野菜と肉と薬草の葉巻き4
「そんなに怒るなよ」
「だって、何日分もの食料を食べたんですよ!!」
「悪かったって」
「許しません!!」
胡座かいて地べたに座り、小鳥のようにぴーぴー騒ぐハクにゼゼは目を棒にする。
「食材さんも生きてるんです。しっかり感謝を込めて食べないとダメなのです!! ハクはガツガツ食べる人嫌いです。美味しそうに楽しく食べる人が好きなのです!!」
――と説教したところゼゼの態度が一変。背を向け、悲しそうに肩を落とす。「聞いてるんですか」の声に「るせぇ……」と拗ねるような悲しむ声に片付けをしていた師匠が口を開く。
「やらんぞ、小僧」
それに――「はぁぁぁぁ!?」と素早く立ち上がり、師匠に不機嫌そうに歩み寄るやテーブルに手を勢いよく叩き付けるように置き「オッサンに何ができんだよ」と突っかかる。
「ほぅ、やるか? いいぞ。お前の自慢の足の速さ。この俺の愛盾が受け止めてやろう。レオニダス」
片付ける手を止め、盾を呼び出す。
「いいぜ。来いよ」
挑発しフットワークを踏むゼゼはだが――ハクの「レオニダスって盾の名前ですか?」の空気を読まない一言に気が狂う二人。
「
ゼゼがピシッと師匠を指差すも「ハク、師匠の盾。レオちゃんって呼んでもいいですか?」のマイペースにひざが崩れる。
「あぁ、好きな英雄の名前でな。名前なんぞ無いんだが幾度の困難を乗り越えてきたからそう呼んでる。いいぞ」
「わーい、レオちゃん。よろしくなのです」
師匠の大盾をハクは抱えるように持つ。重さに耐えきれず、ペタンッと地べたに座ってしまうが「レオちゃん、大きくて重いのです。むぎゅーなのです」と嬉しそうに抱き締めた。
「はぁ、やめやめ。やってられねーわ」
ゼゼは握り拳を振りほどくや「フッ」と鼻で笑い余裕な師匠に目を向ける。
「て、つだおうか?」
「怪我人は休んでろ」
「なんだよ。じじぃ!!」
ムッとし乱暴に言葉を放つと包丁が空を斬った。ゼゼの前髪が少し切れ、サッと顔が青ざめる。
「師匠と呼べ、小僧」
怪我人は休んでろ、と言いつつ容赦ない行動に顔がひきつるゼゼ。「そ、そうかい。じゃあ、休ませてもらうわ」と返すも小声で大盾で遊ぶハクにこっそり言う。
「お前の師匠ヤバくね?」
「そんなことないですよ。師匠は優しいですよ。エヘヘっ」
師匠の態度の差に思わずゼゼはため息を漏らす。横になり、軽く目を閉じると草木の香りと共にほんのり混じる血の匂い。うっすら目を開け「いるのな」と独り言を言うと腹が満たされたせいかスヤスヤと寝始めた。
「ゼーゼー。小さな町に行きますよ」
「ん? んだよ」
「ししょーが『町にいくぞー』だそうです」
「はぁ!? あ……俺が食ったからか。アッチの大きな街には行かないのか? フォートのオッサン」
ハクは「よいしょ、よいしょ」とゼゼの手を引く。「行ってもいいが手配者二人いるとなると俺が保たんと思うが」と邪魔ではないが「自分の身を案じろ」と言わんばかりの言葉に「ケッ」と雑な返事。
「わーったよ。行く」
「利口だな。戦闘に関しては制限はしない。好きに戦うといい。但し、ハクを危険な目に遇わせるな。いいな?」
「ったく、この過保護じしぃ。任せとけ、戦闘狂ナメんなよ。オレ、(自称)つえーから」
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