【合成の釜】
ダンジョンに開いた横穴についてはギルドに報告しておいた。
それに、死体になっていた冒険者の遺体をギルドに引き渡す。
儀式魔法により、状態によっては蘇生が可能になっているため、こうやって遺体を見つけては回収することで結構ばかにならない金額の報酬がもらえるのだ。
蘇生費用としてお金を積み立てるようにギルド側に仕組みが用意されているしな。
そんで、横穴だ。
これが結構な大事だったらしく、危険度の高い別のダンジョンにつながってしまっていることが調査チームによって判明した。
つまり、解決するまでダンジョンの侵入制限が厳しくなってしまう。
下手に死人を出さないためにランクで入れるダンジョンが決まっているのはいいことなのか悪いことなのか。
どちらにせよ、一週間程度はこれでダンジョンに入れないので探索は休暇となった。
近くの他のダンジョンに行けばいいとも考えるが、それはそれで面倒なのだ。
行くだけで一日かかってしまう。
拠点を移すのも面倒だ。
なぜ一週間程度かというと、ダンジョンは一週間前後でその内部の構造が変化するためだ。
きっかり夜明けとともに迷宮の構造が一瞬で変化し、中にいた人間は外へ吐き出される。
そして新たな宝箱やモンスターが配置されて、冒険者が刈入れ時と乗り込むわけだ。
迷宮の構造が変わるまで、しばらくは内職をすることにした。
《アイテム化》の2つ目の使い方……物をアイテムにする効果を使って。
正確には、物をアイテムにする効果で作ったものを使って、だが。
根城にしている宿の部屋に戻り、【荷物袋】から【合成の釜】を取り出す。
【合成の釜】は《アイテム化》によって、ダンジョンの一室をアイテムにへと変貌させた一品である。
ダンジョンの一室、合成の間と呼ばれるその部屋は持ち込んだ武器や防具を合成することでより強力な装備を作り出す儀式場。
それを《アイテム化》によって一つのアイテムにへと変化させているのだ。
《アイテム化》は概ねアイテム、つまり持ち運べるサイズ程度に圧縮される。
それが大きすぎるもの、部屋や建築物となると凄まじいことになるのだ。
特に巨大なものには巨大な機構や機能を持っているので、それがアイテムサイズになると有用さが跳ねる。
その一つがこれ、【合成の釜】。
効果は釜の中に入れられたアイテムを合成するだけのシンプルなものだが、作れる範囲が非常に広くなっている。
水薬と薬草などを投入することでポーションを作ったり、複数種類の金属を混ぜて合金を作ったり。
元の儀式場では持ち込める道具の関係で素材を持ち込んだりするのは現実的ではないから雑に使えるのは大きい。
合成の間、【合成の釜】で可能な合成方法は大雑把に3つ。
一つは加算合成。
同一のアイテムを合成することでより上質で高性能なアイテムを作り出す合成方法だ。
これによりスケルトンのミニオンを大量に投入することで強力なミニオンを作成可能。
これをするとアイテム名にプラスがつくのでそこで判断することができる。
合成の間が見つかると市場でもしばらくはプラス修正がついた武器が流通していたりする。
一つは乗算合成だ。
これは異種のアイテムを合成することにより双方のもつ機能や効果、スキルを合成したアイテムを作り出す方法だ。
ポーションや合金の作成方法もこちらに当たる。
何らかのレシピが存在するような気もするが、確かめるのも難しい。
一つは強化合成だ。
装備品やアイテムに素材を合成することでその効果を強化するものだ。
乗算合成と区別が付きづらいのだが、概ね同じ素材を投入することで効果を強化できることが判明している。
ポーションも本当はこっちかもしれない。
合成の間を利用した冒険者が大雑把な分類なので合っているかは不明。
儀式場の使い方が特に切り分けなく、祭壇に装備や素材を置いて起動する、というものなのでどれだけ正しいかはわからないのだ。
【合成の釜】は小脇に抱えるサイズでこの合成が可能。
便利。
しかもサイズを無視して釜の中に投入できる。
これで【布の服+92】とか【アーティファクト・ミニオン:スケルトン+21】とかを作っているが、他の合成方法は試していなかったので試してみることにした。
今回は防具を作ろうと思う。
不意打ちで襲われると普通に死にかねないのだ。
吸血鬼の件は本当に運が良かったとしか言いようがない。
というわけで取り出すのは【アーマードワームアーマー】と【アーティファクト・ミニオン:スケルトン】だ。
【アーマードワームアーマー】はアーマードワームという全身甲殻に守られた巨大なムカデかミミズかみたいなモンスターのドロップアイテムで、筋力に補正が入る鎧である。
内部が生体素材状になっていて、動作を補助してくれれる装備なのだ。
それでも俺には重くて着れないがな。
アーマードワームは専門に狩る冒険者がいるため、割りと手軽に買えた。
これと【アーティファクト・ミニオン:スケルトン】を【合成の釜】に投入することで……。
アイテムを投入された釜は謎の光を放ちながら、その口から鎧を吐き出した。
出来上がったのは【ミニオン・パワードスーツ:アーマードスケルトン】だ。
骨でできた外骨格と甲殻の装甲を持つ2メートルほどの鎧が自立している。
背部が開くようになっており、そこから乗り込むように着る鎧のようで、しかも重量に関係なく俺でも着れるようだ。
というか背中の中に入って乗り込むような代物。
スキルによって自分の思考に沿って動くパワードスーツは思った通りの代物ができて満足だ。
これでダンジョンでの安全性も上がる。
最悪罠踏み込んでも鎧の足が持っていかれるだけというのも良い。
あとは……盾も強化しておきたいな……。
そう思って【木の盾】と【アーティファクト・ミニオン:貴族令嬢】を釜の中に投入した。
同じように謎の光を放ちながら吐き出されたのはガラスのように繊細な見た目の素材でできた盾、【アーティファクトシールド:祈りの乙女】だった。
瞳を閉じた少女の肖像が浮かび上がった魔法の盾。
かざすことにより障壁で攻撃を防ぐ事ができる代物。
あとはポーション類を強化して……他のアイテムの合成も調べてみるか?
《アイテム化》スキルで美少女吸血鬼を手に入れた! 内藤悠月 @knightyou
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