【アーティファクト・ミニオン】
絶世の美少女が俺の目の前で佇んでいる。
その吸血鬼は俺を殺さんと凄まじい殺気を放っていたが。
それが完全に失われ、生気のない表情……というか人形のような表情をしていた。
(事実として人形なのだが)
俺はステータスの装備欄を開く。
【
右手武器:【木の盾】
左手武器:【アーティファクト・ミニオン:スケルトン+21】
頭防具:【革の帽子+10】
胴防具:【布の服+92】
腰防具:【革のベルト+15】
小手防具:【革の小手+8】
足防具:【旅人の靴+14】
外套:【姿隠しの外套+2】
アクセサリ1:【アーティファクト・ミニオン:大灰狼】
└【アーティファクト・ミニオン:ウルフ+6】
└【アーティファクト・ミニオン:ウルフ+4】
アクセサリ2:【アーティファクト・ミニオン:
└【アーティファクト・ミニオン:
アクセサリ3:【アーティファクト・ミニオン:
アクセサリ4:【力の指輪】
アクセサリ5:【身代わり人形】
どれも現状では外し難い。
もっと生存に特化した装備を整えたいところだけれど、そういう装備が買えるところって大体一見様お断りである。
いつもアーティファクト買い取ってくれる商人のおっちゃんも紹介状全然書いてくれないんだもんなぁ……。
ギルドのランクが上がってないのがダメなのか。
未だにFランクだしな。
それと同時に、目の前にいた吸血鬼の瞳に光が灯る。
「――起動完了。
はじめまして、
わたくしはミレアと申します」
そう、カーテシーと呼ばれる挨拶を行いながら彼女は起動した。
それと同時に、自分自身の感覚の広がりを感じる。
「自分の頭の中」とでも言うべき空間に新たな部屋が追加されたような感覚だ。
これは《感覚共有》だ。
【アーティファクト・ミニオン】が平均的に持つスキルで、ミニオンが感じている状況を情報の形で主となる人物と共有する。
これによりミニオンが見ている視界や、その周辺になにがあるかなどを探ることができるのだが……。
【アーティファクト・ミニオン:真祖吸血姫】の知覚範囲が広い。
ダンジョンの階層まるまるひとつをリアルタイムに認識しているようだ。
【アーティファクト・ミニオン】は意識を介さないために知覚範囲のすべてを処理できる。
いや人間にもスキル次第でできるとかできないとかいう話も聞くが、そもそも人間の意識が負荷に耐えられない。
だから無意識で処理して、直感の形で組み上げたりするのだが。
【アーティファクト・ミニオン】は精神の形が人間のそれではないので、複数のものを同時に、具体的に認識することができる。
無論処理能力や元となったものの技能によっては認識できるとは限らないが。
(例として【大灰狼】は機械類を認識できず、《感覚共有》越しにも謎の箱としか見えない)
【
これは……酔いそうだ。
情報酔いである。
必要な情報だけ抜き出して共有するなどの方法もできるが、慣れるまで時間がかかってしまう。
だが、《感覚共有》は機能のごくごく一部、多寡あれど他の【ミニオン】も持つ程度のもの。
【
噂に聞くドラゴンに匹敵するステータスと、それを支える12の複合スキルである。
本当に何だこのステータスは。
踏み込みだけで超音速にまで達するであろう
手持ちの【ミニオン】では傷一つつけられないであろう
しかも装備補正でそのステータスの半分俺にも入って来ている。
つっよ。
なんでこんなクソ強いモンスターが、こんなダンジョンの低階層をうろついていたんだ。
探知範囲に複数人分の
こいつに通りすがりに殺されたんだろうが、運がないを通り越しているレベルだ。
あっ、ミレアが不思議そうな表情でこっちを見ている。
精神構造が人間やモンスターのものではない【ミニオン】でも、主の感情を拾って動作を装うことは割とよくあるのだ。
主との情報共有を円滑にするための機能であり、ミニオン毎で異なる性格を持っていたりする。
まあ元となった存在の性格傾向にはあまり関係ない発露の仕方をするので、元の人格を類推するのは無理だが。
感情がない影響で殆どは機械的になっているのだ。
【盗賊】のうちの一体が行き過ぎてお嬢様風だったことすらある。
ナイフをペロペロするタイプの盗賊が元になってたはずなんだが……。
こいつは特別外れ値だっただけではある。
しかし、ミレアはどこから来たのか。
だって真祖だぞ真祖。
吸血鬼の最上位である。
ドラゴンと正面から殴り合いして勝てるとか勝てないとかそういう次元の超生物だぞ。
【ミニオン】になったモノから情報が抜けない仕様なのはこういうとき困りものだ。
中級の冒険者が潜るような階層で真祖は困る。
不意打ちされたら流石に死ぬ。
そう思って地図と地形を見比べながら探索すること数分。
破壊不能とされるダンジョンの壁に、大きな穴が空いている箇所を見つけるのだった。
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