雪に足跡をのこして
茸山脈
雪
雪の降る夜だった。その日は久しぶりに雪が積もった。
月明かりに照らされ、彼女は私の家の玄関に立っていた。その笑顔も、青い瞳も、銀色の長髪も残酷なほど、あの頃と変わっていなかった。
なんで、どうして、だって彼女は六年前の事故で──
何年ぶりの抱擁だろう。彼女の体は、泣きたくなるほど冷たかった。
あの時出来なかった告白を、逃してしまった想いを吐き出す間も、彼女はずっと無言だった。時折あの笑顔を見せるだけだった。
泣きはらした朝、気づくとベッドの上にいた。
彼女は既に居なかった。だけど、カーテンを開けて驚いた。積もった雪に足跡が、ベランダから地面までずっと続いていた。
安心して、白い吐息と共に言った。
またね、と。
雪に足跡をのこして 茸山脈 @kinoko_mountain
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます