第3話
「…おっ、あったあった」
一度部屋に戻った俺は自分のベットの裏に隠していた小さいポーチを取りだした
ポーチの中身は園長に内緒で廃材回収をして貯めたお金が入ってる
最近は何も買ってなかったのと昨日の稼ぎで結構貯まってた
今日は何を買おうかを考えたがある事を思い出した。
(そういや今日は直接ここに来るんだった…)
いつもの広場だったら人込みで誤魔化せたけどここでこの金を出せば園長とほかの子供らに問い詰められて最悪没収されかねない
今日はもし大きめのポーチがあったら買いたかったんだけどなぁ…
実は昨日、いつも使っていた布袋が破けてしまって使えなくなってしまった
尖った鉄くずも入れていたせいか所々穴が開いていたし仕方ないけど代わりのものがないから今日広場で買おうかと考えていたけどここに来るなら下手に金を出せない
うーん…園長に買ってもらおうか…でも今日何も食ってなくて腹も減ってるしどうすっかなぁ…
…そういやあの袋ってあのゴミ捨て場にあったんだよな
今日は騎士団の人達が来るからあの大穴でいつも見張っているギャングもいないはず
あそこならもしかしたら代わりの物が見つかるかもしれない
(よし…今日も行ってみるか!)
今は園長が子供達に小遣い渡してる最中だろうしそれを受け取っていつものように抜けだそう
俺は小遣いを貰いに居間へ向かった。
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そして暫くして
「よし…やっぱり誰もいない」
俺は今あの大きな穴にいる
園長は騎士団の人達と話があるとか言ってしばらく園長の部屋にいるから問題ない
子供達はお菓子と普段食べない料理に満足してみんな昼寝している
それを確認し俺はいつもの裏口から抜け出して大穴へと向かった
そして今は大穴付近で何かを探している最中だ
来る途中で拾った長い棒で汚水に浮いてるゴミを漁っているが使えるモノは無い
「あーやっぱもう持ってかれてるか…」
まぁ騎士団の訪問日は事前に連絡はいってるだろうしそりゃその前に全部回収するか
でも積み上げられたごみ山の中に頑丈な袋があったのは大きな収穫だった
布製で昨日まで使っていた袋より大きめで状態も良かった
その後も何かないか探したけどもう目ぼしいモノは無かったし今日はもう帰るかな
俺は拾った袋を手にして園に帰ろうとすると
「…ケテ」
「!?」
昨日聞いた声がまた聞こえた
今度は昨日よりもはっきりと聞こえた
俺は振り返り大穴の辺りを見回すと俺がいる反対側の奥に丸いモノを抱えた男がゴミ山の上に倒れていた
俺は確かめようと大穴の先になる橋を渡って倒れてる人の所に向かった
慎重にゴミ山の上を歩いて近くで見てみると男はもう死んでいて男が抱えている丸いモノを見ると中に赤ん坊が眠っていた
「…」
俺は男が抱えてたカプセルを取り上げ赤ん坊を見た
カプセルはしっかり閉められてどうやって開けるかわからない
赤ん坊は苦しそうな様子はないし大丈夫なんだろうけど…
このまま園に連れて帰ろうにも勝手に抜け出したことがバレるしかといってこのまま放っておくとギャングが攫ってどこかに売り飛ばそうとするだろうしどうしよう…
…一旦いつも拾っている場所に行って考えるか、このままここにいたら危険だ
俺は赤ん坊が眠っている箱?みたいなものを抱えて取り敢えず家に帰る事にした
…あっ!そんな事すればしばらく外には出してもらえなくなりそうだ…
でも赤ん坊を外に放置するのはなぁ…どうしよう…
途方に暮れていると遠くから足音が聞こえて来た。
(ヤバッ!?まさかギャングがもう戻ってきたのか?)
もしそうなら流石にヤバい。もうヤケだ、このまま帰るぞ!
俺はなるべく足音を立てない様に孤児院に帰った
・
・
・
クロが大穴から去って10分後
身体中にタトゥーを入れた男たちが大穴へに着いた
「おい、さっきの話は本当か?」
大柄の男が横にいる漢に声をかけた
「ハ、ハイ!機関の連中が言ってるのを直接聞いたので間違いないっス!」
横にいた男は冷や汗をかきつつ騎士団が話していた内容を語りだした
内容は毎年行われる式典の最中に最上階で祀られている龍神の子…神子の一人を盗み出したという話
盗んだ班員は機関の男でかなり上の地位にいたらしいが犯行動機は謎らしい
この塔が建てられて以来初めての事で機関の老人連中は慌てながらも機関の兵士を総動員させて全階層の捜索に乗り出したようだ
それから1か月経ったが見つからずついに最下層の捜索に乗り出した
「…で、その逃走中の男がここにいるって事か?」
「ハイ!あの扉からは来るのは確実に不可能ですしそうなるとこのデカい穴以外くる方法は無いっス!」
「…確かにそうだな」
今日はやけに機関の連中が多かったのはそのせいか
もし先に見つけることが出来れば大きな借りを作れる訳だ
だが見つけても渡すつもりはない。
ガキの命をこっちが握って置けば奴らは何も出来ない
これで無理難題な要求も大人しく従うはずだこれで俺も貴族共の仲間入りも夢じゃない
そうと決まれば早速取り掛かるか
「野郎ども!この辺りをくまなく探せ!もし見つけられんかったら分かってるだろうな?」
「ハ…ハィィ!」
大柄な男にいた周りの子分たちは散らばり大穴周辺の捜索を開始した
(さてと…俺はここで監視だな)
こいつらは上の階層でしょうもない悪事でこっちに流れ着いた連中馬鹿ばかりで人一人殺せない弱い奴らばっかりだ
そんな奴らは力で屈服させれば従順になって何でも言うことを聞く
少しでも反抗的な態度を見せれば死ぬ手前まで痛めつければいい
最悪死んでも代わりはいくらでもいるしな
そういや俺の駒の中には馬鹿な親のせいで最下層に来たガキもいる
そいつらには別のシマから金品や食料を盗ませているが失敗して捕まって帰って来なかったガキも結構いたなぁハッハッハ
使える奴らは僕として生かしてそれ以外は嬲り殺して使える臓器を抜き出して闇市に売りさばいた
そうやって俺は他の奴らのシマを荒らす形で広げたからか敵が多い
俺はたとえ数十人で来ようが蹴散らせるが俺以外でまともに闘える僕が少ないせいで抗争に踏み切れないのがネックだ
強い奴はこっちが引き抜く前に他の奴らが高額で雇ってしまうせいでこっちは貧弱な野郎ばかり
運良く引き抜けた奴は特別な待遇でもてなして引き抜かれないようにしている
そうでもしなきゃいつか侵略された時にまともに対抗できず皆殺しにされる
…そうか、もしガキを見つけた時の要求に機関の騎士団の兵士を無償で雇える事も追加するべきか?
俺の悪名は機関の連中も把握してるだろう、上の階層に住ませろって要求は飲まない可能性が高い
そうなったら腕のいい兵士どもを雇ってシマを拡大した方が良いかもな
ここには使える駒が多くいるし後は侵略できる力があれば完璧だ
別のシマを牛耳っている連中を一掃してしまえばもうこの層は俺の物だ
クックック…今から楽しみで仕方がない
俺はガキを必死で探している奴隷たちを監視しながら薄ら笑いを浮かべていた
わだつみの子 @nagi7412
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