第6話 ロシアの間違い② 個人独裁 ロシア革命 レーニンとローザルクセンブルク



ロシアを語る時、やはりソ連の誕生、ロシア革命に触れない訳にはいかなに。ロシア革命は第1次大戦中に起きた。皇帝の始めた気まぐれな戦争は兵隊に満足に軍靴すら与えられない悲惨な状況であった。皇帝の退場を迫った2月革命(自由主義者・メンシェヴィキが中心になったー臨時政府)、即時停戦を主張して労働者・兵士の支持を勝ち取ったレーニンのボルシェビキ(社会労働党左派)の10月革命とに分かれる。初めて社会主義を掲げる国家が出来たのである。


レーニンのロシア革命を熱烈に支持し、ドイツの労働者階級も革命によって応えよと激を飛ばした一人の女性があった。彼女はこの戦争をお互いの労働者・農民を兵士にして戦わせるものとして一貫して反対して来た。その彼女がレーニンを批判した箇所がある。彼女が書いた『ロシア革命論』である。革命後に開かれたレーニンの憲法制定会議での対処に対してである。ここの一節は私が大事に思う所である!


「無制限な出版・集会の自由、自由な論争がなければ、あらゆる公的な制度の中の生活は萎え縮み、偽りの生活になり、そこには官僚制だけが唯一の活動的な要素として残ることになろう。公共の生活は次第に眠り込み、無限のエネルギーと限りない理想主義を持った数十人の党指導者が指令し、統治し、現実にはその中の十人程度の傑出した首脳たちで指導して、労働者のエリートが指導者たちの演説に拍手を送り、提出された決議案を満場一致で承認するために時折会議に召集される、ということになろう。つまり、要するに同族政治なのだ・・独裁には違いないが、しかしプロレタリアートの独裁ではなく、一握りの政治家たちの独裁、つまり全くブルジョア的な意味での、ジャコバン支配のような意味での独裁なのである」として、プロレタリアの独裁と党の独裁とは違うと警鐘を鳴らしたのである。プロレタリアの独裁の下での社会主義的民主主義はあり得るとしたのである。

 ソビエト連邦、スターリンにおけるあの専制独裁を、レーニンにおけるロシア革命の中にその萌芽を見ていたのである。


ロシア革命は『即時停戦―平和を』で兵士・労働者の支持を得たのと『農民に土地を』で農民の支持を得たのが大きかった。この後者のスローガンは社会革命党とのものであった。レーニンは社会革命党から貰ったと云っている。

革命を承認した10月25日に開かれた全ロシア兵士・労働者ソビエト大会の代議員構成と11月12日に選挙された憲法制定会議の議員構成は大きく異なっていた。革命まもない状態で、農村における浸透度が弱いボルシェビキの選挙結果の不利が予測され、延期が検討されたが、それは混乱を生むだけとして予定通りの日程で行なわれた。農民に基盤(農民は人口の8割を占めていた)を置く社会革命党(エスエル)が40%、都市部、労働者・兵士に基盤を置くボリシェヴィキは24%であった。1月に召集された憲法制定会議は当然、革命政府の議案は否決されることになった。翌日レーニンはこれを解散させた。


ローザの制憲議会についての批判は、その解散措置に向けられたものではなく、その改選を行わずに、「10月に構成された憲法制定会議の特殊な欠陥から憲法制定会議は全て不要だと云う結論を下し、革命期間中は一般に普通選挙によって選ばれた人民代表制度は役に立たないところまでこれを一般化した」に対してであった。

「プロレタリアートの歴史的使命は、権力を握ったときに、ブルジョア民主主義の代わりに社会主義的民主主義を創始することであって、あらゆる民主主義を破棄してしまうことではない」「それは大衆の積極的な参加から一歩一歩生まれ、大衆の直接的な影響下にあり、全公衆の統制を受け、人民大衆の政治的練習のたかまりの中から生まれてくるものではなければならない」。これがローザの社会主義下の民主主義の原則であった。


あの兵士、労働者のソビエトはまさにそのようなものではなかったか。ジョン・リードの有名なルポタージュ『世界をゆるがした10日間』の中でも、ボルシェビキの兵士が、メンシェビキの労働者が、エスエルの農民が、無名な者たちが我も我もと壇上に立ち意見を述べる。賛成!の声が飛び、野次が飛ぶ。そんな中から革命が生まれたのではなかったか。ローザルクセンブルクについては『赤いローザ』で書いている。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890460629

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