海音ーカノンー
風と空
第1話 未知との遭遇
時は29××年。
世界は新たな扉を開こうとしていた。
米国最新式潜水艦elucidation《解明》船内で、制服型防具服を着用し、一つの部屋を訪れる男がいる。
扉の前で立ち止まるとセンサーが認証を開始する。
『
「よお、海里。遅えぞ」
室内では三人のクルーが既に席に着いて海里を待っていた。
「みんなが早いんだよ」
苦笑しながら室内に入り空いている席に着く海里。
席には隊長
「良し、集まったな。最終ミーティング始めるぞ」
「「「はい」」」
世田隊長の声に気合いが入る三人。
チーム
トレインという一定の周期で鳴る音波を更に研究した結果、海底にあり得ない様々な金属音が判明。更に一定とは言いがたい更なる微量な音波が発見された。
確かな音源のもと様々な仮説が流れる。海底文明、古代都市、海底人。元々アトランティスと言った沈んだ都市が存在していたのもそれに輪をかけて各国が動き出していた。
音源を突き止めた日本は各国に先駆けて究明に動き出したのだ。
今回チーム海音は、世界で未知の領域と言われる海底10.991m下へ、人類搭載最新鋭探査艇「トレイン」と共に挑む。
ー出発某日ー
「よーく米国が協力してくれたよなぁ」
海里の同僚の田口誡が「トレイン」船内のメーター確認をしながら話し出す。
「この『トレイン』の技術を渡したみたいだぞ。まぁ他にも色々あるだろうがな。結局得たのは先発隊としてだけみたいだしな」
副隊長清水京が言うように、日本の政府の力は米国には及ばない。結果この調査の大部分が米国にも詳細に伝えられる。海里達には知らされていないが、水面下での取引では日本にも多少利益があるのだろうと予想される。
「なんにしてもこの技術は最高だ。1トン以上の水圧に耐えられる外装、船内の気圧調整、空気循環の仕組みを考え出した天才らに感謝だな」
出発前の最終メンテナンス中の海里が言う様に、長年の試行錯誤の結果深海の水圧に耐えれる金属を発明、実用化に成功させた日米政府。
「だが、遺書は書かせられたがな。良し、それぞれ異常ない様であれば出発するぞ」
隊長世田港也の指示の元配置に着くクルー達。深海用装備を着込み、地上の通信メインセンターと連携後米国最新式潜水艦「elucidation」より人類搭載最新鋭探査艇「トレイン」は出港した。
海底一万メートルからの出港。センサーで位置確認、システム画面で海溝の壁を確認。慎重にライトを照らし降りて行くトレイン船内では皆緊張のあまり沈黙が続く。
時折現れる深海魚が今の海底地点を教えてくれる。
真っ暗な海溝を静かに降りて行く「トレイン」。クルー全員が沈黙とポタリと冷や汗をかく中時間だけが過ぎていく。
「最高到達地点突破!」
世田隊長の通信の声にクルーは息を呑む。ここから先は何があるかわからない。
慎重に降下するも、しばらくすると船体からミシッ…… と不気味な音がする。
低周波音波「トレイン」発生源まで後百メートル地点で船体は悲鳴をあげ、内部もまた空気の減少が見られて来た事により通信センターへ帰還連絡をするも「続行」という命が出る。
ここに来てクルーの命は本国より米国に権限がある事が明確になる。
だが最終ミーティングの際、その危険性を予知していたクルー全員静かに諦めという沈黙が流れる。
そして最後に世田隊長がクルーに声をかけようとした時、それは起こった。
青い発光体が下から「トレイン」に向かって上がって来ているのだ。
システム画面に一瞬映ったのは大きなエイの様なシルエット。だがそれはすぐに規格外の大きさである事が判明。
「トレイン」に接触後、そのまま海上へ向かう発光体。「トレイン」の船体も発光体に包まれ、船体の圧迫音も空気圧も安定し、いつの間にか計器は以前の最高到達点を示していた。
発光体はその地点より降下を始め、静かに真っ暗な海底へと姿を消して行く。低周波音波「トレイン」を静かに響かせながら。
その後米国最新式潜水艦「elucidation」に帰還した人類搭載最新鋭探査艇「トレイン」改め「ラッキートレイン」。海里の咄嗟の録画映像により、未知の物体本体の解析が進むが、未だ解明は出来ていない。
因みに四人は米国へ亡命措置を願い、現在功績を認められて国籍を持つ。
結果米国だけが権利を得、日本は赤字を排出したのみという結果に終わる。
そう、未だ深海の神秘は明かされていない。
海音ーカノンー 風と空 @ron115
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