第12話 目覚めは猫



…どれくらい寝たんだろう?



シクはゆっくり目をあけると

窓の外は夕方だった。


魔法を使ったからか

それとも生死をさまよったからか

よほど疲れていたみたいだ。





ふと





壁の隅に、1人の猫人?が立っていた。



…いやいやいや なんで部屋にいる?

暗殺?



猫人は無言で近寄ると

「頼まれたものだぬ わたすぬ」

とシクに言った。


肉球の手の平には

シクと書かれた身分証がのっていた。


保証人には

奴隷商人補佐ルドルフと書かれており

ルドルフが示すスキルの紋章が表示されている。


保証人にはある程度の収入と

身分が必要と聞いた事がある。

奴隷商人補佐って表向きにはって事なのかな。


「ありがとう。」


猫人は目を細める…


「カルだぬ。またぬ」


猫人カルはそう言うと

身分証をベッドに置いて

普通に扉から出て行った…




猫人は、語尾にぬをつけるのだろうか?

この街で猫人なんてあんまり見かけないから

わからないけど 何者なんだろう。

いろいろと聞きたかったけど、

すぐに消えていった。



とりあえず身分証は

ありがたくもらっておこう。








宿屋から出て

まずはしっかりと装備を整えようと思った。

これから何をやるにしろ

命に関わる事が多い気がするし


「まずは防具かな…」


夕暮れに広がる街並みは

もう人も少なくなってきており

防具屋も夜になれば閉まる。


シクは急いで防具屋へと足を運んだ。


「いらっしゃい。好きに見てってくれ」

防具屋のカウンターに座る男は

シクを見ると、値踏みしたのか

やる気のない返事で声をかけてきた。


「初めてなんだけど、銀貨1枚しかなくて

予算銅貨500枚ぐらいで何かない?」


男はシクを見て、鼻で笑う。

「まあ…あんたに見繕うなら

軽い装備の方がいいだろうな。

銅貨500枚ぐらいだと中古しか無理だな」


男は棚に無造作に置かれている

鉄の胸当てを取り出す。


「ないよりはマシって所だな。

買うかい?」


やっぱり黒パン銅貨5枚に比べると

装備は高いな。

新しそうな鉄の胸当ては銀貨1枚


魔物の皮でできた服とかは

値札を見る限り最低銀貨2枚はした。

銀貨は1枚しかないし

仕方ないか。

「それを買うよ。あと鞄とか袋とかない?」


鞄や袋も買おうと思った。

昨日ステータスで確認した時

スキルの毒を石につけて投擲で戦うのもありかと思ったんだ。

冒険者ギルドは、戦えるスキルがあれば

稼げると聞いた事があるし

ルドルフさんの援助ばかりに期待していては

ダメだ。

石はタダだし、袋にいれて戦う事にした。

ゲドさんのナイフとか欲しかったけど

スライムが食べてしまったし…

どのみち短剣スキルや、経験もないしな。


あと、いつまでも靴が倉庫なのもどうかと思う。その日暮らしじゃなくなった今、

鞄は必需品だ。

もちろん、もしものときの倉庫は靴だけど…



「うちは雑貨屋じゃないが 簡単な鞄やお金を入れる袋ぐらいは用意できる。

銅貨200枚でどうだ?」


まあ出費はしかたないかな。


「それでお願いするよ」


男は適当にカウンターの中から

鞄と袋を取り出す。


「お釣りは身分証に入れるぞ。銅貨300枚もうちにはないんでな」


身分証があってよかった!

よく考えれば平民街の人は

みんな身分証あるしな、

無ければ

お釣りを考えて

なにか買わなきゃいけない所だった。

無駄になる。


ルドルフさんいわく

身分証は、複製できないように

魔法具で作られている。

高価なものだから無くすなとか言ってたな。


お金の管理も銀貨など高額になると

おいそれと持ち歩けない為 

身分証が財布がわりと聞いた。


硬貨の入金や出金は、

ある程度なら商人ギルドでできる。

出金のみ手数料がいるらしい。



「これで。」

シクは銀貨1枚と身分証を机に置いた。

「あと銅貨50枚ぐらいはおつりできる?

買う袋じゃなくて無造作でいいから

鞄にいれてほしい。」


硬貨も多少は持っていたほうがいいと思った。

食料品とか安いものは

硬貨しか取り扱わない店もあるだろうし。



「まあそれぐらいならあるが、

うちは銀貨の取引きが多く

大体は身分証払いだ。

多いおつりは今回だけにしてくれ。

あと銅貨は鞄でいいのか?

取り出す時大変だぞ?」


…どうしようかな


男は返答をしばらく待ったが

待ちくたびれたのか

銀貨1枚を金庫にいれ、

シクの身分証を手にとると

身分証が入る穴のあいた魔法具に差し込む。


ジジ…


変な音とともに

身分証が軽く光った。


「ほらよ 銅貨50枚と身分証返すぜ。」


なんかごめんなさい。


男は金庫から銅貨50枚を袋?にいれ

身分証を机に置いた。


身分証には銅貨250枚と記入されていた。

すごい魔法具だな…


身分証本物でよかった。





?袋?


「あの…


「捨てようと思ったボロい袋に

銅貨は入れといた。気にするな」


男は銅貨の入ったボロい袋をサービスで

鞄にいれてくれた。

それとは別に、紐付きの袋と胸当てをカウンターに置いた。


見下されてる感じがしたけど

案外優しい人なのかもな…

これからも防具はここでお世話になろう。


「いろいろとありがとう」


鉄の胸当てを装備したら

次は冒険者ギルドに行かなきゃな。





シク


所持品

鉄の胸当て シャツ ズボン 靴 

紐付き袋 鞄 銅貨50枚(ボロ袋)

銅貨250枚(身分証)



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落ちこぼれシーフの盗譚 ねこまた @nekomata1805

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