はざまのよびごえ
いちじょうこうや
序
あなたは「目に見えない存在」を信じょじたことはあるだろうか。
俗に言われるお化けや妖怪、幽霊。神仏や守護霊などと称されるもの。古今東西、文章や口語で語られてきたそれら。
近代の産業革命から始まった科学の発展と近代化が進んだ現在でさえ、それらの存在は未だ明確に説明はされていない。
あれは神仏や目に見えない存在の助けであったのか。
これから綴っていくのは私、一条がこれまで生きてきた人生の中で
“目に見えない存在を否定することはできない”と最も実感することになった、不可思議で傍から聞けば嘘のような、しかし本当にあった出来事である。
なお、これから記していく話の中で年齢や地名などは多少ぼかしてはいるものの、私の身に起こった出来事そのものは嘘偽りではないものであると重ねて念押しをさせていただきたい。
あれは今から五年以上も前のことである。
大学を卒業し、実家のある地元を離れた私は新卒の営業として、ある会社の支店の営業課へと入社をした。
新入社員への研修を受けた後、営業課の教育担当の先輩社員に同行し、支店の担当エリアを東から西へと移動する日々であったと思う。
当時は家賃を払っていた家よりも、出張先でホテルに滞在する日の方が週の中では多かったのだから。
私が入社した年は会社がある認定か何かを取得するために通常業務に加え、各部署で認定を受ける資料の準備をしたりと、とても慌ただしい年であったと覚えている。
そのせいだろうか。
入社当時、配属された営業課は私を含めて六名在籍をしていたのだが、初秋に体調を崩した社員が一名、休職。後に退職となった。
かくいう私自身も配属されてすぐ、認定の資料準備のため同期の中では一番最初に経験した休日出勤。重ねて一週間の半分近くをホテル生活しているような日々の積み重ねが影響していたのだろう。
幼少期より軽い起立性の低血圧を持ってはいたのだが、それが一時的に悪化したり、体調が思わしくないことがままあった。現在、全く別の原因で年に何度か通院をすることがあるが、あの時も今と同じか、それ以上に通院をしていたかもしれない。
少し話は逸れたが、まさに字の如く心を亡くすような忙しい時期であった。
話を当時に戻そう。
営業課を始め、社員が出張へ行く際の移動方法は大きく分けて二通りある。
一つは社用車を使用しての移動。もう一つは会社から少し遠方であったり、社用車を使用できないときは新幹線などを利用して移動し、そこからレンタカーを借りるというものだ。
結局最終的に車を利用することには変わりないのだが、大学一年時に免許を取得してから入社するまでペーパードライバーであった私は、できるだけハンドルを握りたくなかった。
いくら教育係の先輩と交代で運転をするとはいえ、運転する時間は短いに越したことはなかったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます