第4話 EVENT!:落とし物と厄介事?
えっ……け、“拳銃”!!? 拳銃の落とし物!? な、なんであの子こんな物騒なモノ持ってんだ!? 十中八九用途は護身用だろうけど、アレ?
ひょっとしてこの世界って護身用の武器を身につけなきゃいけない程ヤバイのか!?
確かに魔物とか、異世界特有の脅威ってあるあるだけど――ぐぬぬ、ユーコにそこんトコロ聞きそびれたのがここに来て痛むとは。
ま、まぁ、物騒とはいえ落とし物だしちゃんと届けないと! 母さんも『人の為にやることは、巡り巡って自分に帰って来る』っていつも言ってたし!
【『ユーコの落とし物』を手に入れた! 『ユーコの落とし物』を『だいじなものポーチ』に入れた!】
こ、これは! アイテム取得した時の実況テロップ!? こんなのまであるのかよ……スゲェ。
いや、感心してる場合じゃない。こういう“落とし物系のおつかい”は、忘れないうちにやっておいた方がいい!
序盤のプチイベントって、大体後のストーリー展開に関わってくるタイプのやつだろうし、何より護身用の武器を落としたなんて展開はフラグが過ぎるッ!!
直感だけど、何かイヤな予感がする! そんな気がする! とにかく、まずはユーコを探そう。
ユーコはあの三輪車(?)をいつの間にか回収してどこかに行っちゃったから、いやそもそもどこを探せば? うーん、あ、そうだ! 確か、サラッと流したチュートリアルの中に“ログ”の機能があったハズ!
「ろ、“ログ”ッ!』
そう唱えると、すぐさまログの画面が空中に出現した。というか、今更だが全部音声認識なのはなんでだろう?
まぁ、『細けぇコトはいいんだよ』の理論に基づき今はスルーしよう。
えっと、会話文で一番それっぽいやつは――あったコレだ! なになに、『やっばい!? もうこんな時間! 雑貨屋さんのタイムセール始まっちゃうよ!?』だって?
ヨシ! ということは、ユーコは今『雑貨屋』にいるのかもしれない。さっきもらった
そうと分かれば、早速追いかけよう! 万が一時間制限とかがついてるタイプだったりしたら、やり直しきかんし。
ともかく、善は急げだ!
◇―――――――――――――――――――――――――――――――――――◆
「うーん、コレ道合ってるよな? 南から見たら西は左側だし、
さっきから目的地に近づいているハズだが、なかなか到着しない。
人々の声や行きかう足音、巨大な歯車の
と言った感じに、とにかく情報量が多いッ!! しかもこの街案外通路がゴッチャゴチャして目視だと分かりずらいし、ズームして見るとあっちこっちに隠しルートのバーゲンセールかってぐらい小道があるし。
まぁ、
俺なぜか方向音痴っぽいふしが昔からあったし。ホント、ユーコがぐう聖な女の子で助かった……。
前に友達と池袋のムーンミラー通りのゲーセンに遊びに行った時なんか、待ち合わせ場所と真反対の方向に進んでいたなんてこともあったぐらいだし。
アレは本当に訳が分かんなかった、あの時なんで俺は無意識のうちに逆の方向行ってたんだよ!? マジでなんで!?
それはそうと、さっきからのやけに“周りからの視線”が刺さってなんか落ち着かない。メッチャグサグサきてるし、ヒソヒソ話す声も聞こえる。
十中八九理由は自分が“転生者”なのが“耳の形”でモロバレだから、そして周りがスチームパンク風な服装がほとんどなのに対して。今の俺が首掛けヘッドフォン上パーカー下スウェットの現代風ダラダラスタイルなので、相手側から見るとこの上なく浮いてるのが原因だろう。
そんなこんなで、やっとお目当ての雑貨屋さんの看板が見えてきた!
しかし、思っていたより目的地に着くまで時間がかかってしまった。ユーコ、まだ雑貨屋にいるといいけど……。
いや、大丈夫だ! 『ゲームキャラは大体イベント進行まで待ってくれてる』の理論が通用するのなら、まだ近くにいるハズだ多分! んでもってこういう時は決まって、頭上に赤とか青の目立つ色の吹き出しとかが目印としてあるはず。
どこにいるのかあたりをしばらく見渡していると、早速それっぽい吹き出しを見つけた。でも、なんで路地裏っぽい道の方向にあるんだ? あれ? なんか不穏な予感が?
まさかと思い、吹き出しの中の文字をよく見てみるとそこあった文字は――。
『や、やめてっ! 誰か……助けて!』
え? そんな、ま、まさか!? ちょっと!!? ある意味ベッタベタなやつだけど、今回ばかりはカンベンだぞ!?
完全に不穏すぎる展開だ、吹き出しのメッセージからして絶対にヤバイやつだぞ!? 慌てて路地裏の方に駆け寄り、恐る恐るのぞいてみると、ユーコとガラの悪い三人組の男がいた。
「これはこれは、『あの人』のお気にのお嬢ちゃんじゃないか! 偶然だねぇ~♪ こんな所であえるなんて。ちなみに聞きたいんだけどさぁ~、“例のアレ”もう完成してんの~?」
「あ、あの、それは――」
「とっくに完成してんだから“ヒコーキ”で遊んでたんでしょ? 違う? どうなの~?」
そして、その中でもひときわチャラそうな金髪のチンピラが一人、なにやらユーコを問い詰めているようだ。
参ったな、想像以上にヤバイ状況だ! ど、どうしよう!? こういう時って助けを呼びに行った方がいいのか!?
「あ、あの、あれは別に……遊んでたわけじゃ」
「ん~? 何かな? よく聞こえなかったなぁ~♪ 今口ごたえみたいなの聞こえたんだけど~♪ 何? もしかしてなめてんの?」
「ち、違います! 私は――」
「何が違うんだよ、え? 何が違うんだよ!! もういっぺん言ってみろッ!」
急に男が声を荒げてものすごい
「う、うぅ……だ、誰かっ」
「アホかコイツ? テメェみたいな“叶うはずもねぇ理想”追いかけてる夢見すぎな女なんて誰も助けねぇよ! 後でどやされるのは“連絡係”の俺なんだぞ!? 『あの人』のお気にだからって調子乗んなよ?」
男がユーコの胸ぐらを掴みながら、怒鳴りつける。後ろにいるバンダナとグラサンを付けた取り巻きっぽい二人がその光景を見て、ニヤニヤと気分良さげに笑っていた。
「うぅ、ぐぅぅ――く、苦しい!」
「いやぁ、今日は
男が歯をむき出し口角を歪ませると、もう片方の手を強く握ってふりかぶった。ダメだ、助けを呼ぶヒマもない! なら……俺にできることは一つしかない!
「や、やめろよッ!! その子が嫌がってるじゃないかッ!!」
俺は勇気を振り絞って、壁の影から出て叫んだ。正直まだ怖いし、逃げ出したいけど、あの子をこのままほっとけない!
「はぁ? 誰お前? キモッ、白馬の王子様気取りかよ。どっか行けこのクソガキ! 見せモンじゃねぇんだよ」
「クッ……そ、その子から手を離せ! じゃ、じゃないと“コレ”で!」
そう言って少し震えた手で、ユーコのポーチに入っていた銃を構える。流石に銃を見せたら多少はビビってくれると良いんだけど。
「へっ、使い方も知らないくせに。やれるモンならやってみろよォ!!」
ここまでで流石にイラッときてたから、
思ったより銃の反動が少なくてビックリしたけど、これも『スキル』のおかげなのかな?
というか……さ、流石にやりすぎたか? いくらなかなかのクズ野郎だったとはいえ命まで奪うのは――。
「イッデェッ!? こんのぉガキがぁ!! 俺様を誰だと思ってんだぁ!!?」
あ、生きてた――いや、え!? ヘッショ喰らって生きてんの!? 思わずヤツの顔を見ると、
「お、おい!? 大丈夫ですかいアニキ!?」
「うるせぇ!! コイツマジに許さねぇ! てかまず行動がいちいち癪に障んだよぉ! もう殺してやるッ!!」
チンピラは取り巻きの二人に心配されるも、そいつらを突っぱねて怒り狂っている。アレ? もしかして俺、墓穴掘ったか!?
なんて少しだけ後悔していると、何やらチンピラ男の周りに“魔法陣”みたいなモノが出てき始めた。
「“魔術式展開”! 『
謎の秘密結社(自称)に拉致られて異世界転生したので、『ゲームプレイヤースキル』を活かして攻略目指します! きままなじんせい @kimamana_zinnsei
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