誰か知らないけど、話ぐらい聞いてあげますよ

@HasumiChouji

誰か知らないけど、話ぐらい聞いてあげますよ

『何、そんなにムキになってるんですか?』

 俺はSNSで論争になった相手に我ながら親切にもそう言って差し上げた。

『おいおい、そんな言い方する奴こそムキになってんだよ』

『まるで小学生ですね』

『じゃあ、お望み通り小学生みたいな事言っていいかな? や〜い、誰かを小学生並って言ってるヤツこそ小学生並』

『仕事でストレスでも溜ってるんですか?』

『だとしたら?』

『何か、精神疾患でも有るんでしたら、話ぐらい聞いてあげますよ』

『へえ、偉そうな事を言うな。あんたに話を聞いてもらえば俺のイライラが解消されるとでも言うのか?』

『まぁ、一応、精神科の医者なんで』

『なんだ、昔の推理作家の名セリフそのままだな。「気○い病院の先生って言葉には二重の意味が有るようにしか思えない」って』

『はいはい……もうカウンセリングが始まってると思っていいんですか?』

 そう書き込みながら……溜っていた仕事関係以外のメールを次々とチェックしていく。

 まぁ、ほとんどがゴミ箱行きだが、一応は……ん?

 SNSの運営からのメールが目に止まった。

 良く見ると……昔使っていたメールアドレスから自動転送されたものだった。

『あなたのアカウントの凍結を解除しました』

 えっ?

 ああ、そう言えば、ずっと昔、今のアカウントを作る前に、凍結されたアカウントが……待て……。

 自分でも忘れていた古いアカウントのIDと、今、論争している相手のIDを見比べ……どうなってる?

 念の為、メモ帳を開いて……凍結解除のメールで届いたアカウントIDと相手のIDをコピペして……。

 同じだ。

 完全に同じ。

 1文字たりとも違ってない。

 英字の大文字・小文字すら完全一致。

 ブツッ‼

 その時、何とも嫌な感じの音と共にPCの電源が落ちた。

 おい……どうなってる?

 そして……真っ黒になったモニタに写っているのは……困惑の表情を浮かべた俺自身の顔……。

 いや、待て……何で……こんな状況で俺は……こんな薄気味悪い笑いを浮かべてんだ?

「おい、先生。俺の話を聞いてくれる、って言ったよな……じゃあ、今からでもいいか?」

 電源が落ちた筈のPCにつながってるスピーカーから……俺と同じ位の齢の男の声が響いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

誰か知らないけど、話ぐらい聞いてあげますよ @HasumiChouji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ