第5話

僕は必死に考えた。

僕は、母さんの家族…。


ソフィアを見た。


そうだね、あの女は、僕の家族じゃないよ。


「母さん、そうだね、僕は母さんの息子だよね。」

母さんは僕に駆け寄ると僕を抱きしめた。


僕は泣いていた。


母さんも泣いていた。


母さんの体の一部が、灰と化して、少しずつ崩れ落ちていく。


僕は指からすり抜けていく母さんを抱きしめようとした。

そして、全ての体が灰と化して崩れ落ちた。


ソフィアはフン!と鼻を鳴らした。

「とんだ茶番劇だね。」


そう言うとバタン!と音を立てて戸を閉めた。


ソフィアの家族になれば母さんは生きられた。


しかし、僕はソフィアの家族にはなれなかった。

僕は、母さんの息子だから。

僕は母さんの灰を一握り、ポケットに入れると家路についた。

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何かを手にした時、僕は何かを失う だから500 @dakala500

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