斗呂比火流(とろぴかる)島大決戦

ぶらボー

本編

「村ッッッツッッ長ォーッッッツッッ!!!!」

 白い豪邸の応接室に綺麗なブラウンのウルフヘアのチャラ男が飛び込んできた。


「雪ッッッツッッ!雪降ってんスよ!!!!オレ初めて見たッスよ雪!!!!」

「SHUT UP!今客が来てんだ静かにしろ!」

 オーバーサイズの服と派手なネックレスや指輪を身に着けたグラサンにコーンロウヘアの村長が叱り飛ばした。


 一応「客」と呼ばれた我々、調査チーム3人が座るソファは高価なモノとすぐにわかるぐらい快適な座り心地であった。アサルトライフルを携えたマフィアみたいな島民に囲まれてさえいなければ、この豪邸の豪華絢爛ぶりをゆっくり堪能できたであろう。


「わ、我々はその…この島に伝わる"KING"の伝説を調査したくて参りました…」

 私の右隣に座るチームリーダーの教授が上陸の目的を伝えた。物騒な島とは聞いていたが、港ですぐ銃を突きつけられ連行される程の状況は予測していなかった。


 そう、我々はこの斗呂比火流(とろぴかる)島と呼ばれるヤシの木と綺麗な海が美しい島に伝わる怪異について調べに来たのだ。

 このような歓迎を受けていなければ、先にビーチでミックスジュースを頂いてからゆっくり調査に取り掛かっているはずだった。


「キャハハ…キャハハ…」

 我々の後ろでおかっぱヘアの双子の少女が笑いながら不気味なわらべ歌を歌う。

「KYAHAHA🎵KYAHAHA🎵

 ここは地上の楽園🌊死ぬときはHAPPY END🌟

 火山爆発🔥土地神の復活🌞

 目覚めるはKING🐵ひれ伏すEVERYTHING🌴🏄

 週末にGO!🌴終末へGO!🌺」


「この歌に出てくる”KING”の事でヤンス。」

 私の左隣に座るヤンスデス・チェンテナリオ100世がリズムに乗せて体をくねらせながら言った。


「KINGか…毎年火山の火口に生贄を放り込んでいるアレか。今年はYOU達で決まりだなメーン。」

「え!?」

「でも実際に姿を見たことはネーンだよなぁ。」

 

 葉巻を吸う村長と怯える私たちの横で、ギャル男は拾ってきた雪をおいしそうに食べる。

「港近くの森の大岩に貼ってあるお札のおかげで火山から出てこられないって聞いたことあるッスよ。あ、雪って食べるとかき氷みたいな感じッスね。」


「お札ってコレでヤンスか?」

 ヤンスデスは不思議な模様が描かれたお札を取り出した。


「…」

「…」

「待って。」

「YOU…」

「パネェッス。」

 私は唇を震わせながらヤンスデスに聞いた。

「いつ取っちゃったの。」

「ここ来る前におしっこさせて!って怖いお兄さんに頼んで森に入ったでヤンス。そしたら丁度──」

「FUCK YOU…」


 KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!

 突如島の中央の火山が爆発!爆風で豪邸のガラスが吹き飛んだ!パニックに陥った武装島民が外に向けてライフルを半狂乱で撃ちまくる!


「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!」

「な、なんだアレ!」

 目に飛び込んできたのは火口から降りてくる巨大な猿の怪物であった!


 「キャハハ…キャハハ…キャハ…ケヒャ…ケヒャァ~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!」

 わらべ歌歌ってやがったおかっぱ双子ガキの様子が変わった!

「ケヒャヒャ!そこの馬鹿のおかげでKING──いえ、”キングポング”は復活しましたヨォ~~~!!」

「ケヒャァ!!キングポングは我々ウオノメ星人の最強生物兵器!!この島の民は食いつくされて終わりですねェーーーーーッ!!」


 双子おかっぱ──ウオノメ星人の言った通りキングポングはビーチで雪遊びをしていた島民を食い始めた!!!

「嫌ぁー!」

「ぬわぁー!」

「チェケラ!」

「ポリエステル!」 


 ビキニギャルが!

 ナンパ男が!

 カップルが!

 ボディビルダーが!

 パリピが!

 散歩していた年寄りと犬が!

 頭が3つあるサメが!


 ボリボリボリボリボリ!!!!

次々とキングポングに捕まって鮮血をまき散らしながら食われていく!


「SHIT!…こんなとんでもねえことが起こるなんて…この島はジ・エンドだ…」


 村長はガクリと膝をついた。我々は、恐らく三人ともこの島を好奇心で訪れたことを派手に後悔していた。なんでこんなわけのわからん連中と一緒にわけのわからん猿の化け物に食われて死ななければならないのか──。


 雪を食い終えたギャル男は真っ直ぐに猿の化け物──キングポングの方を見つめた。


「村長…今までありっした。」


 突然のギャル男の改まった発言に村長は怪訝な表情を見せた。

「浜辺で裸一貫で打ち上げられていたオレを…久しく外の人間の肉を食ってないか丁度いいと釜茹でにして食おうとしたケド…あまりのマズさに仕方ねえからとパシリにして今まで世話してくれて──」

 思ったより感謝するべき要素がなくて私は困った。

「今までの恩返すッス!安全な所に避難してくだせッス!」


 そういうとギャル男は先端にハートが付いた光る棒を天空に掲げた。

「へんしん!」


 POWAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!

 まばゆい光とともにギャル男の姿は消え、突如特撮っぽい巨人が姿を現した!


「ケヒャァ!??!?あ、あれは光の戦士…スペースマユゲマン!」

「ヘアアアアアアアアアアアアアア!!!!」


 光の巨人、スペースマユゲマンは雄叫びとともに双子のウオノメ星人を踏みつけた!ウオノメ星人はスイカ割りっぽい感じで粉々になり死亡!


「ヘアアアアアアアアアアアアアア!!!」

「GRRRRRRRRRRRRRRRRRRRRR!!!!!」

 ウオノメ星人を仕留めたマユゲマンはすぐにキングポングに突撃した!キングポングはすぐに彼に気づき迎え撃つ!


 ガシッ!

「ヘア、ヘアア、ヘアッ、ヘアアア」

「GRR、GRRR? GRRRRR!!」

 巨人達は取っ組み合いを始めた、なんかあまり体の動かし方をしらない陰キャがゲーセンで暴れる感じのヌルっとした感じのやつ。


「ヘアッヘア…ヘアアアアアアアアアアア!!!!!」

 マユゲマンがキングポングを投げ飛ばす!

「GRRRRRR!!!」


 マユゲマンが先端にハートの付いた光る棒を取り出す。ハートにまばゆい光が集まる!

「ヘアアアアアアアアアアアアアア!!!!」

 叫び声とともにハートの棒からすごいビームが発射!


 KABOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!!「GWAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 まともにビームを受けたキングポングは断末魔の叫びとともに爆発四散した!


 ──数十分後

 スペースマユゲマン──ギャル男はキングポングを破壊するとすぐに空の向こうへ飛び去ってしまった。我々はケガをした豪邸の武装島民の応急手当を終え、一息付いていた。

「村長…その、大変申し訳ございませんでした…」

 私は村長に謝った。そりゃ大体ヤンスデスのせいだし。殺されても文句言えねえし。


「気にするなメーン…」

 村長の返事は意外にも穏やかだった。

「遅かれ早かれ、いずれは封印が破られていたに違いねェ…避けられねえデスティニーだったのさ。」

 村長は葉巻を取り出して吸い始める。


「今にして思えば…俺たちを守ってくれたギャル男こそが、真の”KING”だったのかもしれねェな…」

 その締め方はちょっとどころかだいぶ強引じゃねえのかなと思った。っていうかなんで雪降ってたのこのトロピカル因習アイランド。

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斗呂比火流(とろぴかる)島大決戦 ぶらボー @L3R4V0

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