雪に足跡をのこして

茸山脈

 雪の降る夜だった。その日は久しぶりに雪が積もった。


 月明かりに照らされ、彼女は私の家の玄関に立っていた。その笑顔も、青い瞳も、銀色の長髪も残酷なほど、あの頃と変わっていなかった。


 なんで、どうして、だって彼女は六年前の事故で──


 何年ぶりの抱擁だろう。彼女の体は、泣きたくなるほど冷たかった。

 あの時出来なかった告白を、逃してしまった想いを吐き出す間も、彼女はずっと無言だった。時折あの笑顔を見せるだけだった。


  泣きはらした朝、気づくとベッドの上にいた。

 彼女は既に居なかった。だけど、カーテンを開けて驚いた。積もった雪に足跡が、ベランダから地面までずっと続いていた。


 安心して、白い吐息と共に言った。

 またね、と。

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雪に足跡をのこして 茸山脈 @kinoko_mountain

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