第10話 飛べない烏とピザを喰う
飛べない烏は只の烏ではなかった。
『河野 愛子』が働いている会社で産まれて、死ぬまで実験される予定だったのだが、『河野 愛子』を操って、ようやく外に出れたのだ。
『河野 愛子』は元々頭がイカれていたが、烏が毎日少しずつ薬を投与したり、電流を流したせいで完全におかしくなっていた。
外に出られたが、どうすれば良いのだろう。
ピョコピョコとコンビニの前で立ち止まり、暫く自分の身体を見ながら翼をバサバサしてみる。
飛べない。翼は只の飾りのようだ。
コンビニの店員に箒で追い払われる。どうやら、嫌われ物のようだ。
ピョコピョコと匂いにつられてピザ屋の前にやってくる。
会社の扉を空け閉めした時に匂いを嗅いだことがある。
美味しそうな匂いがする。
ピザ屋から出てきた男に話し掛けられ、アパートにお持ち帰りされた。
飛べない烏は『鈴木』が好きだった。
頭やお腹を撫でられる事が好きだった。
『鈴木』が買ってくる熱々のピザも好きだし、次の日の固くなったピザでも一緒に食べると美味しく感じた。
飛べない烏とピザを喰う @BrightWin
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