第2話
「ふぁぁ…」
翌朝
俺は上体を起こし欠伸ををしながら背伸びをした
周りを見ると子供たちはおらず居間に集まっているようだ
まさか朝飯中か!?急がないと!
俺は起き上がり横に置いていた服に着替えて居間に向かった
「お!ようやく起きたか、おはよう」
スーツにエプロンをした白髪の男が俺を見てそう言った
「おはよう…あれ?」
居間を見ると子供たちはそれぞれのグループで遊んでいた
「あの~朝飯は…」
「…スマンが無い」
「…え?」
マジか…このリアクションは誰かがオレの分を食べたんだろうな
一体誰だ?
「だ、誰がオレの分を?」
「聞いてどうする?」
「いや…別にどうもしないけど…」
「…後で何か食うもん買ってやるからそれで機嫌直せ」
「え!?マジで!」
「ああ、今日はここまで来てくれるから広場に行かなくて済むしな」
「え?」
マジか…それだと今日は外出れそうにないな
でも大穴の方に行きたいしどうしよっかなぁ…
「でも何で?」
「ん?ああ、確か人探しとか言ってたな。詳しくは知らんが」
「へぇ…」
もしかして昨日の声の人かな?
じゃあ上の階層から落ちてきたとか?だけどあそこから出てきて生きていた人なんて見た事無い
ギャングが居ない時を見計らって行ってみたけど人の死体が汚水に浮かんでいるのを何度も見た
汚水を飲んでしまったのか肌が緑色に変わっていて異臭は遠くからでも匂ってきて最初の頃は何度も嘔吐した
「カイ」
俺が考えてしていると園長が声をかけた
「どうかしたか?」
「え?いや、何でもない。あっそういや準備してなかった!」
俺はそう言ってまた寝室に向かった
「…」
園長は不思議そうな顔でカイを見ていた
・
・
・
ザッザッザッザ…
白銀の鎧を兵士たちは列を作り螺旋状の長い階段を下りていた
そして列の中心には大きな台車が二台あり食料と日用品が積まれていた
「ハァ…」
列の一番後ろを歩いていた鎧の男は溜め息をついた
「先輩、寝不足ですか?」
「ハア?あーそう言えばお前は初めてか」
「はぁ…」
「お前最下層がどんな所か知っているか?」
「…いえ、今まで第4階層で事務職をしていたので…」
「第4?一体何やらかしたんだ?」
「え?いえ、先週急に辞令が出たので…」
「マジか…お前も災難だったな」
「そんなに酷い場所なんですか?」
「そりゃそうだろ、上で重罪犯した罪人共が連れて行かれる場所だぞ?治安なんてあったもんじゃない」
「…」
「しかもその罪人共が作ったガキ共もギャングかマフィアか乞食になっていてもう手のつけようがない。」
「…ではあの食料や日用品は何ですか?」
「アレか?元々捨てる予定の食料と無料で引き取った中古の日用品だよ。アレを下で商いしているケチな売人に高値で売りつけるんだよ。そしてその売人は最下層に住んでる奴らに売って儲けてる。まぁ得してるのは俺たちだけでアイツらは何お得も無しで憐れなもんだよ」
「そうですか…」
「そういや先週機関の人間が龍巫女を攫ったって聞いたな。」
「あっそれは私も聞きました。」
「馬鹿だよなぁ、最上階の人間って一生裕福な暮らしが約束されているのに何考えてるんだろうな。」
「…そうですね」
「おい、そろそろ着くから静かにしろ」
隣で聞いていた男が耳打ちした
「へいへい、そういや防臭マスクはしてるか?」
「はい、周りに強く言われたので」
「そうか、じゃあ大丈夫か、でも頭の装備は取るなよ?」
「え?」
「お前…女だろ?違うなら謝るが最下層の奴らに見られると目を付けられるから気を付けろ」
「…はい」
「全隊止まれ!」
先頭を歩いていた紅い鎧を着た兵士がそう叫ぶと兵士たちはピタッと止まった。
「この扉の先は最下層だ!いつ何時襲撃されるか分からない!常に警戒態勢でいる事を忘れるな!」
「ハッ!」
「では開門!」
赤い鎧の男が腰に差していた剣を抜き扉の中心にある球体にかざすと球体が光りだし扉がゆっくりと動き出した。
そして扉の先には薄汚れたマントを被った男たちが横並びで立っていた。
「これから最下層に入る!常に警戒態勢を怠るな!では全隊!進め!」
点呼を合図に隊が動き出し最下層の世界へと足を踏み入れた
(!?)
最下層に足を踏み入れた瞬間新人たちは顔を歪めた
まず来たのは生ものが腐ったような匂い
鎧と防臭マスクをしても微かに感じた
まだ扉の前なのに新人の数人は下を向いてうなだれていた
先ほど話を聞いていた女兵士も憂鬱な気分になっていた
そして全兵士が足を踏み入れるのを確認した隊長は左手を上げた。
合図を確認した兵士は一斉に止まった。
止まった瞬間、目の前にいた男たちが近づいて来た
「いやぁ~今日も来ていただきありがとうございます!」
男たちは手をこねながらニヤ付ていた
この商人たちも元々上の階層で暮らしていたが罪を犯しここに落とされた
本来ここに落とされば上に帰る事は無理だが犯した罪がそこまで重くなかったり更生が確認出来ていれば金を払って上の階に行くことが出来る
だがギャングやマフィアの暴力組織は上の階に行く事は出来ないので窃盗や殺人・人身売買を平気で行う
特に子供を拉致して臓器を抜き取り裏ルートで儲けている
「それで…今日の品の方は…」
「それはいつもの広場で教える。」
「そ、そうですね!では準備はできているのでこちらにどうぞ!」
「ああ、こちらも準備が終わり次第向かう」
「は、はい!」
商人たちはそそくさと広場がある所へと向かって行った
商人が向かったのを確認すると隊長は兵士の方を向いた
「ではここから2部隊に分かれる!私が指した兵士は私に付いてこい!他は広場に向かうんだ!」
「ハッ!」
そして隊長は3人の兵士を指差し選ばれた兵士は列から外れた
「では選ばれた兵士は少ない方の台車を押して私に付いてそれ以外の兵士は広場へ向かえ!では行動開始!」
隊長がそういうと3人以外の兵士は商人たちが向かった広場へと進んでいった
「よし、ではこちらも向かう。私に付いて来てくれ」
さっきまで大きな声で点呼を取っていた隊長は穏やかな声そう言い広場と別方向を向き歩き出した。
「ハッ!」
選ばれた3人の兵士は台車を押しながら対象の後ろを付いていった
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