十年後のあなたへ

主人公の冬哉と彼女の祐月。彼女が彼へ宛てた時を超えた手紙が、胸を、瞼の裏を、どこまでも熱くする物語です。
彼女の命が削られ薄まっていく描写が現実味を帯び、巧みな比喩で綴られる命の営みに胸が締め付けられていくようです。命を繋ぎ止めようとする笑顔に視界が歪み、滲んで見えてきます。

「……私は絶対に死なないから」

彼女の小さな呟きに冬哉は、奇跡は神様ではなく、本人が起こすものと信じて止まない、この揺るぎない想いが胸を打つのです。心の強さで目の前にある死を乗り越えようとして……ダメだ、この物語を読むと、思わず、心が震えてしまう。

思い出がいつまでも心の中に生き続けるために、彼はこの物語を書き続けます。いつまでもあなたの笑顔を忘れないために。

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