第37章 魔神教の裏側

ここは石川県異少課。3人の平和な日常ではあるが、もうすでに事件は始まっていた。

「それじゃあ、俺は先帰る。また明日」

丹は異少課を出て、2人っきりになった。

「丹がいつも早く帰るの、気にはならないのか。あの真面目な丹ならいつもは、皆が帰るところまで待つだろうに。何かあったに違いない」

実はここ最近ずっと異少課を早くでてる丹。流石に続いていると少し気にはなってくる。

「それに、先程の解。明らかに曖昧にはぐらかしてただろう」

「気にはなったけどね。でもお前じゃあるまいし、丹なら全然大丈夫だと思う。どこかのカルト宗教にはまったようなやつじゃあるまいし」

「あのときは我も錯乱していたのだ。というか、我のときは追ってくれただろうに、丹は放置というのか。この薄情者」

「丹のことだから、もしなんかやっていたとしても大丈夫だよ。危ないことに手を出すようなやつじゃない」

「それで丹が酷い目に合わされてたら責任取れるのか!」

ブラッドは割と仲間思い。そして丹はブラッドのことを肯定してくれる数少ない人。こっちの愛情も大きくなってる。だからこそ心配なのである。

「まあ分かったよ。いくら丹でも絶対は言い切れない。明日尾行して調べる?」

「尾行か!我も一度はやってみたいと思っていたのだ」


「それじゃあ、今日もまた」

次の日。また同じく早く異少課を出て帰る丹を見送った後、行動を開始する。

「さてと、行くか尾行」

「完璧に気づかれず、後を着いていこう」

「うるさくしてバレたなんてすんなよ」

異少課の部屋から出て、警察署から出て。丹と適度な距離を保って追いかける。

「いつもの丹ならここを通るなどない。そもそも住まいの方向と全く違う。これは本当に、何かあると思っていいのではないか?」

警察署を出たところでいつもと違うことが起きた。丹の家への帰り道とは全く違う道を進んでいた。

「さあな。いくら何でもそれだけでとは。とりあえず、尾行続けよう」

「やっぱり、隠れたまま追いかける。忍びみたいで楽しいではないか」

「そっちがいならいいいけど。あ、道曲がられた追いかけるぞ!」

「ふっ。まあいい」

テンション高まってるブラッド。やっぱり彼女の性格的にこういうの好きっぽい。


「えっと……うーん……」

「止まったと思えばスマホいじり始めた」

適当な道の端に避けて、そこで少しスマホをいじりだした丹。スマホの内容までは角度的にさすがに見えない。

「また動き出した。行くぞ」

そのまま道を通って歩き続ける丹。大通りから少し細い道へを歩く。

「この感じ急ごう。ここらへんちょっと見逃すかも」

道を曲がった丹を見逃さないため、曲がり角まで素早く移動した。

「で、何してるの?」

「うわっ!」

「丹!」

そしたら丹からまさかの声をかけられた。まさかの展開に2人ともびっくりしていた。

「それで、なんで俺のことを追って?」

「気づいてたの」

「まあね。ふと後ろ向いたらなんかいるなあって。ずっとついてきてたからさ、気づかないふりして驚かせようかなって」

「この尾行気づかれてたんか。丹ようやるな」


尾行がバレてしまったので、尾行した理由も説明する。

「確かに俺早く帰ってたけど、そんなにわざわざ尾行してまで探るもん?」

「まあまあ。丹だったのもある」

「まあいいや。それで、財布持ってる?こっち」

行き先がどこかも伝えずに、丹はそのまま2人を連れて行く。そして最後にやってきたところは……。

「ラーメン店?」

「うん。実は、最近ラーメンにハマってて色んなラーメン店のラーメン食べ比べてたの。遠くのところも行くから、それで早くでてたわけ。ここは評判がいいらしくて、一緒に食べる?」

「なんだ。本当に丹に何もなくて良かった」

「やはり我も配下の望みを叶えてやろう。それが我の役割だ」

ということでこのラーメン店で3人でラーメンを食べることに。結構美味しいラーメン店だった。これで尾行の件は終了した。


「良かった誤魔化せて。適当に言い訳考えたけど、ちゃんと信じてくれて」


ラーメンの件の後日、石川県異少課にて。

「明日休みたい?」

「はい。ちょっと用事で立て込んでて、休ませてもらえないですか?」

「うーん……俺としては、いや鏡から珍しく頼んできてるんだよな。よし分かった。大丈夫。しっかり用事こなしてこい」

「良かった。ありがとうございます」

(明日、大きな件があるみたいだけど。まあ大丈夫だろう。人数も多いから)


そして次の日。石川県異少課に富山県、新潟県、福井県異少課といった北陸4県の異少課が集まっていた。

「ふっふっふ。ここまで人が集まるとは。これから汝らに課される使命が見ものだな」

「丹が用事で休んでるときにこんなの起きちゃったか。こんなに県が集まるなんて広域のでっかい事件としか考えられないな」

「いた。昨日丹に呼ばれて休みの許可を出したが、やっぱりまずかったか?こういうときは出動させてくださいなんて上から言われたが、あの鏡が休みたいなんて言うと聞いてあげたくはなるんだ」

「丹は真面目だもんな。どこかの無断欠席と違って」

「我は無断欠席などしておらぬ。ただ我の存在ごと消したまで」

「違うぞ」


「それでは全員そろったようなので、今回集めた理由を話すよ」

石川県異少課のの能戸が司会として話を始める。周りには他県の異少課上司達も集まっていた。

「魔神教というのを、聞いたことはあるだろうか。これはここ1ヶ月の間に作られ発展している新興宗教なんだ。特徴として魔族は神の使いだからとその魔神とそれに準ずる魔族を最高のものだと言っているんだ」 

「魔族って、なんでそんな存在を」

「というか、魔族って一応公にはバレてないものなのに」

割と魔族が色んな場所で暴れるせいで確実にバレてないことはないだろうけど、大部分の人には気づかれていなかった。だからこそ、なぜそれをまず知れたのも、そして崇めてるのも全く意味不明。

何があってそんなことしてるのだろうか。

「それで元々は石川県にあるだけの宗教だったけど、勢力を伸ばして今や北陸四県に拠点を構えてるらしい。だから4県を集めた」


「ウチらはそこを倒しにきゃいいってことなんか?」

「いや、今のところ倒さないといけないというわけではないんだ。というのも、組織の規模の割に内部の情報は広まっていなくて、で何かやらかしてたりといった証拠が何もないんだ。だから、頼むのは調査及び状況に応じた戦闘だ」

現状じゃまだ、一応民間の健全な宗教団体といった可能性は否定できない。だが

「にしても、広まり方が早すぎて私は黒目に見ていますが。少なくとも魔族関連であることは確実ですし」

「何にせよ、我らにかかればそのような組織簡単に蹴散らせるであろう」

「かつて宗教にどっぷりハマったやつがよく言えるよ」

「魔神教の原点となった場所が本部らしい。そしてそれは石川県にあるんだ。だからここに呼んだんだよ」

「どれぐらいなんだろう、難しさ」

「デカめの宗教組織……考えてもピンとは来ないかも」

あんまり戦ったことがないような敵である。普通のカルト宗教なら異少課の仕事としてわざわざ行く必要もないから


話し合いが終わり、少し休憩時間。それが終わったら現場へと出向く。その少しの間、富山県異少課組。

「松木のことか?」

「はい。変わりませんでした?前のに戻ったと言いますか」

「前の交流会のとき、ウチらも手伝ってたんよ。それは、お嬢様の願いに起因するんや。そのとき色々と松木にぶつけて、そこからも変えようと色々として。今はようやくお嬢様の死から立ち直れたんや。お嬢様を忘れるわけやない。でも、松木があのままなのも見てて辛かったから、ようやく元に戻ってホッとしたわ」

「私のことですか。お嬢様は大事です。ですが、やはりお嬢様が望むのは私達の健康な姿でしょう。ようやく気づきました。悲しんでるだけではいけないことを」

「でも、あんまりお嬢様の話題はせんよう頼むわ。私達は聞くたびフラッシュバックしてまうんよ。あの時が」

新潟県組と話していたが、あれから幾分もの時が過ぎてようやく元に戻れたみたい。それは良かった。だからこそ、前聞いたあの事実が胸を締め付ける


新潟県組から離れて、富山県組で話し合う。

「伝えたほうがいいのかな。南さんの死にアンダス団が関わってること」

前、アンダス団の拠点を潰した時に判明した事実。彼らが慕うお嬢様の南菊花はアンダス団のスパイによって、殺されたこと。

「伝えないといけないですよ。だって、あんまりじゃないですか。殺人なのに、事故だと思い込んでるなんて」

「でも、西さんはまだマシだったけど、東さんは本当に重症だった。ようやく心の整理がついて以前のように戻れたところなんだ。水を差していいのかね」

このことを知れば、絶対にまともでは居られなくなる。良いように転ぶとは思えない。

「一旦、あっちに質問してからにしましょう。伝えてないってことは、何かあるんでしょうから」

一旦後回しにすることで合意した。


「ここが、その魔神教の大元」

「普通の広めの建物だね」

目的の建物に着いた皆。ここが魔神教を束ねている本部で、今から調べる場所。

「建物に入っていくのは、信者っぽい?」

「せやろな。ウチも同じ意見や」

そこそこ入っていく人が見える。本当に人気ではあるらしい。

「うん?んぁっ?えっ?はっ?」

「どした急に。バグって出たエラーみたいな声出して」

「良いから我について来い!」

「あ、ああ」

急に驚いたと思ったら声にならない声をあげてた吹、尋ねてみたら腕を引っ張られて道の奥へと連れてこられた。

「あれ、気のせい?」

「本当にどうしたんだ?なんか見つけたか」

「我見たのださっき、信者に混じって建物内へと入っていく、丹の姿を」

「はぁっ!?」

丹がこの宗教に用事があった?にわかには信じがたいが……

「それで追いかけようとこっちに来たものの、どこいったか分かんなくなった」

「俺が見てないしあんまり信じれないけど、吹ならこんな変な嘘つくわけないだろうな。一旦丹に連絡してみるか、どこいるのって」

「我は本当に見たのだが……」

「でも、たとえ丹がいようがどうしようが、やることは変わんない」

「我も心得ている。ただ、やはり気にはなるのだ。丹が騙されているのではないのかと」

「この連絡が返ってくれば何か進むかもだけど、なんにも連絡返ってないか。見てないのかも」

「さて、戻るか」

「2人こそこそと何か?」

戻ってきたら周りの人から言われた。バカ正直にすべてを話す必要なんてないので

「少し話だよ。今回の任務のことの」

とりあえず、誤魔化していた。もしこの宗教が悪いことしてて、丹が誘われてたんかもだろうけさ、だとしても。

とりあえずこさそうならこっちで解決する。


「それにしてもどうやって調べましょうか、流石に中に入らないと分かりませんが、どうしますか」

「こん中分からんから、松木の力で無理やり、ってのはダメなんよな」

「窓があればそれを使って中を見て、扉を設置できるでしょう。入るのはそれでいいですが、そこからですよ」

「他の入り方だと、信者として潜入するとか?」

「楽だけど、それだと深くまでは調べられないよね」

ここであくどいことをやっていたとして、それを信者の目の届くところではしてないだろう。でも入りやすいし、最悪ごまかせる可能性がある。

「どっちがいいでしょうか?」

「個人的には信者ルート。信者なら知れる表層の情報も、俺達は知らないんだから。これでも十分収穫だと思う」

「我も同じだ。同郷のものとはやはり気が合う」

石川県組は信者ルートを選んだ。その理由はさっき言ったようなことだけではなく、丹が信者と混ざって入っていったように見えたことがある。この2人には丹のことを調べる追加のミッションが加わってた。

「でも、全員信者とか全員潜伏とかだったらどっちにしろ目立つので、戦力を分けましょう」

「都道府県で分ける?混ぜるよりかは知ってる人たちとのほうが、戦闘も有利だろうから」

信者組は石川県、福井県に。潜入組は富山県、新潟県となった。潜入組のほうがバトルになる可能性があるためとのことで、人が多い富山県はそっちに送った。

「やっぱり丹……」

「人違いってのが一番丸いんだけど、最悪のこともケアしておきたいな」

石川県組は丹の事が気がかりでしょうがない。ブラッドが似たようなことしたからなおさら。

「さっきから大丈夫ですか?よく自分の中に入って、話を聞いていないように見えますけど」

「なんかもしかして今大事な話してた。いやすまん」

「それはしてませんけど、何かあったら話してくださいよ。同じチームですから」

事情を知らない福井県組からは心配されていた。でも丹のことはまだ秘めておきたい。少なくとも言わなくちゃいけなくなるまでは。


信者組は普通に中に入れた。信者になりたいといって少し話したら簡単になれた。そして信者が集まる大広間へと通された。

「さて、多分あそこのドア奥がこの教団の運営とかの業務をする場所だろうな」

「常に見張っている、などではないものの、彼の者共の視線に晒されているな。これでは直接行くのはやめておけ」

「全体的に信者がまばらに散ってますね。集中して見てるわけではないですけど」

多分運営場へとつながるドアはここからじゃ鍵かかってるかもわからない。とりあえずあの場所はここの人が常駐して見張ってるわけじゃない。ただ信者が多くてそんなことしたら見られる。見られただけなら良いけどそれが運営の耳に入ったら全員まずいことになる。

「教祖さまがいらっしゃったぞ!」

「ようやく、久しぶりに教祖様から直で話聞ける。よっしゃー!」

「それよりありがたい教祖様の話だ。ちゃんとその準備はできてるよな」

ここの教祖らしき人物が現れたらしく、皆そっちに夢中になっていた。今ならあのドア奥いけそうな気もしたが、こっち側でここの日常の様子を眺めるのも大事な気がした。どっちにしろあっちがこの奥の調査をしてるだろうから。

「我らが見物してやろうじゃないか」

「信者は熱望して盛り上がってる。異様な空気」

「これが教祖のカリスマの末生まれたようなもんなら全然問題ないけど、こんな気になるようなことは大抵関わってんだ武器の力か魔族が」

洗脳させるような武器でも使ってんのか?だとしたらまずいな。

そして壇上に教祖が現れた。特に取り柄があるわけじゃない長身の大人の男性。あんまりこういうのは悪いがカリスマを持ってるようには見えない。

「十分気をつけないとな」

さっきの話だと久しぶりに教祖が登場したらしい。教祖として出てきて何か、洗脳でも進める気なのかも。

「何かやってくるかもだから、気をつけろよ」

「我も流石に怪しいやつの目の前で無防備になどならない。警戒は怠ってない」

こういうのでなんとかなるやつか、俺の勘違いを祈ってた。


「ごきげんよう。迷える皆さん。まずは新しく来られた方のためにも、魔神や魔族についての話を始めましょう」

「数年前、魔神が降臨し、この無味乾燥とした世界を変えようとしました。手始めに、魔族という魔神の手下を遣わしたのです」

「ですから、魔族は魔神と同じ神のもの。もちろん丁重に扱わねばなりません」

「魔神が遣わした魔族は、今は様々なところで人々のために奉仕してくれています。友好関係を築いたものもいれば、人知れず危機から守り続けているものもいます」

「魔神が遣わした魔族により、今大きな変化が起こっているのです。その変化は、人類をより良い方向に導いてくれます。さて、貴方がたも魔神、そして魔族のことを信仰するのです」

教祖の話が終わると、部屋内が信者達の拍手に包まれた。

「内容聞いた感じは、吸血教ほどやばい組織には見えないな。今のところはまだまともだ」

「一部真意を際限なく巨大化させておったが、全体として悪いとも言えぬ」

「それこそ、トルちゃんみたいな優しい魔族と出会って……とか、普通にありえるね」

「全部良いって括っちゃってるのはダメだと思うけど、それでもこれだけで問題というほどでもないね」

まだ見えてこない。本当に大丈夫なのか?そんなことは、どうせありえないだろうが。

カルト宗教ってのは、教義だけまともっぽく見せかけるのもあるみたいだし。

「魔族等と言われても、何かわからないだろう。ただのデタラメではないかと疑っているものもいる。だから、ここへ魔族を呼び、魔族のことをもっと知ってもらう。さあ、よろしくお願いします」

「そうそうほんとそう、おっと俺は魔族のアユタラだ。見ろよこれ、人じゃないだろ?さっき説明してたやつ。あの元にたびたび言っては占ったり、できることやってるんだ」

新しく現れたのはまさかの魔族。教祖の説明から魔族の説明へと移ったみたい。

壇上に立つ魔族には人型だけど尻尾が見える。少しざわつく声が上がったのは、初めて人じゃないものを見たからだろう。

そうして魔族アユタラは舞台袖へと帰っていく。

「ああいう魔族と交流して、あんな考えに目覚めたのかね」

「魔神とかはよく分からんけどな」

いくつかはなんとか理解できても魔神設定はどこから来たのだろうか。本当にいるのだろうか魔神とやらが。

考えてもわからん。


「さて、次は……」

教祖が信者の相談に乗ったりしてる。聞くほどの内容もないのでこちらで話してた。

「それで、どう思うよ」

「ちょっとアレだけど、でも問題ってほどでもないような気がするね」

「見てる感じもダメなことやってるわけでもないし、それに、私達トルちゃんいるから、魔族と共生してる人に親近感湧いちゃった」

「こっちの話はまあ、そんなとこか」

なんだかんだいいながらも日向はここを疑ってた。異少課の勘が、この場所に絶対なにかあると囁いてた。

そしてそれとは別の件で、ブラッドの近くでひそひそ声で話す。

「それで、丹はここにいるもんだと思ってたが、いるか?」

「我は一通り見たが、それでも丹に似ているものすらいなかった」

「こんだけいるなら気づかなくても不思議じゃない。ちょっと探してみようか丹がいるにしろいないにしろ、ここらを調べるのは良いだろうよ」

「あり得るのはここの他、廊下やトイレ、小部屋。そんなに大きいわけではない。我が見つけてみせよう!」

建物の構造的に基本的に入った出入口を通らないと外にはでられない。いるとしてあり得るのはここら。人間の多さに疲れるけど、それでもさらっと見てたら見つけられなくもない。

「まさか。こっちは考えなくて良い」

一応さっき見た運営の場所へと繋がるドアや、壇横の控え室みたいな、信者が入れない場所にいたならと考えたけど、最初からこのことは気にしないで探すことにした。

「さて、探すか信者を」

「どうかしたんですか?さっきから小さくボソボソ喋ってますけど」

「こっちの県の仕事だから、聞かなかったことにしてくれる?」

「そうですか。分かりました」


「こちらの扉を通れば、中に入ることができます」

「大丈夫大丈夫。ウチが見てきたけど扉の周りに誰かいたりはせんくて、安心していける」

潜入組。新潟県組が率先して潜入をして、俺達はそれに着いて行ってるような感じ。

入った部屋は執務部屋。探してみたが何もなかった。ほこりまみれで全然使われてない

「とりあえず、他の部屋へと行きましょうか。この奥は廊下でしょうから、行動には気をつけてください」

「足音が聞こえるね」

「そこまで近くはないですが、警戒に越したことはないでしょう。足音的には1人。いざとなったら気絶させましょうか」

「一般の人ならいけるでしょうが、魔族やら言ってて魔族と関わってることをほのめかしていますから。武器の力ももっていてもおかしくはない。気をつけましょう。何かあれば直ちに逃げる用の扉を開きます」

「とりあえず、対角にあるその部屋行きましょうか。一つ一つつぶしていけば、いつか本当に欲しい情報の場所へとたどり着けますから」

「賛成やな。うろちょろしたところでどうせ変わらん」

一つ一つ調べ、目的の情報を探してみせる。


「入ってみたは良いけれど」

「こりゃ何もねえなここ」

入った部屋は机と椅子だけが置いてある部屋。棚も何も無い。一目見ただけでここに何の情報もないことが分かる。

「じゃあ次……」

「しっ、静かに。足音……おや、よく聞いてみれば別の足音も聞こえますね」

「松木そうなん?1つならともかく」

「静かにしてよく耳をすませば、普通の足音の他、小さな足音が聞こえます。わざと足音を小さくしているのでしょうか。どちらにせよ、近くに2人いることは確実です」

さっき入る前聞こえた足音はまだ聞こえてた。松木にはそれの他、小さな足音も聞こえたらしい。

「どうしましょうか。というのも、この部屋は他に出入り口がありません。おまけに隠れる場所もありません」

「松木のか波山さんのか、とにかく瞬間移動できるやつ使ってやり過ごそうや。念の為念の為にな」


しばらくして

「大丈夫そうですね」

入ったときと同じ方法で最初の埃の部屋へとはいる。元の場所に戻らなかったのは、そこに誰かいる可能性があったから。そして元々動く羽目になったあの足音は2件とも消えていた。

「でも、運悪く鉢合わせなんてことにならなくてよかったですね」

「こんなホコリまみれなら、だれかがはいってくることはないだろうよ」

「でも入っては来たみたいですよ」

「え?嘘!?」

「足跡の中に、外から中へと入る足跡があったので」

「あっ、なるほど」

中から外はいったものの、逆はしてない。するには廊下から誰かが入らないといけないわけだ

「そうか。ありがとう。本当に危なかったですね」

「それにしてもこの部屋に何しに」

「こんなほこりだらけの場所、何も理由がなさそうですが」


「いなかったね。行ける場所全部確認したというのに」

「我の幻覚に過ぎないのか?ただあれは本当に丹だと感じたというのに」

丹を探しているこっち側。行くことができる全ての場所を探したというのに、結局丹を見つけることはできなかった。

「もしかして、この奥?」

「そこはそもそも何で入る必要があるのかって場所だから。そこに丹かー無理だと思うけどね」

「そもそも丹がしてることが我にはわからぬ。そこ自体に問題があるのに、否定してしまうのは良いとは思えぬ」

その扉は関係者用の扉で、この宗教の運営を行う場所に通づる扉。

普通なら丹が何がしたくてそんなことしてるのかって言うんだが、丹がやってることが謎すぎてかえってそんなこと考えないことにしたほうがいいかも。

「我らがここで得られる内容など、たった少ししかない。ここにいたところであんまり意味ないことは分かっておろう。だからこそ、丹を抜きにしてもこちらも探すのはおかしくはないのではないか」

「なんだかんだ行って絶対丹を助けたいだけだな。最初からそう伝えろっての」


「さらなる調査ですか」

「ここにいたところであんまり情報は増えない。この宗教の情報を集めなきゃだろ?その扉の奥も試してみたい」

「なるほど」

「皆のためにも、私達も行きます」

説明が長いのもあり、詳しい説明はしたくない。そのためそれらしい理由をつけて、4人でこっちの調査へと行く。

丹は、その奥にいるだろうか

「それで、どうやってこの扉超える?」

「ここの信者は割と前の教祖の映像に釘付け。音さえ出さないようにすれば気づかれずに行けるかもな」

「よし。今のうち」

開けてみてもまさか誰にも気づかれない。本当に言ったとおり、釘付けで気づかれず。そして、この場所での探索が開始となった。


コツ、コツ……

「こっち来てるよね」

「この周りは……駄目だな何にもない。仕方ない、一度戻ろうか」

石川県&福井県の異少課達。扉を開けたあと、探索に行こうとしたのだが、そしたら近づいてくる足音が聞こえた。

この場所で一番近い隠れ方はさっきのドアから信者が大量にいる場所へと戻ること。周りを見渡したらドアがあるっちゃあるけど、中がわからない以上、戻るしかない。

「あれが、丹の足音だとしたら……」

「あり得るけど、それでも戻らなきゃ。常に最悪を想定しないと、潜入なんて務まらん」

「我にも分かっている。丹が近くにいるかもしれない、やはりそれが我を少し揺さぶるのだ」

「分かるよ言いたいことは、だけども、丹のためにもやらないとな」


一度戻った後、扉を再度開けて入った。入ってすぐ見つかるなんてことにはならなかったが、油断はできない。

「嫌な予感がするな。人の気配と言おうか」

「ここに留まっておくのは明らかにダメだ。これは中に誰かがいるのを覚悟してその部屋に入るべき」

「中にいたら、何とか説得して、それでもダメそうなら悪いけど静かにしてもらうんだよね」

「あくまで任務だから。ちゃんと調べ終わらないと、途中で終了にはできないもの」

前回入らなかったドア。その中に隠れて近くの人がいなくなるまでやり過ごす。それがいい方法。

そして入ろうとしたら、まさかの後ろから音が聞こえた。ドアの開閉音。

「まずいっ」

「バレたっ!?」

そう、考えていなかったのだ。まさかあの扉がもう一度開き、あの部屋からここに来るものが現れるとは。

「おっとおっと。こっちは信者の方が入るのはダメだダメだ。魔神教入ったばっかり?帰り道はこっちじゃね、ほらほら連れてってこうか?」

「あなたは確か、魔族のアユタラ」

そこにいたのは魔族アユタラ。さっきの教祖の説明のときに出てきた魔族。そし手運営側の魔族である。

「ここ鍵とかもないから間違っちゃうのも分かるなー。張り紙とかしたほうがいいかもな」

「……」

幸いなことに不法侵入したとは思ってない。ただ間違えて入ってしまっただけだと思ってる。

だから撤退を選べばこの場を安全に切り抜けることができる。さあどうするか。

撤退したら何とかこの場は切り抜けれるが、そのかわりもう調査のチャンスがなくなる。侵入組もちゃんとしてるだろうからできなくはないけど、やっぱり微妙なとこが……

「かといって、ゴネたら」

乱闘騒ぎとして大きくなるのはどう考えても避けたい。

「私達みたいな背丈の男子、こんな格好のを我ら探しているんだ。見たことないか?」

と、考えてたらまさか吹が話を進めていた。丹の写真を見せて、丹がいないかを聞いていた。

「俺は知らないけど、探しとこうか?こん中どっか迷子になってって?」

「探せないですか?丹がこっちいったのまで見て」

「そんなこと言われても……あぁ分かったよ。布教してくれんなら手伝うから、この魔神教が大きくなれるよう考えてくれ。ここを大きくしたいんだ」

まさか結構良い結果になった。吹のお陰で。


「私達魔神教について入ったばかりでよく分かってなくて、詳しい説明とかしてもらえませんか?」

黒子が聞いた。石川県2人は丹のことを探るために魔神教のことが割とおろそかになっているが、そんな事情を知らない福井県組はこれも魔神教について知るためだと解釈してた。

そのため、このチャンスを活かして質問している。魔神教の人物だから都合の悪いことまでは教えてくれなさそうだけど、教祖よりかは聞きやすそうで。

「魔神教に興味持ってくれて嬉しいよ。俺は魔族で、ああ魔族ってのは魔神の遣いって感じ。魔族にとっては人を助けるのが普通の考え方なんだが、それで助けたのが魔族のためだーなんて魔神教っての立ち上げて魔族のこともっと広げようとして。そんなんでできたとこだよ」

魔族のアユタラの言っていることが、なんか今までの常識と異なる気がする。魔神なんて分かんない存在のことが。

そういう場所からこっちの世界に来たのだろうか。同じ世界でも場所によって考え方とか、宗教とか異なるだろうから。

「でも、ここは好きだねえ。ほめられたりするのら小っ恥ずいけど、あいつが魔族のためになんてやってる魔神教の成長を間近で見てたもん。この魔神教の規模もっと増やしてぇ。これ終わったら布教行ってくれるんだろ?着々と増やしてやる」

「そういえば魔神とか、そういうの本当にいるんですか?」

「いるよいる。魔神は俺達魔族の上にいて、人をより良くしてる。その魔神のために動くのが俺達ってわけ。魔神のこと話したら、宗教作ってくれたっていう」

宗教作ってくれたなんて初めて聞いた。魔神のことも、どう考えても変だ。話がうまく噛み合わない。魔神教の教えに染められてるかのように。

「まさか、そういうこと?」

「そんなことあるのかな。だって」

六道姉妹は2人でこの宗教のこと調べる。そして石川県の面々は丹のことを見つけ出す。

2人別々の道へと行こうとしていた。


「今のところ怪しげな書類とか、そういう証拠はありませんね」

「もしかしたら本当に真っ当なとこなんかもな。もしくはよほど出したくない情報があるのか」

潜入組は足音の件で一度撤退した後、再度中の探索をしていた。その過程でいくつか魔神教の書類を見つけたものの、それらの書類に魔神教を潰す証拠になるほどの悪質行為は見られなかった。

「にしても、あの足音は結局なんなのでしょうね。ここの人なのでしょうが、にしては急ぎすぎてるんですよ」

「急ぎすぎ?」

「足音の間隔が短いんです。歩いてるときの間隔より明らかに」

あのとき聞こえた足音はまだ聞こえる。近くにはいないようなので何とかなっている。

「もしかして、あっちの組が調べられること終わったからこっちに来てくれたのかな」


「ん?」

「どうかしたんか?」

また部屋で書類探しを行っていると、少し疑問の声を松木が上げた。近くでそれを聞いた蓮葉と2人で話し合う。

「ここを見てください。書類の内容は無視して良いのですけど、このほこり」

書類の置いてある場所のほこりが薄くなっている。それは、この書類を誰かが動かしたということ。

「なるほど、誰かがこれを最近動かしたってことな。でも、それはここの人なんやないか?その書類を継ぎ足すとか書き込むとか。そのために動かしたんやないのか?」

「この中身はいつの日かの記録、内容を読んだが、継ぎ足したとは思えません。日付も書いてますが、しばらく前でしたから」

「そなんか?……パラパラっとめくっただけやけどそやな。使いもしないのに記録だけは大事に残してく。そういうやつなんやろな」

「そしてそれだと、使ったとは考えづらい。この内容もまた見たい何かに使いたいと思ったときに見るようなものではないですから」

「誰かが何かの目的でこれを手にした。なんなんやろね」

内容はただの記録。わざわざ見たいと思うことのないようなこと。

だとしたら、誰が何の目的で使ったのだろうか。かの時点では誰にも予想することはできなかった。


「これは、聖書かなんかだな。この魔神教がどういう風にできたかとか、そういうのを記して信者に販売でもしてるんだろな」

新潟県組がほこりの途切れに気を取られてた頃、同じ部屋で本を見つけてた。

パラパラとめくるとこの宗教についてのことが書かれてる。大半はあっちの組が聞いたりして知ったことと同じ。

「どっから魔神の存在とか出てきてんだろう」

「魔族の存在までは知ってて、そこから勝手にあることないこと言いふらしてみようとしてるのかな。魔族はまだ一般に浸透してないから、勝手なこと言ってもそれが違うなんて言えないから」

「これは廃棄されるやつだったみたいだな。こんなにこのページぐしゃぐしゃになって」

魔神に関する記述があるページがそこだけめちゃくちゃぐちゃぐちゃになっていた。よっぽど劣悪な環境でないと自然に適当に置いただけではならないレベルのぐしゃぐしゃに。

「廃棄されずここに残ってて、そのおかげで俺達が読めたんだから感謝しようか」

そのままさらにページを読み進めていくと、また別のページで指が止まった。

「魔族アユタラ?それがこの宗教に全面的に協力してると。関係者のことの記述欄に書かれてた」

「魔族と人間がぐるになってやろうなんてこと?ありえなくはないよね」

「そこんとこはわからんよ。良いように使われてるだけかもしれんし、ただ魔族までここにいるって、本当に大規模だなぁと思ったよ」

「小さな宗教団体のはずなんだけどさ」

魔族との繋がりとか。本当どこでそれを得たのか分からないのが多すぎる。

「で、これどこ?」

「あれ、そこの本棚じゃないの?」

「この本そこらの床に適当に置かれてたんだよ。どこに戻そうか」

「わざわざ聖書のような大事なものをこわなところに、ほっぽりだして放置するかな」

「でも実際置かれていたんだけど」

ちょっとよく分からない。そこら辺に置かれていた本も、薄いほこりの件も。この2つは繋がってそうな気はする。


「ここ、明らかに怪しいね」

「ここにきっと、魔神教の秘密があるはず」

その後調べてて一番奥に見つけたのがこの部屋。ドアや周りが他と違って格が高い。そして何よりドアにわざわざ鍵がかかってる。

そしてかかっていたプレートを見るにここは教祖の部屋らしい。絶対何かある。

「とはいったものの、この鍵どうやってあけるんや?こんな中分からん部屋だと松木のいけんのやろ?」

「窓さえあれば良かったのですが」

入ったときと違って廊下から部屋の様子をみることができない。愛香の瞬間移動も松木の移動扉も行き先指定の関係で分かってないと使えない。

「そもそも今はどっちにしろ抑えたほうがいい。中から音が聞こえてくる。多分教祖の」

「そこ行きたいのにこん中いるの……」

「どっちにしろ中に入るやり方も決めておかないと」

「鍵を見つけることができれば」

「っ隣のあれ、鍵じゃない?」

「ほんとだ。じゃあもしかしたらあるかも?」

隣の部屋は倉庫。そしてたまたま見た倉庫の壁に鍵がたくさん飾ってあるのが見えた。全員で倉庫に移動してみた。

「これ、ここの鍵使って入ったみたい?」

「ないそういうことか」

一番最初の鍵がなくなっていた。それがこのってことは、あっちの教祖がつかってるのだろう。このドアを開けるのに必要なことはわかってる。


ガチャ、バタ

「これって?」

「待ってあのドア開いてるんだけど、もしかして今出てきたの!?」

「とりあえず隠れよう。ここに鍵戻しに来るはずだから」

近くで聞こえたのは鍵が開く音。ドアが開く音。

隣の倉庫で鍵を調べていたら、その音を聞いた。振り返ってみてみると、教祖室のドアが開きっぱなしになっていた。

この倉庫には鍵を戻しに来るはず。とりあえず棚使ってバレないよう隠れておく。

「来ないね」

「鍵戻しに来ると思ったのですが」

少し待っていたが、一向に来ない。それどころがここの近くに人はいなく、さっき所長室にいたであろう人の足音も遠くのどっかに行ってしまった。

「今思ったけど開けっ放しなのおかしくない?鍵のある扉開けっ放しになんて普通するやろか?」

「もしかして、まだ開けっ放しだ。何かあったのかまあ知らんけど、今が入るチャンスじゃないか?」

少し移動してギリギリ倉庫のドアを通して廊下が見える位置に行くと、なんと教祖室のドアがまだ開けっ放しになっていた。

鍵を閉めないではなくドアをそもそも開けっ放しにする。そうせざるを得ないよっぽど重大な事が起きてるのか分からんが、ともかくチャンスに違いない。

「みんな行こう。この中に隠してあるものを見つけないと」


教祖室。その中には多くの本が棚に置かれていた。流石に探すのが骨が折れそうと思っていたが、それは意外と簡単に覆された。

「この日記に、大事な事全部書かれてた。魔神教の秘密が全部」

「そんな本が無造作にこんなところに?書きかけなんてわけでもないな。誰かが手にとってほっぽり投げたような状態だし」

言った通り。棚から落ちたわけでもない床にその本は適当に投げられていた。どう考えても明らかにおかしい。

「もしかしたら、ここいたのは教祖ではないのかもしれませんね。そしてそれは私達と同じく、この魔神教を調べている」

「敵が多そうやもんなこういうとこ。それで、その本に何が書かれてるん?」

その本に書かれていたのは驚きの内容だった。話を要約すると、

『この魔神教は魔族アユタラにより作られた』

『教祖はアユタラの力で操っている存在で、アユタラがこの宗教の中枢を握っている』

『教団の教えや魔神うんぬんは全てでっち上げである』

『魔神教を作ったのは、この世界を魔族がトップの世界に変えるため』

他にも色々と、魔神教の中から外までありとあらゆる大事な事が書かれていた。

「やっぱり、この魔神教が最初からきな臭かったんは勘違いやなかったんやね」

「これで分かりましたね。これだけ急速な拡大にも操りの力を使ったものでしょう。信者の考え方を変えたり、操って布教させたり」

「それで、このアユタラってのはどこにいるんだよ。ぶっ飛ばしに行こうぜ」

「落ち着いて、でも準備はしましょう。人を操る力なんて使われたら、味方同士で殺し合いという地獄になりかねませんから」


「だからなんだって勝手に神様作って人騙して。そのアユタラなんて魔族をぶった切ってやる」

魔神教の建物内。調査に来てた異少課の皆とは別に、単独行動してる人がいた。

そいつはあのタイミングで所長室にいて所長室であの情報を読んで怒りでその本を投げ捨てたやつだ。なんなら、聖書をほっぽり出したのも、探し物をしてほこりを薄くしたのも、急いでて短い足音を残したのも、全部彼である。

「この魔神教が台頭してるなんて聞いて、わざわざ中身をちゃんと調査してみたけど、最初から何もかもぶち壊したほうが良かった。無駄に面倒な道を通った」

彼はかなり血の気が立っている。魔神をでっち上げ、この宗教を作り上げたアユタラ。そいつを消し飛ばそうとしていた。

「神の騙りなんてゴミ行為するゴミが、絶対許さない」

そして彼は建物内を走り回っていた。彼の目標はこの宗教を束ね上げるアユタラのみ。

「どこにいる。ここの中にいることは分かってんだ。出てこい消し飛べ後悔しろ終われ」

何がそこまで怒り狂わせるのか分からない。とにかく恨みをアユタラにぶつけて発散しようとはしているようだ。


トゥルルルル

「俺の電話だ」

「もしかして丹から便りが来たのか!?それで、丹はどこに?」

「姉さん、このコトってどういうことだと思う?」

「私達には分からないんじゃないかな。私達にも話してくれないってことは、石川県だけの問題にしておきたいんだろうから、聞かなかったことにしてあげるべきじゃない?」

丹の問題のことを何も知らないのに石川県の2人が丹丹言いまくるので必然的に巻き込まれている。ちょっと可哀想である。そのこと言わないのなら皆に聞こえる声で丹の件を進めるのを止めてあげようよ。

それはともかく、日向に来た電話は丹からではなく東松木から。丹からじゃなくて露骨に残念がる2人。こいつら。

「どうした?なんかそっちで分かったか?」

「ええ、単刀直入に言いましょう。この魔神教は壊滅の必要があるあくどい宗教です。力を悪用して信者を増やしてる可能性が高いです。そして、魔神教の一番トップが魔族アユタラです。あの教祖も生み出された幻のようです。アユタラをみたら連絡をお願いします。合流して倒しましょう」

「ちょっと待って。アユタラがここの大ボスなんだよな」

「そういことですね。何か私に質問でもありますか?」

目の前にいるアユタラを2度、3度見て

「ここにいるんだけど」

「それは……とりあえず向かいます。どこにいますか?」

「今小会議室の近く、今んとこ戦いにはなってないから来るまで時間稼ぐ」

目の前にいるアユタラのまさかの事実を伝えられた日向とブラッド。今のとこすぐ戦闘を始めようとはしてない様だから、なんか策略があるのか単純に俺達のことを敵だと見なしてないのか。

今はとりあえずここを切り抜けることを考える。

「探してる丹って子から?ならその場所まで案内しよう」

「いや全然別の。ただの友人からの電話」

幸い内容までは聞かれてない。なら何とか私達がまだ知らないと誤魔化すことはできる。

あの2人にはこのことを伝えたいけど、この距離で伝えるとその時にバレかねない……。

仕方ない。後で伝えよう。


「この野郎!死にやがれ!」

どうやって時間稼ぎしようか考えてた途端。どっかからかともかく人が飛び出して来た。そしてその人はアユタラに一直線に来たと思ったら、そのままの勢いを乗せてアユタラを全力でぶん殴り、ぶっ飛ばした。

その男の名前は……。

「「丹!?」」

そう。そこにいたのは丹。ブラッドがこの施設に入っていくのを見た気がすると言ってたが、それは正真正銘本当に丹だった。

「いってぇな急に殴ってきて」

「てめぇがやったことなんて分かりきってんだ。どうせ力でも使って神様騙って人騙して。ふざけんなよ」

「「丹?」」

ようやく丹に出会えたという嬉しさの少し先に出てきたのは、本当に丹か?という気持ちだった。

言葉遣いが丹らしくない。こんな感じに殴りを決めにいくようなのじゃなくて、皆を回復させるサポート役だったのに。

「分かってんのか。あの部屋に侵入されたかよ。まあいい。そうだよ俺がアユタラ。この魔神教を作って魔族の国に変えようとしてるやつだよ!知られちまったら仕方ねぇ。こいつらも含めて全員やってやるよ!」

「てめぇなんぞに負け……全員?あっえっ!?なんでここに」

「やっと気づいた」

ここでようやく周りにブラッドや日向といった身近な人がいることに気がついた。今までかっこよい感じだったのに急にアタフタして、この状況がバレたことにどうしようか思いを巡らせていた。

「丹!我は知らぬのだがどういうことだ?なんでここには我らの問だ。丹らしくなかったが丹なのか!?」

「いやー……ってかなんでこんなとこに」

「依頼だよ依頼。この魔神教が怪しいらしいから調べてこいって。色々と怪しいここ探してたらこう」

「今の問を我はそっくり丹に返すぞ。なぜここにいる。用事とはここでなにかする用事だったのか?」

「あぁ……その……」

質問に答えず苦虫を噛み潰したような顔をする丹。それを聞いて何となく分かった。丹が何をしていたのかはともかく、ここでしていたことは俺達には秘密にしておきたいということを。

「俺を放置すんなよ。この魔神教を漁りまくってたハイエナ」

「そんないきがってるのも今のうち。丹に何があったのかわからないけど、とりあえずこいつを倒そうか。お話はそれから」

「この魔族アユタラは能力であの教祖を作り出してるから。厄介な能力ある。気をつけて」

「丹なんぞに言われなくても、我についていけばいい」

一旦話を忘れることに。倒したら話また始まるけど。


「にしてもほんとボロ出さないように隠してたんか。魔神教のことも本物の魔族を知ってる俺達なら違和感感じたけど、知らないならそういうもんで流せるし、それにこの場所に入っても襲わずなんなら丹を探す手伝いに出るとは」

「いや、ボロを出す出さないの話ではないだろう。我らが丹を探してるといったから、中に入っている丹を見つけてから我らをまとめて始末しようとした。そういうとこだろうよ」

この3人の結束力が強い。よってこんなことになっている。

「人を騙すなんて、駄目に決まってる」

「これ以上の被害が出る前にくい止めないと」

その結果福井県組が蚊帳の外になって終始可哀想であったが、今はちゃんと目の前の敵に対して戦っている。

「随分余裕そうじゃねえか。魔族の力に人間っぽっちが勝てるわけないっての」

「それはどうかな。少なくともこっちが負けるわけないんで。覚悟してよ。神様騙った罰を」

今回の丹は激しく怒ってる。丹1人でも怒りに任せて殴り込みに行っていた。

「回復は俺に任せて。皆のためにも」

「それはそうだけど、丹も攻撃行きたかったら行っていい。どうせその謎殴りはもうバレちゃったし。こいつにとどめ刺したいんじゃねぇか?」

「ありがたく受け取る。こんなの野放しにはしたくない」


「こんのっ!ふざけんなよ!」

「丹実はここまでやることができるのか。何で言ってなかったんだろ」

「丹の性格からしてサポート寄りだもの。わが右腕の丹を勝手な妄想に巻き込まないでいただきたい」

「それに、俺がこうやってるのはあくまで怒りのため。常にこうなるほど、強くはないよ」 

「なるほど。丹をよくここまで怒らせたな、それほど自分がやったことのクズさを思い知りなよ」

「貴様に鉄槌を下そう。丹にしたことも全て」

「私達だって、同じ気持ちですから」

「絶対ここで終わらせます」

皆の気持ちは多分一丸となった。戦いはそして激化する。


「てめぇ!やっぱりあくどいこと考えるだけある。本体性能がないのに悪知恵で強く見せかけて。もっと強いやつは全然いるぞ」

丹がシンプルに殴るだけで結構壁際に追い詰められてる。ちょっと防御しようとしてるけどそんなに効果はない。

少なくとも、単体のステータスはそんならしい。前の吸血教のボスとかのほうが全然強い。

「丹の怒りパワーがやばいんじゃないのかな」

「このパワー俺達に向けられなくて良かったよな。お前も丹を怒らせるなこれ見たくねぇ」

「やっぱり強いな、こいつは活かせるぜ」

「ぐ、うっ……」

「丹!?」

「お前丹に何した」

と思ったらいきなり丹が苦しみ始めた。アユタラが何かしたタイミングで。

「うぅっ……このっ……」

「おい丹。しっかり、しっかり!」

「死ね!」

「うっ……」

丹の様子のおかしさに丹をなだめて落ち着かせようと近づいたブラッド。しかし丹はそんなブラッドにまさかの攻撃をした。しかも殺意がこもった、じゃれ合いなんかじゃない攻撃を。

「ブラッド、しっかり。丹、何で」

「もしかして、人を操る力の持ち主なんじゃ。あの教祖みたいに」

「ご明察。さて、俺のかわりに全部破壊して見せてよ。最大火力で」

「このーっ!」

暴れまわる操られた丹。アユタラに向けてた怒りがそっくりそのまま自分たちに向けられてた。

「これまずくない?そもそも俺たちに回復できるやつもいないし。丹だから下手に攻撃させるのもあれだし。あんなの相手に気絶とかさせるのも厳しいし」

丹は操られてるだけの味方だと言うのがややこしい。丹にできる攻撃が最低限のものしかできない。傷つけるなんてもってのほか。

「丹、我によく刃向かおうとした。丹は我の部下。思い出させてみせよう」

「このっ!」

「ただ殴ったり蹴ったりしてるだけ。武器の力も使わずにシンプルなんだけど」

「この火力捌くのきついよほんと。でもいける」

丹の攻撃は正直単調。回復系の力だったので武器の力が使ってこれないのがいいとこだった。

ただ、どこで覚えたのかわからない高火力ではあるのだが。でも丹のためにもそれを受け止めてみせる。

「アユタラもさっさと。操る能力だけなら、本体はきっとそんなに強くない。集中していけば」

「人数差を活かして全力で戦いを。丹のためにも、早めに終わらせよう」

全員の気持ちを1つに、アユタラのとどめをさす。そういう戦い方をしよう。


「丹!どこで覚えてきたんだそんな馬鹿力。」

「おい任せてるけど本当に大丈夫なんだろうな。前も言ったぞ自分を犠牲にすんなって」

「我を誰と心得る。吸血鬼ブラッド。そして丹を部下に持つものぞ。我は部下を悲しませることなどせぬ」

ブラッドの悪癖は自分のことをそんなに大事にせず、皆のために突っ走ること。まあそれも少しは改善できてるんだろうけど、それでも心配なのだ。

「我のことなど心配する暇があるのなら、さっさとこれを終わらせろ」

「わぁった。頑張れ負けんな」

「この野郎!全部消え失せろ!そして死にやがれ!」

「部下をなだめるのも、我吸血鬼の仕事ぞ」

暴れまわる丹に真正面から向き合い、槍を使って丹を傷つけないよう距離をとって、できるだけ食らわないよう時間を稼ぐ。

「あんまり攻撃してこない。やっぱりあの力だけの敵」

「もしそうなら、操られてる鏡さんのタゲを全部吸ってくれてるから、今のうちに仕留められるかも」

アユタラの攻撃は大したことない。防御もそんなに変わらない。苦戦はしなさそう。

「なーんか思ったよりこりゃきつい?操られてるってのに全然気にしてないし」

「さっさとお前を倒すのが一番丹のためだろうよ。ただ我らはそう動いてるだけだ」

この操りが思ったよりも効いてなく、焦りを見せ始めたアユタラ。対するこちらは焦ることなく、落ち着いてアユタラと対峙してる。

「逃がしもしない」

「そんなことしたら私達の攻撃が貫くから」

そして操ってる丹に任せて自分だけは逃げようなんて考え方も、それを許さない福井県組によって無理になった。

こっち側のやる気だらけ。これなら多分いける。

「増やすか。増やせば増やすほど、脳の疲れが凄くて嫌だけど、やっちゃお。誰にしようかここ結構大事だな。でもやっぱり、彼女かな」

「ぐぅっ!我は……」

「ちくしょう2人いけんのかよ」

「閉じ込めたり……雪の中にしたら危なすぎるよ」

残ってる人の武器の力が、今活かしづらいものばかり。

「早くこっち来い、それまで時間稼ぐから」

この状態で見つけた活路は援軍に頼むこと。あの時こっちに向かってた。この建物はそんなに大きくないし、そろそろ来るはず……


「この野郎!死ね!」

「全て壊してやる」

「2人は下がってて。俺が対応しとくから」

「でも……」

「俺のほうが2人を分かってる分、対策も取れるから」

とりあえず適当なこと言って2人を離す。こんな暴れてるのに対するまともな対策なんてない。でもあの遠距離2人と比べて近距離だし、俺の仲間が原因なわけだし、流石に俺たちだけでなんとかする

「なるほど、丹はともかく吹も使ってこないのを見ると、操られてる時に武器の力は使えないみたいか。ただ殴って肉体で攻撃してくるだけ」

「こいつめ!」

「逃げるな。我から逃げるな!」

「俺はさぁ、こういうのに真正面から戦うタイプじゃないんだけどなぁ。でもやらんといけんのなら、やるか。2人のためにも」

「死ねやぁっ!」

「我が全てを滅ぼそう」

「だからさぁ、2人仲良く協力して戦ってくんなきついんだよ。操られてもその仲なんかよ」

何でか分からないけど実はかなり肉弾戦ができる丹は分かるが、吹の攻撃も結構痛い。吹は肉体鍛えてるわけでもない女子だぞ。きっとそこは操られることにより上がってんだろう。嫌だ。

「俺の身体大丈夫かな」


「操る相手全部取られてんなぁ。3人目?ただでさえきついのにこれやっていいかな」

「早く倒してあの操るのも解除させる」

「あなた自身の火力そんななくて、勝てないのは分かってるでしょう。投降してください」

アユタラ対六道姉妹。遠距離でじわじわ削っていってる。

敵はそんなに強くない。ただ強い人を操って味方にするから強いだけで。

そしてその人が全部日向のもとに行ってるからこの戦いはかなり六道姉妹優勢になっていた。新しく操る人を増やすと前のを解除しないといけない。そしたらあのかなりの火力を持った丹やブラッドが敵対するから外せない状態である。3人目を操るとそれはそれできついらしい。

「これ割かしどうしようかな」

振る舞ってはいるが、実際戦うのはものすごくきつそうではあった。ここからどうやれば打開できるかを、アユタラは考えていた。


「早く行かないとですよね。まさか近くにいるとは思いませんでしたから」

「何を思ってどう知り合ってなのか、ちょっと分からないけど」

「急がんと」

こちらは新潟県&富山県組。丹に連絡をしたあと、早くその場所へ行こうと疾走中。

「にしても無駄にでかいですよねここ。よくそんなにデカい土地を用意できますよ」

「人を操られる力あるんなら、操って不当に契約してなんて方法で集めたんやろうな」

「同感。相手を操りゃ簡単だよ、犯罪だけど」


「はぁ……はぁ……」

「死にやがれ!」

「消え失せろ!」

「無茶しすぎですよ。こんなにとって……」

あの謎に高い火力で襲ってくる2人の攻撃をずっと吸ってた日向。かなりギリギリの状態である。

「私達も」

「いいから」

「でも……」

「変わったところで対処できるわけじゃないだろ。その武器じゃ」

2人の武器はどちらも遠距離。防御なんて、あんまり考えなくて良い武器。ならと日向が頑張ってる。ブラッドに前言ったがやっぱり自分のことを大事にしない。

「ようやく見つけました」

「その傷、激戦やったんやね」

「それ大丈夫!?それになんか敵対されてて……薬薬」

近づいてくる足音。そして来てすぐ聞こえてくる声。ようやく異少課が合流。そして戦いとなる。

「もう始まってたんか」

「この2人が襲ってくるから捌く。うん。盾持ちの俺に任せてください」

「壁も作るよ」

ボロボロになってた丹とブラッドの対処は盾持ちの翔、防御壁を生成できる蓮葉に移った。ただでさえこちらが優勢だったのが、本当にかなりの優勢になった。

「まずいですよこれは。逃げる……あれを相手に無防備に背中をさらけ出すと死ぬ」

「操って暴れさせるぐらいしか思いつかんけど」

「考えなくても、私が引導を渡しますよ。宗教なんか立ち上げて。そんなことをしなくても、最初から融和の道を行けば平和だったんでしょうに」

皆軽蔑。敵に同情なんかしない。粛々と依頼を達成する。


「あの2人がなんとかしてくれれば」

「ただがむしゃらに殴ってくるだけなら、俺の盾で何とかなるな。威力は確かにデカいけど」

盾持ちの翔は攻撃をせずに攻撃を防ぐのに相性が良い。翔のおかげで2人が割と無力化されていた。

「一旦どかして、あの盾の男を」

「ぐぅ……師匠」

そのため2人の操れる枠のうち、ブラッドの分を解除してその分で翔を操る。ブラッドは今まで操られていたせいで少しの間あんまり動けなくなってた。

「翔が操られちまったか。誰がどう対応する?」

「なら私がやりましょう。蓮葉。時間稼ぎの壁作りを続けててください。私が扉を作って翻弄させます」

「なるほどな。じゃあ、そこんとこ任せたで松木」

欠けた翔の部分代わりに松木が入る。2人息の合ったコンビネーションで操られ組の対応をしてた。

「おい大丈夫か吹。もう、解除されたっぽいが」

「我は少ししたら治るが、むしろ日向は大丈夫なのか?あまり覚えておらぬが、我が全力で襲っていただろう?」

「いーや。ちょっと痛いぐらい。こんなん今までいくらでもあっただろ?」

「はぁ……自分を大事にしないのは我ら共通だな」


「無理か……いや操りをまた変えればきっと」

「そんなことする前に、俺達が倒すよ」

アユタラへの集中攻撃がアユタラを襲う。武器の力も皆で使って全力で倒そうとしてくる。どうにか対応しようとしても、流石に避けきれない。逃げても追いつかれる。

「じゃあもう、適当なそいつに操るのを変えて少しでも戦況を変えれば」

「良くやってくれたな貴様。俺をその腐ったお前の仲間にしてこき使わせて。クソみたいなことした覚悟はできてるな」

丹への操りを解消して他のに変えた途端。丹が即座に移動して距離を詰める。同じ操られていたブラッドは動けなくなっていたが、怒りか何か気合いで乗り越えていた。

そして、今までこの憎むべき相手に傀儡のように使われたことへの憤怒が湧き上がり、全力で怒りの一撃をお見舞いした。

「丹……怖い」

「我もビビッて……いやビビッてなどおらぬ。ちゃんと、我の部下のことを見届けなければ」

ここにいる全員が恐怖するレベルのオーラを放ったまま何度も何度も叩き込む。投降させる暇なく叩き込む。気づいたときには、戦いも全部終わって、そこでようやく来たのか丹はその場で動けなくなっていた。


「まさか俺が操られたなんて、俺なんかヤバいことしてたかも……」

「そういう能力だしいいよ。被害自体でてないから」

アユタラは倒し、ここでやることは終わった。後は帰って顛末を話して残りの処理を任せれば異少課の任務は終了となる。

「丹ー、とりあえず大丈夫か?」

「我も操られたのだし、我が奴にとどめを刺したかったが、今回は丹の番。活躍は譲ろう」

「まぁ……なんか俺のこと色々とバレちゃったなぁ。隠してはいたんだけど」

「話すにしても、まずは丹が動けるようになってからだな。それまでは俺たちここにいる。吹を見るに、そんなにかからなさそうだし」

動けなくなってた吹はもう普通に動けるようになってる。なら丹もそんなに待たない。

「私達がここにいるのは、よくないかな」

「石川県内で完結すべきことな気はするよ。そっち3人と違って俺達は関係も深くない。そんなのに話すような、内容じゃあなさそうだしな」

「では、私達は先帰りましょうか。警察署までの扉は開きますね。休むにしても、異少課のいつもの部屋で休むのはいかがでしょう」

丹の件はあるし、気にならないと言えば嘘になる。だけど俺達はそんなに仲良くなく、ほとんど知らない仲。大事な話を聞けるほど、仲いい存在じゃない。

「丹は大丈夫か?我らが安息の地まで運んでいいのか?あんまり無茶に動かすと、それこそ痛みやら良くないだろ?」

「運んでくれるならお願いブラッドに日向。動かすぐらいなら問題ないから」

「わーったわーった。扉異少課の部屋の前に接続とかしてくれないか?丹を抱えてだと長い距離はな」

「これでいけますよ。お疲れ様です」

「またなー」


異少課の部屋まで丹を運んで、能戸さんに起きたことを話して。これで任務の件は完了。

「これぐらい、我らにかかれば造作もないな」

「今回の敵はあんまり強くなかったしな。俺以外はそもそもあんま傷ついてないし」

「1人で受けるなど、全く何をして。2人相手に1人でできるほど守る能力持ってないだろうに」

「石川県内で完結させるべき、他の県巻き込むのはな」

「それにしても、丹のことが急に良くわからなくなったよ。俺らが知らない丹のこと、知っちまったら今までの関係が崩れちゃうんじゃないかなって」

「阿呆か。仲間なら、何があったとて受け入れるものだろうに。我ならそうする」

「そうだな、それに丹だし」

「言えておる」


「ふぅ……動けるようになったよ」

「よーし、それじゃあ話し合いしよっか。丹のこと、ちゃんと教えてね」

「心配はせんでもここで何か言ったからと言って我ら丹を受け入れる。我は高潔な吸血鬼だからな。部下のことを思うのが我だ」

「でも今回のは流石に丹やり過ぎ。1人であのアユタラ倒そうとしてたっぽいし、操られてたら終わってたよ」

「とにかく話すよ。俺が何であそこにいて、何をしてたのかを」


「といっても、ただ魔神教なんて怪しげなもん見つけたから、空いてる時間で調べて、問題があるなら消そうかと考えてたんだ」

「あの最近帰るの早かったのは」

「うん。魔神教に実際に潜入したりしてた。ラーメン屋巡ってたってのは嘘。2人が尾行してたことに気がついたから、適当な嘘でっち上げちゃった」

「それで、今日教祖室に入るのを実行しようと思って休み取ってたんだけど、任務の先も魔神教だなんて予想できないよ」

「我としては、天の導きだったのだろう。これが起きなければ、我らは丹が抱えてることも知らずにこれから過ごしていただろうから」

「それで色んな部屋を色々荒らして、所長室入ったらアユタラが悪だって証拠を見つけたから急いでやりにいこうとしたら、まさかの皆がいたんたよ」

「あの力は分からないけど、あれで倒そうとしてた?武器の力は変わってないんだよね」

「ああ。武器の力は回復させるやつであってる。だから、あのパンチはただの」

「パンチにして、るんだよな」

「それでもう自分のことは考えずに倒してたよ。皆がいなかったら特に」

「とにかく、そんな感じ」

「それで、何で魔神教なんか?」

「その理由はね……いや、ちゃんと伝えておかないと」


「俺の家族の話って、したことなかったろ?」

「俺の両親は、怪しい宗教の信者なんだ。どんな宗教かは知らない。聞きたくもない。でも、まともな宗教じゃないのは確かだった。神様なんて適当なことをでっち上げて、それらしい戒律を守らせて。子どもながらろくでもないとこだってのは分かったよ。だからだな。俺はそれに反発してゴミ宗教を根絶やしにしようと思ったんだ。だから怪しい宗教を調べて、それが全くまともじゃないのなら壊していってたんだ。魔神教も怪しかったからやった」

「それって、その話じゃあ魔神教以外も」

「うん。今までも複数潰してる。教祖とか色々しばいて、そして証拠集めて警察に連絡して。前の吸血教も犯人が逃げた後捕まってたけど、それは見つけてボコしたから」

「丹……我らに黙ってそこまで……」

「あんまりいい話じゃないから。話したくなかったんだよ」

「それにしても、未だそのカルト宗教入れられてるのか?それとももう無くなってるのか?」

「壊した。俺が。それが最初の壊滅だったよ。ほんとに神様を私物化して勝手に言い張って……腐ってたとこだった」

「でも、そこは良かった。今の丹は、もうその宗教からは抜け出して、それでもまだ他の宗教もけそうと、頑張ってるってことだな」

「まあここまで聞いちゃったら一蓮托生、手伝うよ丹の事。人手は多いほうがいいでしょ?」

「我も無論。我はここまで聞いて手を出さぬ薄情者にはならぬ」

「2人らしいね。ブラッド、日向。受け入れられないのも視野には入れてた。勝手に暴れ回ってたみたいなものだから」

「悪を片付けることで非難される言われはない」

「そうだな。ブラッド」

「へへっ、やっぱりうれしいや」

「じゃあ我らの新しい門出を祝して、ハイッ」

3人でハイタッチ。対カルト宗教のチームができた瞬間だった。


「新潟県の、ようやく立ち直れたんだな」

「でもよく立ち直れたな。前見た時は結構時間経ってたにも関わらず死んだ目をしてたから。それほど前に大事な人だったんだろうけど」

「僕はあんまりそこの関係分かってないですけど、よかったってことですよね」

後日、富山県、岐阜県、愛知県といった対アンデス団スパイチームで話し合いをしていた。

今回の議題は新潟県異少課のこと。俺達が追ってるアンダス団スパイにより大事な人を殺された人たちのこと。

「伝えないとダメだと思ってて、どう伝えようかと動いていたんだよね、箕乃が」

「新潟県には異少課のスパイがいないことは分かってたし、ここの2人なら他の異少課メンバーといった仲間も疑えるだろうから、話すこと自体は問題ないね」

東さんも西さんも、お嬢様のためならどんなことでもしていた。それこそ私情を挟まず。

そんな人たちならやれそうではある。

「でも、だから悩んでるんですよ。だってもう立ち直れただけなのに、今南さんの死が事故なんかじゃなく殺人だったなんて言ったらどうなるか」

「特に東さんは、あれだけ引きずってた方でしたから」

どうなるか。少なくとも冷静ではいられないはず。復讐に燃えるだろう。たとえ自分を犠牲にしようとも動くだろう。

少なくとも、今のようやく立ち直ったところを失うことになる。

「だからなんだ。伝えるべきだよ。いつまでも隠し通せることかも分からない。それに、そういうことは被害者には知る権利がある」

「それこそたとえ残酷でも、殺されたのにそれにも気づかずに生きるなんて、それこそ酷いですよ」

悩んでいた富山県に、びっしりと反対意見を伝えてくる愛知県の人たち。被害者である以上、誰かに殺されたってことは知らないといけない。隠してちゃ駄目だと。

「でも、それ伝えても良いことにはならないよね。知らないままでいたほうが、あの子たちのことを思うと」

「思うとなら、なおさら伝える。お嬢様大好き人間だよ。お嬢様を殺したやつを捕まえて制裁して、そうする権利がある」

「難しい問題だけど、結局は知ることになると思うの。だってそのスパイ捕まえたら、スパイが何をしたのか過去のことも調べて、そして……だったら、早いうちに伝えておくべきに、思えるの」

みんなの意見は隠し通さず伝える。そうなった。知った時どうなるかは分からないが。それでも知らないといけないと。


「珍しい組み合わせやね」

「何の用かも分からず呼ばれましたが、全く心当たりがありません。なんでしょうか」

後日、新潟県の2人を対アンダス団スパイのチームに入れる話し合いが行われた。新潟県の2人に、各県から代表が1人、神代新、任田沖、明石湊、そして飛田箕乃の6人で。

「この話は、結構大事な話なの。聞いたら、もう聞く前には戻れないほど、そんな大事な話。あなた達か慕う、西蓮葉さんの話」

「っ!早く聞かせてください」

「どんな些細なことでもええ。とにかく、ウチらは聞かねばならんのや。菊花お嬢様のことなら」

「再度聞くけど、本当に聞くので良いのね。この話はいい話なんかじゃないの。むしろ嫌な話なの」

「お嬢様を侮辱するような話だとしたら、私が貴様を消す。ただそうでないのなら、勿体ぶらずにさっさと話せ」

「どんな話でも覚悟はできとるよ」

「そう。分かった。なら話すね」

2度に渡って聞き直した。でも、聞くという選択肢しかない。やっぱりこうはなるだろうと感じてた。

「南菊花さんの死亡理由は、魔族に襲われて崖から落ちた。だけど、その魔族が偶然じゃなくて必然だったみたいなの」

「おい、本当なんだよな。だとしたら誰だ。言え」

「松木、静かにせんと。犯人を伝えようにも伝えられんよ。その事を聞かないといけんのやろ」

人が変わったかのように目から光が消え、敵をみるかのような目で強引に近づいて脅してた。胸ぐらをつかむギリギリで。

「奴が誰なのかは、まだ分かってないでも、それがどんなとこまでかは分かる」

「アンダス団。名前は聞いたことあると思うけど、」

「そこの異少課に紛れ込んで、譲報を抜き取る作業をする。スパイがいる。そいつ」

少し長い沈黙。まともに考えることもできなくなったか。


「異少課にスパイが入ってるとか、色々とあったけどまあいい。それで、そいつが誰なのかが分かってないのか」

「うん。今までもスパイ関連色々とあって、それで3人までは絞れたけど」

「その人数なら全員に探り入れりゃ分かるだろ。それこそ尾行したり、携帯でもくすねて情報解析しりゃ」

「でも、こっちがスパイの存在に気づいてることを悟らせたくないの。確保できたら良いけど、できなかったら?バレそうになって同じ県の異少課を人質に取るとか、最悪殺して戦力低下させるとか、やりかねないよアンダス団なら」

「だからって、今のまま放っとくんか?誰がスパイか確定させることもせずに?あんまり時間はないんやろ。スパイがいる間は、異少課の事全部バレとる。はよ何とかせんと」

新潟県の2人とも他の皆とは違いさっさとスパイを見つけて捕まえよう派。敬愛するお嬢様を殺された彼らに、そのスパイが苦しまずに過ごしてるのが許せないから。

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異世界対策少年課 読みやすさ重視版 時の花 @tokuSsenpan

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