【短編】語り合う相手
奏流こころ
とある2人の会話
彼と、対面にいる彼女は、互いに銃を向け合っている。
緊迫する状況、張り詰める空気。
彼の額から、つぅーと汗が流れる。
彼女もまた、首筋に汗が流れた。
「裏切り者…」
彼女は言った。
「お前こそ…」
彼は言った。
引き金に力を入れようとしたその時ー…。
※
「突然間に入って来た子供が犠牲になるなんて悲しすぎるじゃん!」
「そうだよな」
「棒読みで同意しないで!」
「そう?」
放課後の教室で語り合う2人。
頬杖をついてダラけ気味に聞いている男子生徒と、熱量込めて語る対面に座る女子生徒。
「来週どうなるのかな…死んでないよねあの子」
「見たら分かるよ」
「ちょっとは予想してよ!」
「あはは」
楽しそうに語り合う2人を、クスクスと優しく見守るクラスメイト数人。
教室にはあたたかい空気が流れた。
「じゃあ次はあのドラマなんだけどさ」
「また明日にしない?」
「なんで?」
女子生徒は明日は休みだから会えないじゃんと目で訴える。
そんな事を知ってか知らずか、男子生徒は気にもしないでこう言った。
「明日か明後日空いてるなら会わない?」
「えっ…」
ポカンとする女子生徒。
すると男子生徒は彼女に軽くでこぴんをした。
「何するの!?」
「アホ面してんなーって」
「むう」
けらけら笑う男子生徒。
「明日も明後日も会えるけど…?」
おずおずと女子生徒は言って俯いた。
「ふーん」
口の端を上げて男子生徒はこう言った。
「なら2日間よろしくな、あとで連絡する」
「ちょっ、えっえっ?!」
「さいなら~」
頭も心も混乱する女子生徒は慌てて彼を追う。
「あー!待ってよー!」
そんな2人を見守っていた数人のクラスメイトたち。
「可愛いね」
「楽しそう」
「羨ましい」
「絶対好き同士だって!」
「分かるー」
幸せをお裾分けしてもらってごちそうさまでした、と皆が思うのだった。
完
【短編】語り合う相手 奏流こころ @anmitu725
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます