第46話 休暇だけど休暇じゃない

 朝、窓から差し込む日の光で目が覚めた。そういえば久々にこんなにぐっすり眠った気がするな。いや、俺は一週間寝てたはずだ。


 でも、気絶して眠っているのと自分でベッドに入って眠るのは違うんだよ。気絶ってさ体が疲れてもうダメってなったら強制的に睡眠させられるようなものじゃない?だからスッキリしないっていうかなんというか……あー難しい!よくわかんないけどそんな感じ!


 さて、時刻は……8時……紗理奈!仕事遅れてる!


 ベッドを見ると気持ちよさそうにぐっすり眠っている紗理奈がいる。これじゃあ当分起きなさそうだな。気絶してる俺の看病とかしてくれてたみたいだし疲れてるだろうな。このまま今日は寝かせといてあげよっと。


 メイド長に紗理奈の状態を話しにいくとするか。


「メイド長、ちょっといい?」


「おひさびさです。竜馬様どうなさいました?」


「紗理奈の事で、俺がちょっと怪我して気絶したんだけど、その時ずっと付きっきりで看病してたらしく疲れて今熟睡中です」


「竜馬様大丈夫ですか!」


「俺じゃなくて紗理奈の仕事を休ませていい?」


「紗理奈でしたらご自由にお連れください。専属メイドですので何もおかしくありませんよ」


 ニヤニヤしながらそんなこと言われてもねえ。俺は返事をしようとしたものの声が出なかった


「は、はあ」


「では紗理奈は今日は仕事休みね。竜馬様がそう言うんだったらしょうがないわ」


「ありがとう」


 俺は急いで部屋に戻る。今回は転移を使わなかったから、時間かかっちゃったな〜何しようかな?そういや俺の部屋って簡易キッチンみたいなのってあったよね。


「確かこの辺」


 ビンゴ。この辺の部屋って全然使ってないな〜だって余分な部屋ばっかりなんだもん。おもちゃ部屋とかいらない。正直埃かぶっててもおかしくないんじゃないか?


ガチャッ


 うん、綺麗。誰が掃除してくれたんだろう?保存魔法でも掛かってんのか?


 じゃあ、何か作ろ!


『シア、料理のレシピなんかいいなんかいいのしってる?』


『私のおすすめですか?オムライスでかね』


『オムライスいいね!レシピ教えて』


『はい』


 俺はシア(ローレシア)に教わりながらオムライスを作った。今日の朝食のつもりだ。


 出来た!


「サリナ起きてるんかな?」


 起きてない。


「もうちょっとか」


 そろそろ起こしてもいいかな。


「紗理奈起きて!」


「う……」


「紗理奈」


「うん?」


「おはよ」


「うん、おはよう」


「もう10時だよ」


「え!仕事!」


「紗理奈は今日強制休暇ね」


「はぇ?」


 うん、うん驚いてる。いい反応♪


「朝食食べよっか。冷めちゃう」


「でも……」


「ごちゃごちゃ言わんで食べろい!」


 なんか変な口調になった。どうしたんだろう。じゃあ、いただきます。


「美味しい」


 よかった。美味しいって言ってもらえた。


「これ食べ終わったらギルド行くよ。ちょっとしでかしたことあるから」


「うん、竜馬の休暇って休暇じゃないね」


 自分の自由なことをするのが休暇だからいいんだよ。というのは押し込めて、緊急だからと答えておいた。


食べ終わったので行くか。時間もそこそこだし。


「転移」


「る〜か〜さん」


「だんだん慣れてくるよ」


 慣れないでほしい。こっちが楽しくないから。


「で今日の要件は?」


「スケルトンドラゴン」


「がどうした?」


「クソ強かった」


「は?」


 しばらく沈黙が続いた後初めに口を開いたのはルカさんだった。


「スケルトンドラゴンと戦ったの!君はアホ?バカ?」


 俺はアホでも馬鹿でもない。この後俺はその時の状況を説明した。


「なるほどね。魂と魔力さえあればスケルトンドラゴンは召喚できるってことか。で、今回は魔力と魂に余裕がありすぎてもう1匹出たと言うことですか」


「そうですね」


 この後は、事件の被害予告を立てていた。スケルトンドラゴンという強い魔物を呼び寄せられる可能性がある今、世界が滅んでもおかしくない。


 こんなつまんない話をしながら1日を終えることになってしまった。


「……ま、…うま、竜馬!」


「え?」


「起きた。よかった〜死んじゃったかと思って心配した」


「え〜と、あなたは?」


「僕?一応先代の大魔王の健人だ。今日はちょっと話がしたくて呼ばせてもらった」


「健人さん、話とは?」


「早速本題に入らせてもらうね」


 そう言って健人さんは話し始めた。


 今の魔王がいる領域は本当の魔王領ではない。本当の魔王領は違うところにある。行き方は分からないけど。一度だけ大悟と散歩してた時に行けた。帰り方は転移で帰れる。だけど行くのは転移ではできなかった。なぜならその場所は地図に載っていない挙句魔法阻害の結界が張られてるから相当技術を持っていないと入れない。健人自身今、魔王領の場所で育った為よく分かっていないと言っていた。魔王領は本当はもっと大きく、魔物ももっと強い。それを知っているのは地下にあった隠し部屋に一度だけたどり着けたから。どうやって行っていいのかもわからないし、行けたのは5歳の時だったからあまり覚えてない。ただ、何かの認証みたいのがあって血族だけ入れるようになっているのだけは覚えている。そう言っていた。


 そしてここからが本題。あの領地の時間は止まっている。止まってしまった。それを動かしてほしい。これは魔王たちではできないこと。人間と組み、人間の知識を使って時間を動かさなければならない。


 大悟達には沢山助けてもらったから、この依頼を受けようと思う。


「正直これは大変な仕事だと思う。でも、魔王領の為だから誰かにやってもらわなくてはならない。だから君を選んだんだ。この仕事を受けてくれたら今回人間界で起きていることを止める方法を教えてあげる。けど、契約を交わすことになる。魔王領が滅んだら俺が損する。期限は君の人生が終わるまで、終わったらこの止まった時間の世界に呼び出して契約解除するから」


「分かりました。契約しましょう」


「ありがとうございます」


 俺はそう言って健人さんの出した謎のボードに著名した。今回は竜馬と記した。


「ありがとう止まった時間から解放してやってくれ」


「わかりました。早く解放します」


「じゃあ話すよ」


 そう言って話してくれた。事件を起こした人物のこと、


「今回の事件関係者、主催者はステラ王国の王族だ。第一王子は無関係。他の国は巻き込まれだよ。どこかの国を倒したいだけだ」


「なんで第一王子は無関係?」


「それはこの考えに反対して幽閉されているから。使用人たちは第一王子に味方してるから不自由なく暮らしてると思う。だけど次期王の継続権はもらえないと思う。で、ステラ王国が狙ってるのはダイカ王国だよ竜馬、気を付けて。で、解決方法はステラ王国の王を暗殺すること。あの人間は秘密にしたがるから誰もあいつの作戦を知らない。今なら間に合う。やってくれ!これは俺のためでもあるんだ。君に迷惑をかけてばっかりなのにいい解決策が提案できなくてごめんね」


「大丈夫です。もうこの事件は終わりにしたいから」


「本当にごめん」


「大丈夫です。魔王領のこともちゃんと解決します」


「ありがとう」


「俺って帰れます?」


「そういやそうだね。あんまり魂と肉体を離しておくと女神様に怒られちゃうからね。返してあげる。目を瞑っててね」


「はい」


 俺はそう言って目を瞑った。次目を開けた時には自分の部屋に戻っていた。そして、時間は全く進んでいなかったようで全くと言っていいほど俺を心配そうにしている者はいない。ただ、紗理奈は気づいていた。いや、気付いた。俺の表情だろう。そして夜にと言うハンドサインまでくれた。


 優しい。

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元奴隷は異世界貴族に転生する 与那城琥珀 @yonasirokohaku

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