レインボー王国と魔法の木

雨虹みかん

レインボー王国と魔法の木

 六年生の新学期。今日は四時間授業で、早く帰れたから、親友の由希と学校の近くの公園で遊んでいた。その公園には大きなすべり台があるわけではなく、ブランコがあるだけだけど、いつもブランコをこぎながら楽しいおしゃベりをしたり、しりとりをしたりしている。

「春花!」

 急に名前を呼ばれて後ろをふり向くと、由希がわくわくした様子で木に指をさしている。

「見て見て!木と木の間に細い道があるよ!」

由布の指の先を見ると、たしかに道があった。大人は通れないくらいの細い道だった。私は不思議に思い、

「こんな道あったっけ?」

と言った。でも由希は気にせずに、

「おもしろそう、行ってみようよ!」

と走り出したので、私も由希を追いかけた。


「せ⋯せまい⋯。」

 道は思っていたよりも細く、道のりも長かった。少しうす暗くなってきて、気いたこともない鳥のような鳴き声が、『ゴロゴロヒュー』と鳴りひびいている。私は思わず、

「本当に大丈夫なの?」

と聞いたが、

「たぶん、大丈夫⋯かな⋯?」

と、あいまいな返事が返ってきた。しばらく歩いていると、辺りがだんだん明るくなって、変な島の鳴き声も、『チュンチュン』とかわいらしい鳴き声に変わった。そして、バラの花でできた花のアーチをくぐると、まるでおとぎ話の『白雪姫』や『ねむりの森の美女』なんかに出てくる広い森の広場があった。広場の中央には、とても登れそうにない大きい木があった。そしておどろいたのは、その木の葉っぱの色が虹色だったこと。由希もおどろいたようだった。

「春花、すごいね!まるでおとぎの国の世界に来たみたい!でも、こんな所あったんだね!」

「あっ!」

私はある物に目をとめた。それは、小さなかわいらしいリスだった。リスをなでようとした時、どこからか声が聞こえた。

『春花さーん。由希さーん。どこにいますかー。』

周りをきょろきょろ見わたしても、人の気配は全くしない。⋯まさか。リスの口元を見ると、リスの口が動いていた。リスがしゃベってる!?

『どこにいますかー?返事してくださーい。』

すると由希が、

「私たちだけど。」

と言うと、

『そうでしたか。ようこそ!おとぎの国へ!この森にはシンデレラも、ラプンツェルも暮らしています。今日は、春花さんと由希さんにお願いしたいことがあるのです』

おとぎの国?しゃべるリス?虹色の葉っぱの木?何だかわけが分からなくなってきた。

『おや、2人とも困った顔をしていますね。あなたたちが遊んでいた公園と、この世界は繋がっているのです。そうそう、ボクの名前はレイ。今、おときの国、このレインボー王国で困ったことが起きているのです。2人は大きな虹色の葉っぱの木を見ましたか?あれは、レインボーツリーというのです。ふつうだったらレインボーツリーには、魔法の実が実るはずなのですが、実が実らなくなってしまったのです。どうやら、レインボーツリーが眠りについてしまったようで、春花

さんと由希さんにおこしてもらいたいのです。』

「私達にできるかなあ。」

私も由希も、少し心配になってきた。

『あなたたちにしかできないのです。どうかお願いします。そうしないと、レインボー王国が大変なことになってしまいます!!』

「うん!やってみる!」

私たちはレインボー王国を救うために立ち上がった。

「木をおこすためには、レインボーソングという不思議な力かあるといわれている歌を歌わなくてはいけないのです。ても、レインボー王国には、歌が上手な人はいなくて⋯。ボクも、下手なんです⋯。ラララララー♪』

だめだ⋯。私達がやらないと⋯。由希もそう考じたようで、

「私も、春花も歌は好きだから大丈夫!これでも学芸会の合唱のソロの部分まかされてい

るんだから!」

と、自信まんまんに言った。

『ありがとうこざいます。それで、レインボーソングは、この楽ふを見てください。短い歌なので、覚えやすいと思います。』

楽ふを見て、口ずさんでみると、とても明るい歌で、目が覚めてきた。

「これならレインボーツリーもすぐに目が覚めるね!」

 私と由希、少し練習して、いよいよ本番になった。周りには、レインボー王国の王様と、女王様と、町の人々が集まっている。そして、息をふーっと吐いて、息を胸いっぱい吸いこみ、声を出した。

「ラララー♪レインボーソング♪レインボーツリー♪虹の森♪ララララララー♪」

歌を歌い終わると、レインボーツリーの木の枝に、光り輝く虹色の実が実りはじめた。王様と女王様が来て、

「春花様、由希様。ありがとうございます。これでレインボー王国は救われます。」

「春花さん、由希さん。ぜひ、レインボー王国で暮らしてくたさい。」

そう言われた。でも私は⋯。

「でも、家に帰らなくちゃ。今日はすごく楽

しかったよ!こちらこそ、ありがとう!」

由希も、

「私達がみんなの力になれてよかった!」

そう言った。

するとしイが

『それならしかたがないですね。では救ってくれたお礼に、魔法の実を差し上げます』

と言った。

「魔法って、どういう魔法なの?」

『それは、帰ってからのお楽しみです。では、またいつか遊びに来てくださいね!!』

レインボー王国の人々に見送られ、私達はバラのアーチをくぐり、元の世界に帰った。しばらく細い道を歩いていると、だんだん景色が代わり、元の公園に戻った。

 木と木の間の道はなくなり、木と木の間には、何もなくなっていた。でも、手には虹色に輝く魔法の実がある。

「今日は楽しかったね!」

由希に言われ、私も、

「うん!誰かに言っても信じてくれないだろけど、私は今日のことを一生忘れない!!」

と言った。そして由希が思い出したように、

「魔法って何だろうね。」

そう言ったその時、私の手にあった魔法の実がぴかーっと光り、空に舞い上がっていった。そして、空を見ると青空いっぱいにかかった大きな美しい虹ができていた。その虹の色は、レインボーツリーの葉っぱの色と同じ色をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

レインボー王国と魔法の木 雨虹みかん @iris_orange

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ