断片が浮き彫りにする群像劇

収録されているのはすべて何かしらの断片です。

しかしそれらの集積によって見えてくるのは、事件の核心だけではありません。人で無い何かに翻弄され、あるいは魅了される人々の姿です。

Youtubeの配信を眺める視聴者、ネットの掲示板で実況に貼り付く名無したち。彼らは一見ただの傍観者ですが、その姿は、この物語を読む私たち読者と重なるのではないでしょうか。

この物語は既にひとつの怪異です。それをどこまでも広く伝搬させ、感染を広げ、怪異の通る道をせっせと舗装しているのは、私たち読者に他なりません。

背筋氏、という名の「二重の」語り部が物語を、ひいては私たち無邪気な共犯者である読者をどこへ連れて行くのか、最後まで見届けたいと思っています。