芥川龍之介といえば、何作かのうちに、本作は必ずといってかまわないだろう、挙げられる。
何年ぶりかに読み直し、複雑な機微を描いていることに気づかされた。
トロッコにふれたことに怒った年配の作業員。
手伝わせてほうり出す若い作業員。
それだけでも芥川龍之介の眼の凄さはわかるが、また風景描写の見事さよ。
そこで終わらず、生活を営む立場になりその出来事にいまを見いだすという纏め方。
芥川龍之介はあまりに巧みすぎて、器用貧乏というのもおかしな喩えだが、あまりに不当に評価されてきたように思われてならぬ。
短いものではあるし、汲めど尽きせぬ佳品であることは間違いない。