第31ー32話焼肉を食べよう(個人店)2


 今日は自分へのご褒美として、焼き肉屋に行く事にした。

前回のホルモン話は振りではないゾと、メタなこと考えながらバイクを飛ばす事約10分、反対車線に個人経営と思われる焼き肉屋、丑屋うしやと書かれた店を見つけた。



「よし、ここにしよう……」



 屋号の書かれた暖簾をくぐり、ガタガタと鳴く引き戸を開けて店内に入る。

年季の入った? 無煙ロースターが|仕事をサボっているようで(ある意味、いい仕事しているともいえる)、ガツンっとニンニクが効いたタレ纏う、肉が焼ける良い匂いが鼻孔をくすぐる。 

 その匂いを嗅ぐだけで、腹の虫が食べさせろ! とグゥと鳴いて意思表示をする。


「お一人様でよろしいでしょうか?」


 店員に案内され、やや小さな網が設置されているテーブル席に通される。



「牛タン、牛カルビ、牛ハラミに牛ロース、ライス大とオレンジジュース、それに牛テールスープと、このキャベツを一人前づつお願いします」



 注文した商品が届くまで、スマホでニュースでも見てみよう。俺はネットテレビ番組をイヤフォンを付けて再生する。


 中年司会者男性の横にいる年若い綺麗系の女性アナウンサーが原稿を読み上げる。


「ああ、ミリオネ屋か……ワイドナショー型のニュース番組好きじゃないんだよね……」


(ワイドナショー型の番組では、コメティターとかいうどうでもいい存在の講釈を聞かなければならず。不快な気持ちになることが多いのでストレートニュースの形式がいい)


『政府は今季の国会にて、特殊地下構造体探索者――――通称冒険者の権利に制限をかける法案を提出すると共に、国内の数か所に特区を設ける法案を衆議院で提出しました。

 政府としてはより円滑な特殊地下構造体――――いわゆるダンジョンの探索・攻略を進めていきたいと言う考えのようです』


(え? 冒険者の権利に制限をかけるって……人権、人権うるさい西洋諸国と反対の事やってる……それに国内の数か所特区に設ける……これって冒険者と言う危険因子を一か所に集めて管理しようと言う策略が透けて見えるんだけど……)


 中年の男性アナウンサーが総合司会者として、番組を回している番組のようだ。


『はい。と言う訳で政府としては、冒険者の権利に制限をかけると共に、国内の数か所特区をに設ける意向を示したという事ですけど……菊岡きくおかさんはどう思いますか?』


 カメラは、カタカナの『ハ』の字になっているコメンテイターと芸能人が向かい合っている全体を映すと、左側のコメンテイターにカメラが切り替わる。


 肩書は弁護士で、ワイドショーで良く見るスキンヘッドのおじさんだ。


『そうですね。冒険者と言う存在は我々とは違い『ステータス』と言う恩恵を得る事で、常人よりも遥かに優れた身体能力に加えて、《魔法》や《スキル》とよばれる特殊な能力を持っている訳ですから、『見えない凶器』を携帯しているような物です。

『弁護士』としても一人の人間としても、法律による厳罰化や警察組織の武装強化で対応し、基本的には冒険者の人権を制限するなんて事は、あってはならない事だと考えています』


『はい、菊岡さんありがとうございました。確かに高い身体能力に加え《魔法》や《スキル》と言ったものは基本的に自己申告制ですから、JSUSAジェイスーサも国もどんなモノがあるか把握していないという事ですから、まさに『見えない凶器』と言う訳ですね。他の方のお話も聞いてみましょうか……』


 ニュースを見ていると、老婆がお盆に料理を乗せて配膳してくれる。


「物騒な世の中になったもんだね。ダンジョン何て息子や孫がやってるゲームの中のモノだったのに……牛タン、牛カルビ、牛ハラミ、牛ロース、ライス大、オレンジジュース、牛テールスープ、うま塩キャベツにサービスのキムチね。ライスはお代わりサービスするからたーんとお食べ」


「ありがとうございます」


 俺はお礼の言葉を言うと、トングを使い皿に盛られた綺麗なピンク色の肉の端に乗せられた牛脂を掴んで、網全体に脂を全体に引く。

こうする事で肉が網にくっ付きずらくなる。ガス火によって暖められ揮発した牛の脂の匂いで腹が鼻孔を擽り、腹がぎゅるりと鳴る。


肉に集中するためにも番組を切ってスマホをしまう。

先ずは味が薄く脂の少ないモノからだ。


 トングを使ってタンを一枚掴み。網の上に網の中心部に肉を置く。これがポイントだ。肉が縮み表面に脂が浮かんで来たところで、肉をひっくり返し焼き色が付けば食べごろだ。


 肉が焼けるのを待っている間に、うま塩キャベツを食べる。


 かなり濃いめ塩味だが、ダンジョンで汗をかいた俺には丁度いい。脂ものは少なめで頼んだが食物繊維を事前に食べておくことで、胃があれたりするリスクを軽減できると以前何かで見た気がする。

 まぁ気休めでしかないが……


 胡麻油に旨味調味料と、ニンニクが良く効いていて旨い。


 うま塩キャベツをある程度食べていると、牛タンが焼きあがっている事に気が付いた。


 甘めの焼肉ダレに少し網目状の焼き色が付いた牛タンを潜らせて、白米の上に一度バウンドさせる。

 こうすることで、牛の脂の旨味と焼肉ダレの旨味を白米に吸収させる事が出来る。


 丼に口を付け空かさずタレの絡まった牛タンとタレと牛の脂の旨味を吸い込んだ白米をかきこむ。


(う、美味い! 牛脂の香りと旨味そしてガス火で少し焦げた部分の香ばしい香りを、バナナやリンゴが入ったフルーツベースの甘目の焼肉タレが優しく纏め上げ合ている……)


 味変で檸檬の風味の効いた塩ダレや少し辛めの醤油ダレと味変をしていく……

 合間合間にうま塩キャベツを摘まんでいく……


 檸檬は風味が豊だけど甘味がないから、甘めのタレに比べると少しパンチが弱いな……でも一番さっぱり食べられて美味しい。


 牛タンを食べる頃にはご飯茶碗は空になっていた。

 ライスを特盛でお代わりして、次はキムチをツマミながらハラミを焼く、赤身肉を濃厚にしたような味わいのこの部位は実は内臓に分類され、部位としてはしゃっくりで有名な横隔膜だ。


 キムチも旨味と唐辛子の辛味そして林檎か砂糖か……ほんのりとした甘みが箸を加速させ米をかきこませる。


 そうこうしている間に、ハラミが焼きあがる。

香ばしい焼き色が付き、表面に脂が浮かんで来たので食べごろだろう……


 トングでハラミを掴むと、カリッとした表面を一瞬撫でるが、少し強めに持ってやると、脂が滲み柔らかな中身のフニフニとした弾力が押し返して来る。


 先ずは塩タレからだ。タレにつけコメの上に乗せ、脂とタレを吸わせたところでコメごと肉をかきこむ。


 ガス火によって焦がされた表面の香ばしい香りに、檸檬の爽やかな香りが加わり、どうしても少しは出てしまう内臓の癖を和らげてくれる。


 カリっとした歯ごたえと内部の柔らかく弾力のある食感の変化が面白い。柔らかい肉質とカリッとした表面で対比構造が出来て、より美味しさを感じる事が出来る。

 赤身肉のように脂の少ない肉質だが、内臓ゆえの濃厚な肉の旨味が口いっぱいに広がる。


 内臓系のペースト感やプリプリとしたゴムのような舌ざわりや食感が苦手で、なおかつ脂身が元々好きではない俺にとって、赤身や赤身に近い肉質の内臓である横隔膜ハラミは特に好きな部位だ。


 次々と焼いている間に牛テールで口直しをする。

 優しい味わいに人参や玉葱セロリの入ったコンソメのような味わい深い優しいスープだ。


 クズ肉や人参、玉葱も柔らかく甘味が付くなっていて体が温まる。


 焼きあがったハラミをフルーツベースの醤油タレに、一度ダイブさせて白米にバウンドさせて白米をかきこむ。


 ガス火によって焦がされた表面の香ばしい香りに、フルーツと醤油の香りが加わり、どうしても少しは出てしまう内臓の癖を和らげてくれる。

 赤身肉のように脂の少ない肉質だが、内臓ゆえの濃厚な肉の旨味が口いっぱいに広がる。


(やっぱり俺は醤油ベースの味が好きだなぁ~、檸檬も良いけどご飯と組み合わせると、柑橘系の爽やかなすっぱい香りは少しミスマッチな気がするんだよなぁ~)


 サイドメニューのキムチ、うま塩キャベツ、牛テールスープを満遍なく摘まみながら口内をリセットしていく。


 口内の脂を洗い流すために都度オレンジジュースを飲むのだがコレがまた美味しい。オレンジの味が濃いのは当然として嫌な酸味やえぐみが全くないのだ。


 次に本命の脂身を食べる。

 トングを使って脂の多いタレの良く絡んだ漬けカルビを一枚掴み。網の上に網の中心部に肉を置く、基本に忠実に中心部の高火力で一気に焼き上げる事で、表面はパリッと中はふっくらとした仕上がりになる。肉がちじみ。表面に脂が浮かんで来たところで、肉をひっくり返し焼き色が付けば食べごろだ。


 空かさずトングで肉を掴みご飯の上にダイブさせるとご飯事、大きく口を開いて肉を頬張る。

 口の中で牛の脂の旨味が爆発し、醤油ベースの漬けタレの焦げた香ばしさい香りが鼻の奥へと突き抜ける。


「美味い。ああ、ダンジョン産の食材ってコレの何倍ぐらい美味しいんだろう……ダンジョン産の食材が数年前から出回っているけど、どれもこれもべらぼうに高いんだよなぁ……オマケに詐欺や食品偽装も多いみたいだし怖くて買えないよ……」


 肉の〆として牛ロースを食べる。

 程よくサシの入った少し厚めに切られた。牛ロースをトングを使って一枚一枚丁寧に掴み。

 網の上に網の中心部に肉を置く、基本に忠実に中心部の高火力で一気に焼き上げる事で、表面はパリッと中はふっくらとした仕上がりになる。肉がちじみ。表面に脂が浮かんで来たところで、肉をひっくり返し焼き色が付けば食べごろだ。


 醤油ベースの甘タレを付けて先ずは一口。


(流石食べ放題系焼肉とは違う中級店。肉の旨味が段違いだ)


 空かさず白米をかきこみ口内を中和させる。

 くどいと感じない程度の程いサシの入ったロースは、特別柔らかい訳でもゴムのように硬い訳でもなく、肩の筋肉として程よい食感に、赤身肉の旨味を備えていて人生で食べて来た赤身肉の中では最上位の美味さだ。


 モンスターの肉はその元になった生物の肉質をより濃厚にしたものだと聞いているので、これより上があるのかと考える少し凹むが今は目の前の肉に集中しよう。


 牛ロースと牛テールスープ、うま塩キャベツにサービスのキムチをローテーションするように食べると見る見ると白米が消費されていく……

 茶碗4杯も米を食べ終わると、デザートにレモンのジェラートを食べて口内をさっぱりとリフレッシュする。


「良い食べっぷりだね。部活かなにかの帰りかい? また寄っておくれよキムチとご飯ぐらいはサービスしてあげるからね。お会計は端数切って5000円だよ」


「でも……」


「若いんだから甘えておきなさい」


「ありがとうございます」


 こうして俺は帰路に付いた。




============


【あとがき】


 まずは読んでくださり誠にありがとうございます!


 あとセリフと地の文の改行を1行にするかに行にするかでも悩んでいます。ご意見有ればお気軽にお申し付けください。


 誤字脱字も多い事と思いますが、「コレ違うんじゃね?」と思ったりこっちの表現の方が良いと思う、などありましたらお気軽にコメントを下さい。更新中の作品のコメントは全て目を通しており返信もしておりますので、こういうストーリーがいいなどお気軽にお申し付け下さい。


読者の皆様に、大切なお願いがあります。

少しでも


「面白そう!」


「続きがきになる!」


「主人公・作者がんばってるな」


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