第3話 言葉から想像されるものは、誰一人として同じではない。
言葉は面白い。
言葉だけで紡ぎ出される世界は、読む者によって再度想像される。
漫画の世界は、作者の「絵」という表現力によって、とりあえずキャラクターの見た目(印象はまた別)は他の読者と同じになるが、小説の場合は違う。
一人ひとり、それぞれが持っている言葉の感じ方によって、キャラクターの雰囲気は変わってくる。おおよそ同じような方向に行く場合もあるが、キャラクターの行動や発言などに引っ張られて逆にいくこともあるだろう。
それは「言葉」の持っている背景が人によって違うからだと感じる。
例えば景色。
――海。
といえば、こんな海と想像する。でも、それはきっと人によって違う。生まれ育った地の海かもしれないし、テレビで見たどこかの海のイメージかもしれない。
――空。
といえば、こんな空と想像する。でも、それはきっと人によって違う。普段何気なく眺めている空かもしれないし、旅先で見たどこかの空のイメージかもしれない。
——美味しい苺ジャム。
といえば、あの苺ジャムと想像する。食べ慣れているメーカーのジャムかもしれないし、自分で作ったジャムのイメージかもしれない。
だから作者は時折読者を信頼しなければならないのかもしれない、と思うことがある。事細かにどういう為人か、どういう景色か書くのもいいけれど、書きすぎず、でも足りなさすぎずでもいいのだと思う。不足する部分は、きっと読者の想像力が補ってくれるだろうし、想像の自由が生まれるだろうから。
言葉は誰のものでもないが、誰かのものでもある。 彩霞 @Pleiades_Yuri
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