第17話「スーパーレアアイテム」
帰還の魔法陣を使い、全員で入り口まで戻った。俺たちの競争相手だった冒険者たちが近づいてくる。
「俺は冒険者パーティー『青龍の翼』のリーダーをしているクラップスだ」
同じく……、という具合に全員の自己紹介を聞く。
「ユーゴだ」
「アフロディーテです」
クラップスたちが横一列に並んで一斉に頭を下げた。
「ありがとうございました。命を助けて頂いて感謝しています」
「あ、いえ。どうも」
予想して無かった彼らの行動に、俺は戸惑った。
「お礼は不要です。冒険者として当然の行いをしたまでです」
「そうだ。冒険者として当然の行いなんだよ。気にしなくていい」
俺はアフロディーテに便乗した。クラップスたちは何度も頭を下げて去っていった。
「やあ! 君たち、ご苦労だった。良い物が見つかったか?」
「はい、レアアイテムを入手しました」
俺は人の目を気にして、わざと詳細を言わなかった。そして、周囲に気配りもせずに聞いてきた第一王子の迂闊さを危ぶんだ。
競争相手のクラップスたちが、どんなアイテムを入手したかは知らない。
でも、彼らはダンジョンボスの吸血鬼エリザベスの眷属になっていたから、ボスの宝箱は入手していない。勝算は充分あると思っている。
「殿下、お話しは城に戻ってからにしてください。さあ、君たちもついて来てくれ」
俺たちは王子と一緒の馬車に乗って城に向かった。
俺とアフロディーテが並んで座り、王子とダットン隊長が一緒に座る。
馬車が動き出して、暫く後の事である。
ダットン隊長が言った。
「馬車の中なら聞いている者はいないだろう。大丈夫だと思うから、ユーゴ殿話してもらっていいぞ」
俺は小さく頷く。
「わかりました。それでは、ご報告だけ致しましょう」
王子とダットン隊長は少しだけ、身を乗り出した。
俺は小さな声で話した。
「結論から言えば、スーパーレアアイテムを三つ入手しました」
「おお! それは上上」と王子は笑顔になった。
「お手柄だ。ユーゴ殿、アフロディーテ殿よくやってくれた。感謝する」
ダットン隊長は素直にお礼 を言う。
「それで、何を入手したのだ」
相変わらず、感謝も労いもせずに自分が知りたい事だけを聞いてくる第一王子にため息が出そうになる。
『よく、こんな人にダットン隊長のような出来た人が従っているな』と俺は思った。
「まず『蘇生の宝珠』」
二人は驚いた。
「国宝ではないか!」
「正にスーパーレアアイテムだ」
驚いて顔を見合わせている二人を置いて、俺は続けた。
「次に『神威の指輪』」
「それも国宝級のアイテムだ」
王子は首を縦に二度振った。
「うむ、大したものだ」
ダットン隊長も頷く。
「後一つは『チャームペンダント』です」
「そうか」
王子はそれだけを言った。
「充分良い物ですぞ、王子」
「そうなのか?」
「国王が魅了されるような事が有れば一大事です。だけど、チャームペンダントは魅了を完全にレジストしてくれるのです」
「そうか」
王子は興味がなさそうだった。
「その他にレアアイテムとコモンアイテムが、十五点ほど有ります」
「わかった。城に帰ったら全部見せてもらうとしよう。二人とも本当にご苦労だった。改めて礼を言う。ありがとう」
「礼には及びません。契約通りの仕事をしただけです」
俺は静かに頷いた。
城に戻り、王子の私室に入る。城の中ではここが一番安全なのだろう。前回もこの部屋で話した。
「じゃあ。このテーブルの上に置いてくれ」
王子の言う通りにテーブルの上にアイテムを並べていく。全てを出し終えてから、王子とダットン体長が一つ一つ吟味していった。
俺たちはただ黙ってそれを見ていた。
「王子、やはり『蘇生の宝珠』です。これに勝る物は無いでしょう」
「ダットン、やはりお前もそう思うか」
「これで王子の勝利は疑いないと判断します」
「うむ、ではユーゴ。これを貰うぞ」
王子は『蘇生の宝珠』を持ち上げた。
「はい、わかりました。お持ちください」
「ダットン、褒美を」
「ユーゴ殿、アフロディーテ殿。約束通りアイテムを一つずつ選んでくれ」
俺たちは予め打ち合わせていた通りに二つのアイテムを選んだ。俺が『神威の指輪』でアフロディーテが『チャームペンダント』だ。といってもアフロディーテが装備する訳じゃない。両方とも俺が装備するのだ。
アフロディーテが教えてくれたのだが、実は『チャームペンダント』は魅了だけに限らず『精神干渉魔法』の全てを完全無効化するのだ。その能力故に、スーパーレアアイテムなのだ。魅了だけの無効化ならスーパーレアアイテムにしては能力が足りない。現に、王子は『チャームペンダント』に興味を持たなかった。
アフロディーテは俺を攻撃できない。だから、アフロディーテにとって一番恐れる事は、俺が敵の術中に落ちる事なのだ。『神威の指輪』は最上級の耐性があるものの完全では無い。能力の差によってはレジストできない場合がある。だから、俺たちは『チャームペンダント』を選んだのだ。
そのあと、ダットン隊長が合図をすると皮の袋を持った従者がテーブルの近くまで来た。そして、俺の目の前に皮の袋を置いた。
「ドス」という重い音が聞こえた。
「約束通りに金貨百枚だ。数えるといい」
王子はそう言って、用は無いと言わんばかりに自室の奥にある部屋に入った。
「二人共この度は本当に世話になった、ありがとう。疲れているところを申し訳なかった。帰ってゆっくりと休んでくれ」
「では、失礼します」
と言って俺たちは城を後にした。
金貨はアフロディーテが収納した時点で数量が分かるので数える必要は無い。
『間違いなく百枚あります』とアフロディーテから聞いていた。
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