【試走】カードショップ物語〜創世の錬金術師〜【RTA】

「人の子の皆さん、こんにちは」


 それは、巨大な体であった。全身灰色のもじゃもじゃの毛におおわれた、がっしりした体であった。


 一方で頭部は──しょぼくれた目をし、金色の髪から半ばで折れた羊の角が飛び出ている頭部は、小さかった。


 頭1に対し、肩幅が33はある存在は、しわしわな声で名乗る。


「吾輩はカードゲームに青春を捧げし電脳世界のグレイテストダイモン。アバル=クタアである!」


上位チャット:こんにちは~!

上位チャット:アバえも~ん!

上位チャット:肩幅でけえ!

上位チャット:頭ちっちぇえ!

上位チャット:肩幅でけえ……!

上位チャット:RTA!?

上位チャット:貴重なアバえもんのゲーム配信だあああああ!


「カードゲームといえば今やデジタルTCGの隆盛が目立つのであるが、やはり物理的なカードの手触りに代わるものはなく、休み時間に机を並べての対戦に勝るものはないと思うのである」


上位チャット:わかる

上位チャット:あの頃ってすげえ貴重な体験してたんだよなあ……

上位チャット:先生に没収されて放課後に先生とデュエルしたわ


「そうしてカードゲームと共に歩んできた吾輩が、ガブガブゲームスから発売された『カードショップ物語〜創世の錬金術師オリジンアルケミスト〜』をやらないわけがないのであった。人の子の皆さんには以前、大変長い間電脳世界との通信に付き合っていただきました。ありがとうございます」


上位チャット:あれは長かったよなwwww

上位チャット:長時間配信助かった

上位チャット:テンションの高いアバえもんが見れて面白かったなw

上位チャット:流行ったよな~カドショ物語配信


「それで初見プレイでエンディングを迎えたあとも、実は電脳世界でちまちまと何周かしていたのであるが……」


 アバルはウンウン、と小さな頭を動かして頷く。


「やっているうちに、RTAが出来そうな気がしてきたのでチャートを組み、一回通しでやろうと思って配信した次第である」


上位チャット:なるほどね

上位チャット:カドショ物語でRTA……!?

上位チャット:何周もするようなゲームでしたっけこれ……

上位チャット:そんなに気に行ったのかこのゲームwwww

上位チャット:珍しくテンション高かったもんなあ


「ただ3時間超えの長丁場のRTA、一人では場が持たなそうなので……お話し相手としてゲストを呼んだのである。では、よろしくお願いします」

「お呼ばれされたのですわ〜!」


 白いモコモコのドレス。ロングの金髪の頭頂からは稲妻型のアホ毛を生やし、声高に名乗る女性──しかし声は男性――がアバルの肩の上に表示される。


「オジょう様連合がひとり、ギャンブルお嬢様! 雷小路らいのこうじ雷乃ライノですわ~!」


上位チャット:でた~~~!

上位チャット:オジ連!

上位チャット:ライノさま~!

上位チャット:ライノさまでけえ!

上位チャット:いつものゲスト定位置w


「コラボは久しぶりですなあ、人の子のライノさん。今日は長時間になりますが、よろしくお願いいたしますぞ」

「ドンとこいですわよ。このゲーム、ライノさまも大好きなゲームなので楽しみにしていたのですわ」

「何周されましたかな?」

「普通の人は一周しかしないですわよ? クリアまで30時間ぐらいかかりましたし?」


上位チャット:あれコラボしたことあったっけ?

上位チャット:リリアちゃんの時ね

上位チャット:競馬配信で一緒してたぞ

上位チャット:またこの二人が見たかった……助かる……助かる……

上位チャット:俺は50時間ぐらいかかったな……カード見てると時間が溶ける……


「ではまずゲームの軽い紹介を。『カードショップ物語〜創世の錬金術師〜』は、いわゆるトレーディングカードゲームを題材にしたゲームなのである」

「カードゲームは青春ですわね〜。オフで人と遊ばなくなってからはめっきりやってないですけども……でも」


 ライノはグッと親指を立てる。


「実は最近また買っているのですわ! BOXで!」

「おお、そうなのですな」

「ええ、甥くんのためにライノさまが代わりに買ってあげてるのですわ。最近は人気が高騰していて予約も子供には一苦労なので」

「なんと優しい」

「そしてパックを開封して」

「ん?」

「高く売れるカードが出たら売りさばいてさらにBOXを仕入れてパックを剥くのですわ! 当たりが出たらさらに倍! 甥くんへの手土産も増えるし、ライノさまは甥くんのお金で脳汁出せて一石二鳥なのですわ〜ッ!」


上位チャット:おいwwwww

上位チャット:優し……クズ!

上位チャット:甥くんエピソードだ

上位チャット:Twitterでたまにでてくる甥くん!

上位チャット:人の金でギャンブルしてるよぉ!


「レアカードを売って、甥くんは怒りませんかな?」

「たくさんカードが手に入ってニコニコですわ。それにホロ仕様じゃない同じカードをちゃんと入れてあげますし。甥くんは性能しか見てないから問題なしですわ〜!」


 ライノはひとしきり高笑いし――


「……まあそんなにうまくいくことはあまりなくて、ライノさまが自腹で買い増した分のBOX代もペイできないことが多いのですわ……」


上位チャット:草

上位チャット:はい

上位チャット:まあね

上位チャット:甥くんは1BOX分のお金しか払ってないのに、なぜか5BOX以上もらえたら大喜びよな

上位チャット:やっぱ優しいわ

上位チャット:いいおじさんやな……

上位チャット:まあ小学生はスリーブなんてつけないしWIN-WINでは

上位チャット:甥くんはWINだけどライノ様はほぼLOSEなんだよなあ


「このようなライノさんのような経験ができるのも、カードショップ物語の一面であるな。この名の通り、カードショップ経営ゲームがメインなのである。激レアカードを手に入れて高値をつけて売る、ということもやれるゲームですぞ」

「その辺、相場とかマジでよくできているのですわ。いつもの作り込みが異常なガブゲーですわよ」


上位チャット:ほんそれ

上位チャット:異常なガブゲー(いつもの)

上位チャット:別の会社のゲームかと思ったけどなタイトル見たときw


「さてレギュレーションですが新規ゲーム開始、店舗ランク最大と世界大会優勝の2つを成し遂げて通常エンディングを見る、NG+ Champion Shop……とでも言いますかな。まあ、やったもの勝ちである」


上位チャット:RTAっぽい話になってきた

上位チャット:初見です、よろしくお願いします

上位チャット:初見さんようこそ~


「それでは早速RTAを始めていきますぞ。とは言っても試走ゆえゆるくプレイする感じですので、ライノさんは自由にコメントしてくだされ」

「お任せですわ!」


 アバルはサクサクとゲーム画面を操作していく。


「オプションで操作中の時間停止をオフにして、カードショップの名前を決めたらタイマースタートである。『あばる堂』として……チュートリアルはスキップして早速店内のレイアウトをしますぞ」

「このザ・コンビニみたいな画面、いつ見てもノスタルジーですわ」

「まずは3つある初期棚をすべて売って、オリパ棚をひとつ買って置きますぞ」

「いきなり怪しい動きしてて草ですわね」


上位チャット:ザ・コンビニ感わかるw

上位チャット:おや?

上位チャット:すっきりした美しい店内ですね


「さて、このカードショップ物語では、新しく発売されるカードゲーム『創世の錬金術師』を取り扱っていくのである。第一弾『創世の巨人編』のBOXとパックを仕入れることができるのであるが……」

「最低この数を仕入れないといけない、というのが決まってるの、お店らしいですわよね〜」

「まずは仕入れられるだけBOXを仕入れますぞ。百万円までは借金できるので、めいっぱい……とはいえ、店のランクが低いと仕入れできる数にも制限があるので、これが限界ですな。端数で10パックを買っておきましょう」

「借金できるの初めて知りましたわ」

「そしておもむろに全てのBOX内のパックを開封していきますぞ」

「ライノさまかな?」


上位チャット:ライノさまかなは草

上位チャット:俺もやったわ借金

上位チャット:親の顔より見たパック開封画面


「そんなことすると売り物がなくなるですわよ? ほら、お客様来たけど、売り物がないから帰って行ってますわ」

「ふぉっふぉっふぉ。接客よりパック剥きが重要ですぞ。パックを剥いている間も時間が経過するので1秒も無駄にはできませんぞ」

「これから3時間もプレイするのに……?」


上位チャット:ここの店主、何も仕事せずパック剥いてる……

上位チャット:パックを剥く店主を展示する施設かな?

上位チャット:タイムは売り上げより重い!

上位チャット:一時停止モードもあるけどRTAだとこうなるか


「いやしかしこのムーブ……わかったのですわ! レアカードを売りさばく作戦ですわね?」

「おお、鋭いですな。うむ、この第一弾パックにはMTGで言うところのパワー9ナイン的な超強力なレアカードが入っているのであるが」

「名前だけはみんな聞いたことあるですわよね? ブラックロータスとか、アルファ版だとうん億円するやつですわ」


上位チャット:ブラックロータスさん!

上位チャット:あれなんでそんなに高いの

上位チャット:バカみたいに強いしアルファとベータにしかなくて枚数少ないし再録はないから

上位チャット:水銀、人体、石、門……マジでパワーナインみたいなのが第一弾に入ってて重要なんだよなあ

上位チャット:初見プレイじゃ序盤の資金力もあって全然手に入らないし、後々オークションで入手しようとしてもバカ高いし


「そういったレアカードを確保しているのである。おお、来た!」

「うおお、『脈動する水銀』! フォージした時フレームにソケットできるアーケイン……テキストが単純なだけにバカ強力なカード! 最初期のバランス取れてなさを象徴するカードですわ……序盤から高く売れるカード!」

「ふぉっふぉっふぉ。幸先がいいのである」


上位チャット:うおおおおお!

上位チャット:水銀キタァァァ!!

上位チャット:何が何だって……?

上位チャット:ぶっ壊れ来ました


「しかし、売りませんぞ」

「あれっ?」

「このゲームは1ヶ月単位でシーンが経過するのであるが、家賃で赤字になってもとにかくカードは売りませんぞ」

「カードショップとは?」


上位チャット:草

上位チャット:売らないのか

上位チャット:この時点でも万単位で売れるよね

上位チャット:今売ってもなあ


「さて2ヶ月目ですが……ここでユニークNPCの錬堂れんどうアルク君が来店してイベントが発生しますぞ」

「めっちゃホビーアニメの主人公っぽい格好してる男子小学生、好きですわ~」


 テクテクと2Dキャラが店内を歩き、立ち絵付きで会話を始める。


「初見の人に説明すると、この『カードショップ物語』、実際にゲーム内でカードゲーム『創世の錬金術師』をプレイできるのである。ショップとして成功する他に、カードの世界大会を優勝する、という目的もあるぐらいでしてなあ」

「そう! そこがバカみたいな作り込みなんですわ〜!」


 ぐっ、とライノが前のめりになって早口で言う。


「このゲーム、『創世の錬金術師』というカードゲームをマジで作り込んでいて……本来ならマジで10年ぐらいかけて展開する内容を仕込んであるのですわ! そのおかげで新シーズンが発売されるごとに環境が変わるし、カードの評価、つまり相場も変わっていくという……! 開発者のインタビュー記事見ましたけど、『TCGの投機的一面をゲームにする』ためにゲーム内ゲームを作り込むとか常軌を逸しているのですわ!」


上位チャット:常軌を逸してるw

上位チャット:いやホントそれだよ

上位チャット:普通にTCGとして売れそうな内容してるもんな

上位チャット:カードの値動きをゲーム内に実装したい……せや! ちゃんとしたカードゲームを作って時間経過と共に新カード実装していこう!

上位チャット:頭おかしいよな……

上位チャット:ひとつのカードゲームの歴史を体験できるめちゃくちゃ貴重なゲームではある

上位チャット:新シーズンのカードリスト見るだけでご飯食べれるゲームよな

上位チャット:でもTCG未経験者にはカードの価値が分かりづらいのがなあ……


「さて、アルクくんに『創世の錬金術師』をレクチャーする、という体でカードゲームのチュートリアルが入りますがスキップしますぞ」

「あ、それスキップできたんですわね」

「クリアデータがあるとできるのである。純粋な一周では無理ですな」


上位チャット:スキップできたのか……

上位チャット:だからクリアデータが必要だったんですね

上位チャット:地味に長いからな~チュートリアル

上位チャット:チュートリアルだと思って流すと後悔するチュートリアル


「さて対戦が終わったら、急いでオリパを作成しますぞ」

「でましたわ〜、オリパ! お店が独自にカードをパックにしてまとめ売りしてるやつですわ。昔からあるけど、最近はいろいろ問題提起も」

「まるで使えない低レアだけを詰め込んだとにかく枚数が多いだけのパックを作り、318万1000円で売りに出しますぞ」

「問題ィィ〜! ボッタクリにも程がありますわ!  1パック定価300円ですわよ!?」

「ところがアルク君はチュートリアル後に必ず1つだけ店内の商品を買うという仕様がありましてな。どうやらここでは彼のゲーム終盤の資金力を参照しているらしく、この金額で買ってくれるのである」

「なにそれ知らなかったですわ。うわ買ってる……金持ちすぎる小学生ですわ……」


上位チャット:ひどいwwwww

上位チャット:なにそれ……知らんかった

上位チャット:だからオリパ棚だけでよかったのか

上位チャット:いつもの数字

上位チャット:ゲーム内時間経過しても小学生なのに300万も終盤使うのか……

上位チャット:アルク君騙されてるよ!


「さて6ヶ月目に次のシーズンが発売されるまでとにかくパックを剥いて、自分で使うデッキ用に強力なカードを確保していきますぞ」

「相変わらずお客さんが買うものがないのですわ」

「アルク君の登場後はユニークNPCが来店するようになるのであるが、彼らは初期デッキを買ったパックで強化して大会に参加してくるのである。なのでうっかり第一弾のパックを売ると、『脈動する水銀』や『調和された人体』を使われてしまう可能性があるので売れないのですな」

「えっ、そういう仕組みだったの……?」


上位チャット:えっそうなの

上位チャット:シーズンと共にデッキが変化してるのは知ってたけど、そういうことだったのか

上位チャット:細かすぎるだろこのゲームwwww


「はぁ〜! 知ってたらライノさまだって売らないのですわ。でも売らないと普通は家賃でゲームオーバーするのですわ」

「だからアルク君から金を巻き上げる必要があったのである」

「悪魔〜! アルク君たち、他の店に行ったほうがいいのですわ!」

「たぶんこの街には我が『あばる堂』しかないのでしょうなあ……」


上位チャット:はえ~……

上位チャット:今すぐ競合店立てたらあばる堂秒でつぶせそうw

上位チャット:サンキューアルク

上位チャット:借金一気に返済したし余裕も出たな


「さて6ヶ月目になったので第二弾『黄昏の冒険者編』パックが発売開始しましたぞ」

「来ましたわね。第一弾ほどではないけど重要なキーカードが入ってるシーズンですわ」

「この時点で『第一弾』は仕入れられなくなるので、未開封パックの市場価格が上がっていきますぞ。後々の資金稼ぎのために、第一弾を10パックだけ残すのである」

「こういう風に時間とともに価値が変化するのが、実際の市場みたいで面白いですわよねえ。ちゃんとカードゲームとして作り込まれているから、カードのテキストから後年価値が出るかどうか推測するのが楽しくって!」


上位チャット:マジそれ

上位チャット:パック剥くのが本当楽しくてなあ

上位チャット:でもテキストちゃんと読まないと価値が分からないから難しいんだよな

上位チャット:TCG脳がないと価値の予想がつかないんだよね

上位チャット:いちおう現時点の相場はPCで調べられるんだけど手間なんだよねえ


「……逆に言うと2周目は何が値上がりするか分かってるから、そういう楽しさがないというか……よく何周もできるのですわ」

「ふぉっふぉっふぉ。ランダム性のあるものを効率化していくのが楽しいという感じであるな」


上位チャット:わかる

上位チャット:RTAは最適化だよね

上位チャット:2周目は俺も第一弾全ぶっぱしたなw なお借金で首回らず

上位チャット:後でもう一回やろうかな


「……ということで、第二弾は加盟店ノルマの最低数だけ仕入れて倉庫送りにしておしまいですぞ」

「えぇ……?」

「強いレアカードもあるのであるが、活用しようと思うとかなりパックを剥かないといけないので、資金が足りなくなるのである。それに売ると何人かのユニークNPCのデッキのキーカードが揃ってしまう可能性があるので、売りませんぞ。限界ギリギリまで借金で粘りますぞ」

「売らないことでライバルを弱体化するとか、悪魔の所業すぎるのですわ……こんなの通常初見プレイで気づくわけないのですわ」


上位チャット:ずるいよwwwww

上位チャット:物売ってねえってレベルじゃねえ!

上位チャット:気づかないってそんな仕様wwwwww

上位チャット:これはヒドイデスヨダイモン


「このシーズンから店舗で公認大会を開催できるようになり、チュートリアルで強制的に開催、参加することになりますぞ」

「でた、大会! 勝ち進むとキャラごとのストーリーが進んで面白いのですわ」

「ですが3年目まではクリア条件のひとつである世界大会が開催されていないため、勝つ必要もないので初手降参ですぞ」

「オイィ! RTAにありがちなやつですわ〜!」


上位チャット:草

上位チャット:RTAでよく見るやつだ!

上位チャット:タイムは勝利より重い

上位チャット:RTA、タイムのためにすべてを犠牲にしがち


 その後もアバルはサクサクとゲームを進めていく。


「第三弾シーズンからはさすがに借金も限界なので、店舗ランクのためにある程度普通に商売しつつ、パックを剥いてデッキを整えていきますぞ」

「そう言いつつ、店舗の様子がおかしいですわよ?」

「棚を侵入できない位置に設置して、レアカードを安い値段で展示すると、なぜか他の商品を倍ぐらい高値に設定してもよく売れるのである」

「なにそれ知らなかった……じゃあ、店舗の外が緑なのは?」

「店内に観葉植物を置くと環境評価が上がるのであるが、なぜか軒先も店内判定らしいですぞ」

「う〜ん、効率的な非人間的レイアウト〜!」


上位チャット:観葉植物は知ってたけど、レアカード展示は知らんかった……

上位チャット:アバえもん、このゲーム研究しすぎだろwwww

上位チャット:レアカード展示会

上位チャット:地味にパック剥いてカード選定する操作も早いぞ


「そういえば買い取りカウンターは置かないんですわ?」

「あれは楽しいのであるが、値付けして買うという操作が時間かかるのでこのRTAではやりませんぞ。バイトを雇ってあらかじめ価格設定しておけば自動でやってくれますが、カードリストも膨大ですからなあ……おっ、『うなぎシャーク』ですぞ」

「あ〜、よく見るキモつよカードですわ!」

「再録が4回行われますからなあ。売るなら初版の今しかないので、通常プレイなら早めに売りに出すのが吉である」

「なぜこんなビジュアルのカードが4回も再録されるのか不思議ですわ……」


上位チャット:テーマ外でも再録されるという謎な

上位チャット:まあ強いし強すぎないしキモいし……

上位チャット:イラストが毎回変わってるの芸コマだよね。全部キモいけど

上位チャット:買い取りでレアカード来たときオッてなるよね。安く買い叩けると脳汁出る


「さて第五弾のシーズンに入って勝負の時ですぞ」

「ついに一回もカードゲームしなかったですわ。ほとんどパック剥いてる時間でしたわ……」

「まずはこのシーズン2ヶ月目に、倉庫に入れておいた第一弾パックを10個、ひとつ20万円で売りに出しますぞ」

「300円が20万円……夢のある話ですわ……」


上位チャット:カドショ物語の基本画面、パック剥き

上位チャット:1パック20万!?

上位チャット:たっか

上位チャット:最後の方では1パック100万ぐらいで売れるよ


「ところで、第一弾は売るとNPCが強化されてしまうので売らないという話では?」

「この月は閉店間際に裏ボスのお披露目来店があるので、ユニークNPCが来ないのですな。ですので安全に売ることができますぞ」

「……ああ! あったのですわ、そんなイベントも!」

「裏ボスの会話シーンはスキップできますぞ」

「知ってた速報ですわ」

「ふぉっふぉっふぉ。まあこのレギュレーションでは戦いませんからな」


上位チャット:裏ボスさんチッス

上位チャット:世界大会何回優勝だっけ?

上位チャット:これボスだったんだ……


「さて、なんとか全て第一弾パックを売りさばいて……売上経験値により、店舗ランクが目標の6になりましたな。これで店でエリア大会を開催して参加することができるようになったので、今期で世界大会優勝を目指しますぞ」

「早っ。ライノさまが普通にプレイしてエリア大会開けたのもだいたい同じタイミングだけど、プレイ時間的には3倍以上かかってるのですわ……」


上位チャット:普通はカードの選定とかテキスト読むのに時間かかるからなあ

上位チャット:俺の知ってるカドショ物語じゃない……

上位チャット:もうそんなに時間経ったのか


「さてさっそく店舗公認大会を開催するのであるが、その前に闇の儀式を行うのである」

「闇の……儀式!?」

「店内レイアウトを開いて……プレイテーブルを売ろうとして『よろしいですか?』の画面にすると同時に、キーコンフィグで設定しておいた店内レイアウトのショートカットを押して、確認画面からレイアウト画面に戻しますぞ。これで確認画面が裏で保存された状態になりましたぞ」

「んん!?」


上位チャット:!?

上位チャット:ん?

上位チャット:ざわ……ざわ……

上位チャット:なんだ?


「これを設置中の4つ全てに行いますぞ。猶予1フレーム技なのであるが、ほぼ同時押しの気持ちで押すと成功しやすいのである。大会開始までに4テーブル全て準備できれば……よし、できましたぞ」

「嫌な予感がするのですわ」


上位チャット:オイオイオイ

上位チャット:まさか……?

上位チャット:何が始まるんです?


「公認大会が始まりますぞ。8名によるシングルエリミネーショントーナメントで、計3回戦あるのであるが……」

「お、相手は蒼空リナちゃんですわね。ホビーアニメに出てきそうなヒロイン風でかわいいのに、使ってくるのが黒単ゾンビデッキという嫌らしい」

「先攻を取りましたので即座にターンエンド。相手の操作中にレイアウトボタンを何回か押して……テーブルが光ったら決定ボタン!」


 パッ、と対戦中のテーブルが消え、リナの動きが止まる。


「成功ですな。プレイテーブルを売却することにより相手は操作不能に陥り、1ターン中の制限時間をオーバーして負けますぞ。これで準決勝進出ですな」

「ジャッジー! 不正ですわー!」

「この手法で、自店舗で開催するエリア大会までは攻略していきますぞ」


上位チャット:!?!?!?

上位チャット:は?

上位チャット:草

上位チャット:オイwwwwwww

上位チャット:ジャッジー!

上位チャット:ジャッジ(あばる堂バイト)「不正はなかった」


「ちなみにこの技名は『テーブルキル』といいまして、発見者は吾輩ですぞ」

「ジャッジキルがかわいく思えますわ」


上位チャット:テーブルキルwwww

上位チャット:テーブルキルじゃねーよw

上位チャット:発見者俺キタコレ

上位チャット:アバえもん研究しすぎだって

上位チャット:こんなバグ技があるとは……


 高速で試合が終了し、舞台は世界大会の会場へと移る。


「それで……まったくカードゲームせずに世界大会に行ったけども、この後はどんな不正をするのですわ?」

「世界大会でできるグリッチは見つけていないので、ここからは通常プレイですな。ですが世界大会の出場者はなぜか全員『あばる堂』の利用者、ユニークNPCですので、デッキは弱体化していますぞ」

「わざわざ別の店舗とかエリアに出張して出場権を得ただろうに、悪徳店主と戦わないといけないNPCが不憫ですわね」


上位チャット:ホントな

上位チャット:追加NPC欲しいよな~

上位チャット:まあ世界大会でしか戦えないNPCもたくさんいるし


「初回の対戦相手は……金森エリさんですな」

「いわゆる緑金デッキのお嬢様ですわね。やっとマトモなカードゲームがはじまるのですわ」


上位チャット:カードゲーム始まる

上位チャット:金森お嬢様好きだわ~

上位チャット:金持ちキャラなのいいよね


「この『創世の錬金術師』、ゲーム用語が独特で、しかもパックに同梱されている説明書にしか遊び方が書いてないので、ルール把握が難しいのである。さらにゲーム中のカード操作は全て手動なので、プレイミスをするとジャッジキルされるという……なのでちょっと集中して対戦させていただきますぞ。用語解説はご容赦くだされ」

「ライノさまも何度もジャッジキルされたのですわ……」


上位チャット:あるある……

上位チャット:チュートリアルを読み飛ばすとなんも分からんになるよね

上位チャット:全部自分で操作するの、めんどいけどオフのTCG感あって俺は好き

上位チャット:プレミで決勝負けたときは台バンしたわ……


「ライトデッキシャッフル、セット! レフトデッキシャッフル、セット! よろしくお願いします!」

「この『対よろ発声ボタン』よく押し忘れそうになるのですわ〜」


上位チャット:アイサツは基本!

上位チャット:なんでこれ左右にデッキがあるんですか?

上位チャット:システムはそれほど独特じゃないんだけど、用語がな~

上位チャット:用語メモがゲーム内で作れるのが親切というかなんというかね……


 アバルが謎の用語を呟きながらゲームが進行し――


「いやあ、金森さんは強敵でしたな」

「あんなにうまくデッキが回らないの初めて見ましたわ……まさかソケット不足でギガントできないなんて」


上位チャット:ぜんぜん楽勝でワロタ

上位チャット:こんな簡単に勝てるものなんだ……

上位チャット:ギガントまで行かないとか回らなすぎだろwwww

上位チャット:何が起きたんですかこれ……?


「さあ決勝戦ですぞ。一回優勝するまで世界大会決勝戦はアルク君に固定されているので、当然相手はアルク君ですぞ」

「レアカード連打されて負けた思い出があるのですわ」

「どうやらアルク君はレアカードを引きやすい傾向にあるようでしてなあ……通常プレイでは苦戦する相手であるな」

「弱体化されたアルク君はどうなるんですわ……?」


上位チャット:嫌な予感しかしねえ……

上位チャット:がんばれ、アルク君! 悪徳店主に負けるな!

上位チャット:アールーク! アールーク!

上位チャット:アバえもんアウェイで草


「ライトデッキシャッフル、セット! レフトデッキシャッフル、セット! よろしくお願いします!」

「挨拶しないとジャッジキルされる恐ろしいゲームがこちらですわ」

「後攻ですな。通常プレイだとかなり厳しい盤面を作ってくるのであるが……」


 アバルが謎の用語を呟きながらカードを操作し――


「いやあ、アルク君は強敵でしたな」

「初期デッキのバニラカードばっかり使ってるアルク君とか見たくなかったのですわ。アニマで耐えてギガントまで持っていったのに、ろくなホムンクルスがないし……」


上位チャット:知ってた

上位チャット:ほぼ初期デッキのまんまじゃねーか!

上位チャット:ギガントしてもあんなホムンクルスじゃなあ

上位チャット:何で急に攻撃力? が倍になったんですか……?


「ふぉっふぉっふぉ。こちらが2ターンでソケットが埋まってギガントできたのも良かったですなあ。『脈動する水銀』様々ですぞ」

「4ドロー2ヴォイドとかいう『調和された人体』は1枚制限じゃなくて禁止にすべきですわ……」

「さて、表彰式をスキップして店に戻りますぞ」

「情緒がないですわ〜。対戦相手とのストーリーも面白いですのに〜」


上位チャット:初代世界王者、表彰式欠席

上位チャット:ストーリーいいよね

上位チャット:キャラストーリーのコンプ、結構かかるんだよなあ。フルコンしたけど

上位チャット:ホビーアニメっぽくていいよな


「さて第六弾シーズンに入ったので、ここで店舗ランクを最大にしてゴールを目指すのである」

「ランク6から10に一気に……? ライノさまはそこから総プレイ時間3倍ぐらいかかりましたのですわ……?」


上位チャット:わかる

上位チャット:シーズン進むとテキストも複雑になってくるしね

上位チャット:一気に10になれるもんなのか……?


「からくりを説明すると、世界大会で優勝すると次のシーズン、太客の来店が増えるのである。太客は所持金も多いし財布の紐も緩いので、かなり有利に商売できるのである」

「ああ〜、体感そんな感じでしたわね」

「そして前シーズン優勝者の使用カードは価値があがるという仕組みもありましてな」

「なるほど、しこたま溜め込んだレアカードを売るのですわね!?」

「ええ、その恩恵を最大限受けるため、吾輩のデッキをコピーした店舗オリジナル構築済みデッキを1つ3000万で売りますぞ」

「暴利!?」


上位チャット:3000wwwwwwwwww

上位チャット:は?wwwww

上位チャット:いくらパワーナインが入っててもそれは……それは……適正価格かァ……?

上位チャット:オリジナル構築済みデッキ作るの好き。めっちゃ凝っちゃう

上位チャット:ヤバwwwwwwww


「RTAですので後のことは何も考えず、すべて売り出しますぞ。今回は引きが良く3パック作れたのでこれが売れたらクリアである。足りない時は単品売りでなんとかという感じであるな」


上位チャット:店主「世界獲ったから引退するわw」

上位チャット:世界王者のいる店に行ってみたら店主が引退セールしてた

上位チャット:This is RTA

上位チャット:水銀3枚引いてたのか……


「売れろ、売れろ……売れた! 店舗ランクが10になったのでタイマーストップ! 3時間45分でフィニッシュですぞ」

「GGですわ〜」

「ライノさんも長時間お付き合いありがとうございました」


上位チャット:GG!

上位チャット:GGですぞ~!

上位チャット:はえ~

上位チャット:こんな早く終わるものなのかwwww

上位チャット:スタッフロール(一回目)だぞ、泣けよ


「いや〜、知らない仕様? テクニック? が色々あって面白かったですわ。3時間があっという間ですわ〜」


上位チャット:もう3時間強?

上位チャット:一瞬だったな……

上位チャット:二人の喋りで飽きずに見れました!

上位チャット:テーブルキルが衝撃的だった


「やっぱりこのゲーム、というか『創世の錬金術師』が面白いですわ〜。開発にはぜひ、オンライン対戦モードを入れて欲しいですわ……」

「むしろこのショップ運営要素込みでマルチプレイにしてほしいですなあ。レアカードが有限なDCGというのは他にないでしょうし……」


上位チャット:わかる

上位チャット:オンライン対戦欲しい!

上位チャット:PvPがないから許されてるようなところのあるカード結構あるけどなw

上位チャット:カドショマルチ……鯖立ててやりたいな、確かに

上位チャット:人の店に買いに行きてえよ

上位チャット:MODとかで誰か頼む……!


「RTAとしては倍速モードがあると嬉しいですな。そしてRTAが流行ってほしいですぞ」

「ライノさまとしては、NRTALsに出るアバル様が見たいですわね」

「ふぉっふぉっふぉ。走者が増えないと難しいでしょうなあ」


上位チャット:RTA……流行るか?

上位チャット:3時間越えはちょっと

上位チャット:大きなイベントで見たい……いやオリアル部分が難解で見世物としてどうかな……


「それではライノさま、人の子の皆さん、長時間ありがとうごさいました。配信を終わりにしますぞ。ではさらば」

「ありがとうですわ〜!」


上位チャット:お疲れ様でした~!

上位チャット:さらばさらば!

上位チャット:ライノ様もありがとう~!

上位チャット:ゲーム含め初見ですが楽しかったです。お疲れさまでした

上位チャット:カドショ物語初見だと……?

上位チャット:カードゲーム部分見てて分からなかっただろうにwwww

上位チャット:謎用語ばかりだったので買って勉強します

上位チャット:アバえもんのおかげでカドショ物語初見勢が……!

上位チャット:ありがとうアバえもん

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

逆行転生したおじさん、性別も逆転したけどバーチャルYouTuberの親分をめざす!(改稿版) ブーブママ @aboobdad

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ