第18話「旅立ち」
『神威の指輪』と『チャームペンダント』のおかげで俺の防御力は完全に近いものになった。これで、ダンジョンに入ってアフロディーテに迷惑をかけることも無くなるだろう。後は攻撃力を高くするアイテムが欲しい。
俺たちは攻撃力が高いアイテムの入手と家を買う鐘を稼ぐために、目的に合ったダンジョンを探す事にした。冒険者ギルドに行き受付嬢のナディアに相談する。
「それなら、ここが良いと思うわ」
ナディアは地図を指で示した。
「これって、隣国との境じゃないのか?」
「でも、古代文明の強力なアイテムが手に入るわよ」
「古代文明?」
この世界には、太古に優れた文明があった。ワイバーンが空を飛び回り、アースドラゴンが地を徘徊する世界だった。人々は強固な外壁に籠もり、高い塔を幾つも造ってバリスタという巨大な弓矢を配置した。ワイバーンの襲撃に備えるためだ。
今では失われた高度なアイテムを使い、この世界の覇者として君臨していた。それが何故、滅んだのかは記録が無いので分からない。そして、その世界は地中に姿を消した。時折、地中深くから痕跡が見つかる。それが『古代遺跡』と呼ばれるダンジョンだ。
「問題は出てくる魔物なの」
「どういう意味だ?」
「通常の魔物では無いのよ。文献によるとロボットと呼ばれたらしいわ」
「ロボット?」
『旦那様。それは地球にあったロボットと同じものです』
『ああ、あのロボットか。異世界に来ているから違うものかと思った』
『全く同じ物ではありませんが、基本概念は同じです』
「そのロボットが魔物なのかい?」
「正確には魔物では無いわ。襲ってくるのではなく何かを守っているようなの」
「それは物とか場所とか?」
「そうね、特に場所が多いそうよ」
ナディアは少しユーゴに顔を近づけてから言った。
「あと一つ、このダンジョンのアイテムは非常に珍しい物があるのでとても高値で取引されるわ」
「そうか、それは楽しみだ」
「残念だけど、そう甘くはないわよ。発見されてから結構な年月が経っているから、ほとんどのアイテムは取り尽くされているわけよ」
「なるほど、発見する方が大変だってことか」
「アフロディーテ、ここでいいだろう?」
「はい」
「ありがとう、ナディア。このダンジョンに行ってみる」
ナディアはユーゴにメモを渡した。
「ダンジョンの場所と近くの村の所在地よ」
俺とアフロディーテはナディアに礼を言ってからギルドを出た。小腹が空いたので食堂に入った。ジュースと甘い物を頼んだ。
「旦那様、先ほどのダンジョンのことですが」
「古代遺跡のことか」
「はい、ロボットが出ると言っていましたが、年数が経っているのですから本来ならロボットはいなくなるはずです。それでも、まだ出現するのならロボットを製造する場所が有るのかも知れません」
「そうか、その工場はまだ発見されてないのか。それなら別の部屋も発見されてない可能性があるな」
「そうです。研究室とか、ロボットの保管庫とかも有るはずです」
「ひょっとしたら、宇宙船とかも見つからないかな」
「そしたら、宇宙にでも行きますか?」
「それはいいな」
俺たちは夢を膨らませた。いずれ、アフロディーテと一緒にこの大陸中を見て歩きたい。古代遺跡ダンジョンはその第一歩だ。俺たちが世界に羽ばたく一歩にしたい。
『アフロディーテに言おう。旅立ちの時だ、けじめを付けるぞ』
俺はアフロディーテを連れてアクセサリー屋に行った。
大きな宝石がついた指輪を選んだ。アフロディーテも綺麗だと言っていた。
街中を通る川沿いに、沢山の花が咲く公園がある。俺はアフロディーテと並んでベンチに座った。平日の午前中なので辺りに人はいない。俺はポケットの小箱を取り出した。立ち上がってアフロディーテの前に立つ。
「アフロディーテ、俺たちはこの異世界に来て日が浅い。まだ見知らぬ土地がたくさんある」
「そうですね、旦那様」
「今度いく古代遺跡ダンジョンはこの国の国境近くにある。そのダンジョンを攻略したら、そのまま旅に出ないか?」
「それは良い考えです」
「その前に、これを受け取って欲しい」
俺は小箱を空けて指輪を見せた。
「これは、さっきの」
「アフロディーテ、俺たちは正式に結婚していない。だから、改めて言うよ」
俺は大きく息を吸って気持ちを落ち着かせた。
「アフロディーテ、正式に俺と結婚してくれ。これからの俺たちの旅を一生お前と共に有りたい」
俺は指輪を取り出してアフロディーテの手を取る。そして、その細い指に嵌めた。
「旦那様、ありがとうございます。とても嬉しいです」
「うん。待たせてごめん。これからは正式に俺の妻だ。宜しく頼むよ」
俺はアフロディーテに口づけをした。長い時間が経った。俺たちは時を忘れていた。
そして、その夜は街一番の高級宿に泊った。新婚初夜の宿に相応しい宿にしたかった。
俺とアフロディーテは翌朝に古代遺跡ダンジョンに旅立った。
「アフロディーテ、新婚旅行みたいだな。よし、行くぞ」
「はい、旦那様!」
アフロディーテの濡れた瞳が朝陽に光った。俺はアフロディーテと手を繋いだ。
「いつまでも、この手を離したくない」
「はい、ユーゴさん。私も同じ気持ちです」
朝陽が俺たちの背中を照らす、まるで後押しをするように。
完
神様に貰った異世界ナビゲーターは俺の理想の嫁でした! 生名 成 @ikina-sei
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