いなかの歯医者さん

晁衡

いなかの歯医者さん

 俺は今までずっと都会ぐらし、転勤でも小都市ばかりだ。

 いなかの体験はそれほど記憶にない。

 俺は、新潟県西蒲原郡のとある街に赴任した。まだ独身の頃である。


 独り暮らしと甘いもの好きがたたって、奥歯に痛みを感じるようになった。舌でその部分に触れると穴が空いてるようだ。

 かなり虫歯が進んでいるみたいだ。


 昔から歯科医院は好きでない。

 歯をドリルで削られる感覚が嫌い。だけどほおっておくわけにも行かない。

 それで、同僚からとある近くにある歯科医院を紹介された。

 笑いを浮かべながら。


 いやな予感がする。

 その歯科医院は住宅街のはずれにあった。

 歯科医師は40代だろうか。

 なんてことない感じで診察をうけ、治療と並行して歯磨き指導と歯石の除去を受けるという診断だった。

 次回は歯磨き指導と歯石除去の予約をして、最初の診療は終わっった。


 何も変じゃないじゃんか。

 都会もいなかも変わりない。


 だが「ホラー」の始まりは2回目の診療に現れた。

 恐ろしい体験だった。


 今日は歯科衛生士さんが対応するとのこと。

 ぱっと見て美人であった。身長は160センチくらいだろうか。失敬とは思うが胸も大きかった。

 自己紹介されて、俺は椅子に座る。


 その歯科衛生士さんは、椅子を倒すと私の頭の方で施術する形になった。

 椅子を倒され、私の顔の上に紙のようなものを置いて光はわかるが周りは見えない。


「では歯をて行きます」


 ムニュ?

 なんだ額の上のこの感覚?


 胸の大きな歯科衛生士さんが、私の額の上にオッパイを乗せたのだ!


 UOOOOOO !


 なんじゃこりゃ!

 やばい、股間に血流を感じる。彼女に丸見えになるからガマンだ。

 やばい、ヤバすぎっる!


 うごうご、おれは椅子の上でもがき苦しんだ。


 どういうプレイだよ!

 西蒲原郡ハンパねぇええええ


 これがいなかのクオリティか。俺は悶絶しそうになった。

 歯科衛生士さんの歯のチェックはまだまだ続く。


 一旦うがいで口をすすいでプレイ、いや磨き残しチェック再開だ。

 なんてこった。


 30分程度の恐怖の体験は今日は終わった。

 次回から数回、彼女が歯石除去をするという。


 なんて恐ろしい。


 俺は歯科医院で歯磨き指導など何回も通うのが面倒くさいと思っていた。だか今日から心をあらためた。

 ちょうど人事異動の希望を取る時期だった。俺はいなかを離れ、もっと街の事務所の希望を書こうとしていた。


 俺は決めた。

 人事異動希望調書にこう書いた。。


「持病の通院でこの街にかかりつけがあり、治療が終わるまでこの事務所を希望します」


 いま、思い起こすと歯科医院で味わった人生で一番恐ろしい体験だった。股間への血流を防止する戦いだった。



 終わり


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

いなかの歯医者さん 晁衡 @monzaeshi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ