第127話大会初日の終わり2
「いえ……大変大きな思いでこの大会に臨まれているんですね……以上8名がこのA会場から二日目に残った選手達でした」
――――とスタッフさんが一言を添えると撮影は終わった。
俺はアイドル俳優の演技をも凌駕する名演を見せると、気まずい思いをしたのだろう……出場者の二、三年の上級生達は「頑張れよ!」とか「応援している」と言った当たり障りのない言葉をかけると座席を移っていく、気が付けば俺はぼっちになっていた。
「随分な浮き様ですわね」
そう言って声を掛けて来たのは同じく高校一年生の少女マリアだった。
「俺は自分の思いの丈を語っただけなんだけどぁ」
「初対面の方々には重いですわ……それに映像に映えるように立ち回っていらっしゃったでしょう? それはどうしてかしら?」
「……」
この女、洞察力が高いのか? カンがいいのか? までは分からないが俺の意図に気が付いてやがる……
「隣宜しいかしら?」
周囲を見渡すが、座席は選手であろうとも寿司詰め状態で空席はない。
恐らく彼女もその際立ったキャラクター性から浮いたのであろうと容易に想像が出来た。
「どうぞ……」
「では失礼しますわ」
そう言うと彼女は隣の席に腰を下ろした。香水とシャンプーのいい匂いが鼻腔をくすぐる。
「妹さんの事は御不幸だと思います。わたしくが申し上げたい事はもし、わたくしが優勝した場合適切な金額を払っていただけると証明していただければ差し上げるという事です……」
「いいのか? 売って直ぐに換金した方が楽だろうに……」
「
「僕に出来る事なら……」
道路を走るハイエースの中で俺達二人は語る。
「スリーフッドレーヴェンズの立花銀雪さんに紹介していただきたいんですの」
「分かった。もし君が
「金銭の負担は値切らないんですの?」
「手間賃みたいなものだよ。もし君が減額してくれるのならそれに越した事はないけどね」
「日本人特有の玉虫色の御返事には慣れませんわ……あら、ホテルに付いたみたいですわね……ビジネスホテルのような小さなお部屋は嫌でしてよ……」
「番組にも予算があるんだし仕方ないよ」
「それもそうですわね……お夕飯一緒にたべませんか? 日本の
「僕では些か役者不足でしょうが、御供いたします」
「頼もしいですわ。お部屋で用意をして参りますのでフロントで待ち合わせで宜しくて?」
「もちろんです」
後一日と極短い付き合いではあるが、こんな美少女と夕飯を食べられるのだ。
フロントで新しい部屋の鍵を渡される。
着替えなどは全て新しい部屋に置かれているという事なので安心だ。
俺は同じA会場の選手に「お疲れ様です。明日も頑張りましょう」と声を掛けてやり難さを感じさせる。
この程度で委縮してくれる相手なら戦いやすくなるんだけどな……
と心の中で呟いた。
「あら待っていていてくれたんですの?」
「ええ、幾ら探索者とは言え女性ですので、英国紳士のようにスマートとは行きませんが、お荷物ぐらいはお持ちしますよ?」
「ありがいですけど……何もできませんわよ?」
「孤立している僕に話しかけてくれは、貴女だけですからその恩返しです」
「ふふふ……そう言うことでしたらお言葉に甘えて運んで頂こうかしら……」
幸い俺と彼女の部屋の階は同じらしく……キャスターを引っ張って一緒のエレベーターに乗り込む。
いい歳した男女なんだからホテルの階層を分けるぐらいの配慮をしてくれもいいと思うんだけどな……
そんなことを考えていると沈黙に耐えかねたのか、マリアさんは話しかけてくる。
「明日はいよいよです。もしわたくしと戦う事があっても決して手を抜かないでくださいね?」
「他の選手の戦いは一戦も見ていませんが、一日目を突破した猛者相手に手を抜くだなんて、器用な真似が出来るほど僕は強くありませんよ」
「謙虚な事は日本では美徳とされていますが、その謙虚さは世界基準では“嫌味”と捉えられるようなものですわ……その謙虚さは今日貴方が降した選手達にとっても失礼ないいようにも聞こえますわ」
「……確かに、そうかもしれませんね」
俺が返事を返すとタイミング良くエレベーターは俺達が宿泊する7階に辿り付いた。
「さ、荷物を置いて着替えたら楽しく美味しい夕食を一緒に食べに行きましょう。少しお時間を頂くことになるのでLIMEの交換をしませんこと?」
「構いませんよ」
そういうと俺はQRコードを表示した。
「シャカシャカと言うモノをやりたかったのですけど、仕方がありませんわね」
俺は愛想笑いを浮かべ荷物を部屋に運び入れると彼女の部屋を後にした。
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【あとがき】
まずは読んでくださり誠にありがとうございます!
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あとセリフと地の文の改行を1行にするかに行にするかでも悩んでいます。ご意見有ればお気軽にお申し付けください。
誤字脱字も多い事と思いますが、「コレ違うんじゃね?」と思ったりこっちの表現の方が良いと思う、などありましたらお気軽にコメントを下さい。更新中の作品のコメントは全て目を通しており返信もしておりますので、こういうストーリーがいいなどお気軽にお申し付け下さい。
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