Rock&Bullet#1

結城 優希

Silver ”Metal” Begining

ミリア:アストル長官、パイロット各員が集合しました。

アストル:よろしい。それではブリーフィングを開始する。

レオン:りょーかい。休暇中に呼び出したんだ。さぞ重大な任務なんだろ?

テト:隊長、ちょっとお酒臭い……。

センタ:さくっと終わらせて、隊長に訓練つけてもらうッスよ〜!

テト:センタ。これは任務。

レオン:そうだぞ。気を引き締めろよ?

センタ:っと。そうッスね。というか、隊長殿こそ、深酒をしていたみたいッスけど、大丈夫なんスか?

レオン:あ?ハッ……センタお前、誰に口聞いてんだ。

テト:そう。隊長は無敵。

センタ:テト先輩、隊長に甘くないッスか!?

アストル:(咳払い)皆、席に着いたな。では、作戦概要を説明する。ミリア。

ミリア:はい!資料をお配りします。

ミリア:(M)この時は思いもしませんでした。この作戦が、国を、大陸を左右する程に大規模な戦争の予兆だったという事を……。




※タイトルコール

アストル:ロックアンドバレット

ミリア:シルバーメタル・ビギニング




ミリア:今、お配りした資料をご覧ください。

アストル:今回の任務の概要だが、国の上層部から直々に下された任務だ。

アストル:この国、ランドバーグの同盟国である、オラクル神聖王国への、出兵命令だ。

センタ:オラクル神聖王国に出兵?どうしてっスか?同盟国っスよね?

アストル:別に攻め込むわけではない。他国より侵攻の兆しが見えるので、防衛戦力として出兵できないかと、あちらの元老院から打診があったそうだ。

レオン:元老院だあ?あいつらは内政専門じゃなかったのかよ。

テト:そのはず。前にあっちの候補生と話した時も、そんなこと言ってた。

アストル:ああ、その通りだ。だからこそ上層部の連中に、第一と第二分隊が周辺国の情勢調査に駆り出されている訳だ。

センタ:え?パンドールが調査っスか?そりゃまた物々しいっスねぇ。

アストル:それについてだが、実際にもう報告が上がってきている。ミリア。

ミリア:はい。こちらのマップをご覧下さい。ここがオラクル神聖王国、ここが私達がいるランドリア国。そしてこの赤いバツ印がついている地点が……

アストル:オラクル神聖王国のナイトドール部隊が確認されている地点だ。

レオン:おいおい。なんの冗談だそりゃあ。

テト:……ここ、完全に国境侵犯。それに、軍事施設の近く。

センタ:どうも、ウチの偵察をしてるようにしか見えないッスねぇ。

アストル:その通りだ。上層部からの依頼というのは、この要請と実情の齟齬を、確認してほしいという話だ。

ミリア:加えて、国境を超える軍事力があれば、撤退を促すこと。従わない場合はこれを撃退せよ、とのことです。

センタ:撃退?撃墜じゃなくてっスか?

アストル:ああ、撃墜してしまうと、本格的に戦争になってしまう。上も、そこまでは望んではいないだろう。あくまでも、不可解な要請をして、怪しい動きをする同盟国の調査ということだ。

テト:またお使いみたいな任務。

レオン:いいんだよ別に、平和な証拠だろうが。

アストル:では、本題だ。君たち第三分隊には、ここ、ポイントBに向かってもらう。

ミリア:ポイントBは山岳地帯にある軍事基地の周辺に当たります。ここで、件の神聖王国のナイトドールの目撃情報が多数あがっています。そこへ向かい、調査と巡回をお願いします。

レオン:分かった。

アストル:ブリーフィングは以上で終了とする。各員、機体に搭乗して指示を待て。

レオン:了解。

テト:了解。

センタ:りょーかいッス!!

アストル:では各員、出撃準備に当たれ。




ミリア:(M)

ミリア:ナイトドール。それは、現代における最高戦力。

ミリア:太古の昔、この世界では魔法技術が栄えていた。

ミリア:しかし、約800年前に起こった「大災害」と呼ばれる滅びにより

ミリア:魔法技術は消失してしまった。

ミリア:そのような歴史を経て、現在では、機械工学が発展している。


ミリア:ナイトドールもその一つだ。


ミリア:エーテルと呼ばれる魔導物質を燃料として、エーテリックエンジンを駆動させて機体を動かす、大型の搭乗型マギテック。

ミリア:そしてナイトドールを駆るパイロットを、機士(ナイト)と呼ぶ。

ミリア:ランドバーグ国が抱えるパンドール部隊は、ナイトドール総勢15機を有する軍事組織であり、国の防衛力の要。いわゆる精鋭部隊だ。

ミリア:この話はそのパンドール第三分隊が歴史に名を刻んだ、その軌跡。



――作戦開始


アストル:ミリア、各員の出撃準備はどうだ?

ミリア:はい。搭乗は完了しています。パンドール第三分隊。応答願います。

レオン:こちらレオン機、シルバーホーク、いつでも出撃可能だ。

センタ:こちらセンタ!オリヅルもいつでも出撃できるッス!!

テト:テトラ機、ソニックライン、準備オッケー。

ミリア:各機、出撃準備完了しました!

アストル:よし、いいか、作戦内容はポイントBに向かい、怪しい動きをするナイトドールの調査、及び巡回だ。お前たちの腕は信頼しているが、生きて戻れ。

アストル:では、作戦開始だ。

ミリア:カタパルト射出準備完了!各機、耐衝撃体勢!

ミリア:ハッチ開放、セーフティアーム解除、各機カタパルトユニットにドッキング、完了!

レオン:射出シークエンス異常なし。

テト:システムオールグリーン。

センタ:んじゃ、行ってきまっス!!

アストル:パンドール、出撃!!

ミリア:……お気を付けて。




――数分後、作戦戦域に移動中



レオン:そろそろ降りるぞ、カタパルトの勢いも落ちてきた。

テト:了解。ブースターを噴かす燃料も持ったない。

センタ:はーい、地上を行けばあと一時間ってところっスね。

レオン:こちらシルバーホーク。無事着陸に成功、ポイントBにはあと一時間ほどで到着する。

ミリア:こちら管制室。以降、周囲を警戒して進んでください。

テト:了解。私に任せて。

センタ:こっからが本番ってことっスね。

アストル:ああ、十分に注意して進め。

レオン:……よし、いつもの五人フォーメーションは使えないから、俺が先頭、テトラ、殿(しんがり)にセンタだ。

テト:了解、私の目の出番。

センタ:まーた後ろっスかぁ?たまには代わって下さいっスよ。

レオン:まあそのうちな、ってか殿だって大事な位置なんだから、文句言うんじゃねえよ。

センタ:了解っスよぉ。あ、帰ったら、またサシで訓練してくださいッス!

レオン:ったく、お前のそれは、ただのタイマンだっつーの。

テト:センタ、今は任務中。集中して。

センタ:分かってるっスよ。

レオン:あまり近づきすぎないように隊列を組め、行くぞ。

センタ:了解ッス!

テト:了解。




――管制室


ミリア:アストル先輩……。

アストル:此処では司令と呼べ、ミリア。

ミリア:あ、すみません、司令。

アストル:で、どうしたんだ?

ミリア:……何か、嫌な予感がするんです。

アストル:ふむ。……お前の勘か。だが、今回は大丈夫だろう。あいつも、昔のように突っ走ることはなくなった。

ミリア:だと、いいんですが……

アストル:ああ、我々に今できることは、レオン達を信じて待つことだけだ。

ミリア:そう、ですね。無事に帰ってきてください、レオン先輩……。




――山岳地帯、ポイントB付近


レオン:テト、何か見えるか?

テト:ダメ。視界が通らない、切り立った崖が多すぎて。多分、相手の狙いもそこ。

レオン:だろうな。ふう、どうするか。

センタ:というか、報告はしなくていいんスか?

レオン:あぁ~……俺ぁちっと、タバコ吸ってくるからよ。センタ、お前報告しといてくれ、よっ、と!

レオン、コクピット開けて飛び降り、タバコを咥えて、山岳を登っていく。

センタ:ああ!ちょっと!!隊長殿!?……って行っちゃったし……

テト:センタ、早く報告。隊長の指示。

センタ:あーもう!分かったっスよぉ!やっぱ先輩、隊長には甘いっスよね……

テト:何か言った?

センタ:何でもないっスよ。あー、こちらオリヅル、定期報告ッス。

ミリア:こちら管制室。報告をお願いします。

センタ:目標地点付近に到着したッス。テト先輩の「目」でも視認できるナイトドールは無し。隊長殿はタバコ吸ってるっス。

ミリア:わかりました。……え?あ、はい。司令につなぎます。

アストル:私だ。聞こえるか。

センタ:はいっス。

アストル:その地帯は切り立った崖が多いが、その上から観測している、と言う事でいいか?

センタ:あーそうっスね。近場で一番高い崖の上で、テト先輩が周囲を観測してるっス。下手なレーダーより、索敵範囲広いっスからねぇ。

アストル:そうだな、通常ならそうなんだろうが、今回は恐らく、視界が頼りにならないかもしれない。

センタ:ん?どういうことっスか?

アストル:今しがた、目撃情報にあったナイトドールの装備を、再度確認していたんだが、

アストル:その中に気にる物を見つけた。

センタ:気になる物?

アストル:ああ、軍事用のナイトドールの装備としては、珍しいものだ。

テト:多分、大型のドリル。

センタ:うえ!?先輩聴いてたんスか?

アストル:ああ、その通りだ。装備名、アースオーガCPST。戦闘用の装備ではないが、掘削作業用の装備としてはポピュラーなモノだから、今まで見落としていた。

センタ:切り立った崖、視界が役に立たない、大型のドリル。え、まさか、冗談っスよね?

アストル:ああ、私もそう思いたいがな。どうやら状況的にはその可能性を示唆しているように思う。

テト:倒壊の恐れがある崖の中を空洞にするなんて。危険すぎる。

センタ:……ってことは、探すべきは崖の下ってことっスね?

アストル:ああ、だが十分に気を付けろ。テトラも言ったが、中で戦闘を起こせばそれこそ、崩落の下敷きになりかねない。突入には細心の注意を払え。

テト:分かった。じゃあ通信終わる。また後で。

ミリア:皆さん、必ず、ご無事でお戻りください。

テト:了解。センタ、隊長を呼んできて。

センタ:え~~!また俺っスか?

テト:早く行ってきて。その間、索敵してるから。

センタ:了解ッス。たーいちょーどのー!




――崖の上で眼下を見下ろしながら、紫煙を吐き出すレオン


レオン:ふー……テトラの目に映らない、切り立った地形。

レオン:奴らはなぜ、わざわざこの地形を選んだ?

レオン:身を隠せるから?いや、それならばもっと東の森でもよかったはずだ。

レオン:だが、あのマップを思い返しても、森には印は付いていなかった。

レオン:何故……此処でなければならなかった……?

レオン:ん……?

センタ:たーいちょーどのー!!

レオン:うるせえぞ、センタ。そんな叫ばなくても聞こえてるよ。

センタ:通信の結果、司令から、やっこさんの装備に、ドリルが確認されていたってことがわかって!

レオン:ドリル……そういうことか。センタ、すぐに戻るぞ。

――タバコを足で消して、機体に戻る。



――コクピットに座って機体を動かしながら、通信を開始する

レオン:テトラ、ソニックラインのエーテルソナーは使用可能か?

テト:大丈夫、そこまでエーテル濃度も高くない。いつもより少し濃いくらい。

レオン:なるほどな、大体分かった。エーテルソナーを起動してくれ。

センタ:え?何が分かったんスか?

テト:エーテルソナー、起動。

レオン:ここのエーテル濃度が濃いってことは、地中にエーテル鉱石が埋まっている可能性が高い。

センタ:エーテル鉱石っスか?あの、燃料に加工できる魔導鉱石っスか?

テト:エーテル波、拡散開始。

レオン:そう、そのエーテル鉱石だ。エーテル濃度が濃いここに、奴さんは掘削用のドリルを持ってきてるんだろ?だったら恐らく狙いは、うちの領土にある資源だ。

センタ:ってことは、隠れてる場所ってまさか……!

テト:見つけた……!

レオン:ナイスだ!何処に居やがる?!

テト:ここから、十時の方向、距離は8キロ。

センタ:その距離で先輩の目に映らないってことは。

テト:うん。予想通り、地中の一部だけ不自然にエーテルが薄い箇所があった。

レオン:よし、隊列を組め。警戒しつつ進むぞ。

テト:了解。

センタ:了解ッス!!

レオン:……管制室、こちら、シルバーホーク。奴さんのねぐらを見つけた、これから向かうところだ。

ミリア:こちら管制室、見つけたポイントの座標を送信願います。

レオン:テトラ、聞こえたな?

テト:今送ってる。

センタ:先輩、俺が周り見てるんでチャチャっと送ってくださいッス!

テト:……送った!処理が荒いから、そっちで仕上げて!

アストル:了解した。ミリア、解析を急げ。

ミリア:もうかかってます。

アストル:よし、何か分かり次第連絡をする、決して無茶をするんじゃないぞ。

センタ:了解ッス!

レオン:残り6キロ。油断するなよ。

テト:まかせて。



アストル:解析は済んだか?

ミリア:今報告上がりました。こちらです!

アストル:これは……?なんだと……!

ミリア:はい、ソナーによる反応では「エーテルが薄い」というものだったそうですが……

アストル:これはそんな生易しいものじゃない。

ミリア:ええ、まるでここだけぽっかりと穴が開いたように。

アストル:「エーテルジャマ―」……完成していたのか……。

ミリア:エーテルジャマ―、ですか?名前から察するにそれは、エーテルの干渉を遮断するものなのですか?

アストル:……ああ、奴らの装備がほとんど実弾武器なのは、それが理由か!

ミリア:あの、司令?

アストル:どうした?

ミリア:もしかして、エーテルをすべて遮断するのであれば、私たちのエーテル波を用いた長距離通信も機能しなくなるのでは……?

アストル:ッ!!通信はまだ繋がるか?!

ミリア:……!ダメです!応答ありません!!

アストル:クソッ!……私のミスだ。迂闊だった。

ミリア:先輩……お願い無事でいて……



山岳地帯、切り立った崖の陰でレオン達が通信を試みている

レオン:おい!管制室!おい!応答しろ!!

テト:……だめ、エーテルを放射するタイプの兵装は根こそぎ使えない。

センタ:確かに、短距離通信しか使えないってのも不便スねえ。

テト:センタはまだ良い方、メインの兵装は大太刀「セイテン」。実体剣だからまだ戦える。

レオン:チッ。仕方ねえな……この状況が奴さんらが作ってるもんだとしたら、このまま放って置く訳にはいかない。

センタ:ま、マジっすか、こんな中で戦うんスか!?って、テト先輩?何してんスか?

テト:……装備の確認。実弾武器はサブアームのサブマシンガンとヒートナイフのみ。残弾は……問題ない。500発積んである。

レオン:俺の方は、ライトマシンガンと、ロングソードだ。残弾は350発だな、相手が何機いるかわからんところが不安要素だな。

センタ:オリヅルの兵装は、セイテン以外、極力軽量の物を使ってるんで、このハンドキャノン以外はエーテル兵装っスね。弾は10発ッス。

レオン:よし、まず一番突破力のあるセンタのハンドキャノンで、あの入り口に構えていてくれ。俺が入り口をのぞき込む。テトラはあの崖上で待機だ。やることはわかるな?

テト:もちろん。まかせて。

センタ:了解ッス。

レオン:一応、マイクの出力先を外部スピーカーにしておいてくれ。じゃあ各員、状況開始!



敵機A:おい、ここのエーテル鉱石の加工は済んだか?

敵機B:まだ、もうちょっとかかりそうね。液化エーテルにしてはいるけど、もう少し安定しないと運び出すのは無理。

敵機A:チッ……なんだって上の連中はこんな危ない橋を渡らせるんだよ。万一ランドバーグの連中に見つかってみろ、最悪撃墜されちまうぞ。

敵機B:まったくね。あたしらみたいな、末端の機士なんて、替えが効く駒ぐらいにしか思ってないのよ。特にあっちの連中はね。

敵機A:あぁ~、最近出入りしてるっていう、あの……ッ?!誰だ?!

レオン:あ、どうもー。ここらはランドバーグの国内なんだが、オタクら所属は??それと、……そりゃあなんだい?

敵機A:敵襲ッ!!

敵機B:外に追い出して!ここで戦闘は無理!!

レオン:おいおい、こっちの質問には答えてくれないのかい?

敵機A:そんな義理があるかってんだ!くらえ!!

レオン:うおっ、いきなり大盾で突進してくるかね……センタぁ!!

センタ:ほい来た!隊長殿は上手く避けてくれっスよっと!!

敵機A:味方ごと撃ちやがった?!

レオン:馬鹿お前、誰に口きいてんだっての。

――爆発音

敵機B:ッぐ!!なんの爆発!?

敵機A:恐らくあいつの仲間のハンドキャノンだ。畜生、盾がだめになっちまった。

レオン:何処狙ってんだセンタこらぁ!

センタ:仕方ないじゃないっスかぁ!隊長殿の機体がまぶしくてよく狙えなかったんスぅー!!

レオン:はぁ?!お前のオリヅルだって大概だぞ!なんだよ純白って!

センタ:ギンギラギンに言われたくねーっス!!

――発砲音

レオン:……よっと。

センタ:うお!いきなり避けないでくださいッスよ!!当たったらどうするんスか!

レオン:捌けたんだからいーだろ。んで?あんたら、有無を言わさず発砲してくるってことは、うちらの敵ってことでいいんだな?

敵機B:……今のを避けるなんて、何者なの、あんた達?

センタ:俺らっスか?俺らはランドバーグ国が誇る最高のナイトドール部隊!その名も……

レオン:パンドール第三分隊だ。そっちは?

センタ:あー!せっかくかっこよく名乗ろうと思ったのに!!

レオン:ちょっと黙ってろてめぇ。

敵機A:パンドール第三分隊だと……?パンドールは第二分隊までだったハズだ!そいつらも今は留守だって……くそ、話が違う!!

レオン:俺らが結成したのは去年だ。情報が古かったな。んでその情報、誰から聞いたんだよ。

敵機B:それを話す義理はないって言わなかった!?

――発砲音

レオン:アレの相手は任せた。俺はさっきの野郎をやる。

センタ:え~、女の相手は嫌なんスけどね~。



センタ:……ま、敵なら斬り捨てるだけッスけど。



レオン:よう、兄ちゃん。いやおっさんか?ま、なんでもいいや。今からお前を制圧して連れ帰る。できれば手荒なことはしたくないから、洗いざらい吐いてくれると助かるんだが、どうだ?

敵機A:大人しく捕まるように見えるか?それに、幾らあんたらと言えど、非エーテル下での戦闘は慣れてねえんじゃねーか?

アストル:さっきはお仲間に不意を突かれて盾を一枚ダメにされちまったからなあ、借りは返させてもらうぜ。

レオン:なんだよ、よく喋るじゃねえか。

敵機A:何余裕ぶってんだオラぁ!!

――ドリルの駆動音

レオン:おっと。えらい物騒なもん持ち出してきたな。

敵機A:へへへ、その貧相なロングソードじゃあこいつを受けるのは不可能だ。ここであんたをぶっ倒して、俺たちは逃げ切らせてもらうぜ。

レオン:ふぅ、説得ってのはどうも、俺には向いてないらしいな。

レオン:いいぜ、来いよ。格の違いってもんを教えてやる。

レオン: 

レオン:さぁ、踊ろうぜ。

敵機A:ほざけ!!!




テト:うまく二人とも引き離してくれた。あの程度の相手に遅れは取らないと思う。

テト:けど、万が一ってこともある。私は私の仕事、急ぐ。

テト:隊長は私を待機させるとき、こう言った。

レオン:『やることはわかるな?』

テト:もちろん、まかせて。

テト:私は、第三分隊、最初の隊員。

テト:私は、隊長に目を信用されてる。

テト:私の目は地平線まで見通す。

テト:今の私は……テトラ・ホライゾンなんだ。

テト:拾ってもらった隊長の信頼を裏切ることなんてありえない!

テト:あの場での作戦はこう。

テト:一番強い隊長が、敵の総戦力を確認する。

テト:そして、二人で引き付けられる人数なら、そこから引き離す。

テト:もし、手に負えない様なら、崖上からの援護射撃。

テト:その後、ソニックラインの高い隠密性を活かして、空洞内に潜入。

テト:厄介なエーテルジャマ―の機能を停止させる。

テト:大丈夫。

 

テト:テトラ・ホライゾンは失敗しない……!



――発砲音

敵機B:クッ!この!ちょこまかと!

センタ:ちょちょちょ!いい加減に撃つの止めてくン無いっスかね!?

敵機B:いい加減に倒れてくれりゃ、撃つの止めてあげるわよ!

センタ:そりゃあちょっと、できない相談っスね。

敵機B:な!?速い!?スラスターも使えないはずなのに!

――発砲音

センタ:そっちがトロいんス……よッ!!

敵機B:ちィ!!銃が!!

センタ:さて、これで、あんたの厄介なライフルはお釈迦ッス。

センタ:まだ抵抗するんスか?そのガラクタで。

敵機B:武器は、銃だけじゃないよ!はぁ!

センタ:あーダメダメっス。俺に剣で挑むとか、うちの隊長ぐらいしか出来ないっスよ!

敵機B:うるさい!!この!当たれ!!

センタ:……参ったな、殺すなって言われてんスけど、ねぇ!!

敵機B:くぅぅ!まだまだぁ!

センタ:……ったく、急いでくれっスよ、先輩。




レオン:ふう。

敵機A:どうしたぁ!!俺らを制圧するんじゃなかったのかあ!?

レオン:あぁ?そうだけど?

敵機A:逃げてばかりじゃ、俺は倒せねえぞ!それとも、最近機士になったニュービーは殺しの覚悟もないのか?!

レオン:うるせーな、うちの石頭に殺すなって言われてんだよ。

敵機A:ハハハ!ならば、お前に勝ち目はない!大人しくお家に帰りな!!

レオン:生憎、俺ぁ鉄砲玉で、通ってんだ。手ぶらで帰っちゃ笑いもんだ。

敵機A:だったら、ここで死ね!!その派手な機体に、風穴開けてやるよぉ!!!

レオン:悪いな、そんな単調な攻撃じゃあ、死んでやれんな!

敵機A:なっ!?駆動部の外を的確に弾いただと!?どんな精度してやがる!

レオン:相棒はちゃあんと俺に応えてくれるからよ。いまじゃ手足より自由にできるぜ?

敵機A:……確かにお前は強い。俺では逆立ちしても敵いそうもない。

だが、それが何だ。俺がここで倒れたら、祖国も、仲間たちも……

なればこそ!!ここで俺が引くわけにはいかんのだ!!!

レオン:……オラクルで、いったい何が起きてんだ。

敵機A:お前に話したところで分かりはしない!!大人しく、ここで死ねぇ!!

レオン:そいつは断っただろうが。……テトラ、急げよ。




テト:……見つけた!

テト:これが、エーテルジャマ―……!

テト:出来れば、壊さずに持ち帰りたい……

テト:原動力は……液化エーテル!?

テト:だったらこのタンクの供給を止めて、よし!

アストル:……い!応答しろ!おい!聞こえるか!

テト:……これなら!急いで戻らないと!




アストル:おい!応答しろ!!

レオン:(軽く笑って)……センタァ!!

センタ:あいさぁ!!

敵機B:なっそれは!?

センタ:お、知ってるんスか?エーテルネット。

敵機B:ジャマ―が止められた?まずい!拿捕されるのだけは!

敵機A:撤退だ!退くぞ!

レオン:さて、そう簡単にいくかな?

勢いよく飛び去る敵機

敵機B:遠征してきたあんたらと違って、こっちのタンクには余裕があんのよ!追いつけるもんか!!

センタ:あ~、そういうことじゃないんスよ。

レオン:あいつの目からは……逃げらんねーよ。



テト:逃がさない……!!

テト: 

テト:見えた!

ビーム系の銃声が二発



アストル:莫迦者!通信が回復したのならさっさと、応答しろ!

レオン:あ~あ~悪かったって。

アストル:レオン、お前というやつは!

レオン:だーから帰ったら聞くって。んで、オペ子ちゃん。奴らの機動力はテトラが潰したが、拿捕だほするってことでいいのか?

ミリア:はい、可能なら拿捕してください。パイロットも連れ帰って頂けますか。

レオン:オーケー、今二人が探しに行ってるから、この後拿捕して帰投する。

ミリア:了解しました。

アストル:お前、寄り道せずに帰って来いよ。説教のおかわりが欲しくなかったらな!

レオン:わーかったって、ほんと相変わらず石頭だな、アストル。

センタ:(かぶせて)隊長殿!!ちょ、来てください!

レオン:あ?どうした?

テト:……これ、見て。

レオン:おいおいどういうことだこりゃ……。

アストル:どうした、何があった?

レオン:コクピットのハッチ部分は落下の衝撃で歪んでて、人力で開けるのはまず不可能だ。

レオン:だが、こじ開けたそん中がよ……



レオン:……無人ってのはどういうことだ?




センタ:次回予告!!

センタ:苦労して捕まえた機体の中身が空っぽって、そりゃないっスよ!

テト:……どうやって動かしていたのか、きになる。

レオン:まあそれもとりあえず持ち帰って、アストルに丸投げしようぜ。俺ぁつかれた。

アストル:莫迦者!貴様は帰ったら反省文が待っているからな!!

ミリア:次回、ホーリークロス・フォルティシモ

センタ:お楽しみにっス!!




終幕



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Rock&Bullet#1 結城 優希 @yuukiyuuki_vc

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ