で静かに待ってろ」
心無い言葉に「なんでですか!!」と反発するハクだが「いいぜ、待ってる」とゼゼは腕を組む。
「掟と追放のやつが各地にばらまかれてんだろ。なら、仕方ねぇ。おっさんは俺らよりも束縛は浅い。ちゃっちゃと行ってこい」
「話が分かるやつで助かる」
「嫌です。師匠とは慣れたくないです!!」
師匠に抱きつこうとするハクをゼゼは腕を伸ばし首根っこを掴む。
「ほら行け、おっさん」
「感謝する」
じたばたするハクを腕一つで押さえる ゼゼ。嫌です、と言いまくるハクに腹が立ったか「お前、自分の立場分かってんのか。あぁ?」と脅しを吹っ掛ける。すると、かなり驚いたのだろう。目に涙を浮かべ、ポロポロと涙を溢すと子供のように泣き出した。
「ししょー」
幼子のように大きな声で彼の名を呼ぶ。
「ししょおー」
そんな彼女をゼゼは不機嫌そうに見つめた。特に怒ることもなく、叱ることもなくヤンキー座りをしては知らんぷりする町人に時より目を向ける。メソメソするハクに「オッサンのどこが好きなんだよ」とさりげなく声をかけるとニパァーッと太陽のような明るい笑顔で「優しいところです!!」と泣きながら言う。
「へぇ」
「それと、料理が美味しいところ」
「そりゃあ、調理師だからな」
元気を取り戻し目を擦りながら、これでもかと師匠に関して言う。
「あと、あとは……」
最終付近のゲートで倒れていたときに助けてくれたこと、その言葉にゼゼは小さく舌打ち。
「へぇーそうかい」
不機嫌な声でそう言うとハクはムッとした顔で「師匠を悪く言わないでください」と顔をプイッと背ける。
「別に悪く言ってねーよ」
「じゃあ、何ですか」
「気に入らねぇ、只それだけだ」
「何処がですか?」
逆にハクがゼゼに問う。すると、ゼゼは立ち上がり背伸びをしながら返す。
「元大盾使いのくせに調理師」
それに「ムッ」とハクの頬が膨れる。
「オッサンのくせに糞料理うめぇーし」
「ムムッ」
「あいつ多分、お前のこと――」と言いかけた瞬間割り込むように「待たせたな」と師匠が間へ。「俺がなんだ? 小僧」と師匠の勝ち誇った笑みにゼゼは「はぁー!?」とブチギレては歩き出す。
「なんでもねーよ、糞オッサン!!」
先行くゼゼを追いかけるように「オッサンではない」と師匠が歩む。「ついてくんな!!」と顔を真っ赤にして言うも我に返ったのだろう。「あーそうだった」と自己解決か舌打ち。
「しっしょおー。しっしょおー。ルンルン」とハクは師匠の背を追い、小走りで「師匠」と腰に抱きつく。
「なんだ」
「くんくん。薬草の匂いがするのです」
「後で回復薬にするために大量に仕入れた。山は体力勝負だからな」
「そうですね。ハクちゃん、足滑らせて落ちたことあるのです」
また、バーサーカーの頃の話か。笑顔でそう言うや「足元ご注意なのです」と先行くゼゼに向け言う。「んなのわかって――」と振り向き様言うゼゼだったが石に足を取られ、すっ転ぶ。「いってぇ!!」と声を荒らげハクが駆け寄るとモンスターの気配。
師匠が弟子入りしていたときに使っていた大切な包丁をハクは無言で出現させるや「えい」と繁る草木に向け投げた。それにゼゼは直ぐ様立ち上がるとハクを突き飛ばす。倒れた二人の間に投げた包丁が地に深々と刺さり、山を震わせるような野太い声に地面が揺れる。
「きゃっ」
「うおっ」
慌てる二人に対し冷静な師匠。
「ゴーレムか 。ゴーレムの岩は武器や防具、調理器具に良いと聞くが。さて……どうしたものか」
地面が盛り上がり、涌き出るは人より少し大きい岩のモンスター。その後ろには親玉か――。何メートルものゴーレムが三人を見ていた。
魔物専門調理師 ハク 無名乃(活動停止) @yagen-h
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