エピローグ みんなと!

「明日楽しみやね!」

「ね~」


 今日も夜はみーちゃんと電話でお喋り。

 明日はみんなでまたモノポリーをしようって話になってて、楽しみ。


「あ、もう時間遅いよね、大丈夫?」

「うーん、そろそろ寝ようかなぁ」


 あれからというものの、みーちゃんは私のことを気にかけてくれるようになった。それはきっと、ミサンガが側にいてくれるおかげ。


「はーい!」

「ごめんね、でも寂しくなったらそのミサンガ見て思い出してね」

「うん! りんちゃんもだよ!」


 そっか。私はあんまり寂しい気持ちにならなかったから、単にミサンガを見てはみーちゃんのこと大切にしたいなと気持ちを改めてたけど、そうだよね。私もみーちゃんにあいされてる。それがこのミサンガに込められてる。


「わかった! ここからみーちゃんのことたくさん感じるね」

「へへ、ありがと」

「それじゃあまた明日、おやすみ〜!」

「おやすみー!」


 通話を切って、私はミサンガに手を触れる。

 みーちゃんのことを思い出して、あいされてるのを感じる。嬉しくて落ちついて、どんどん幸せな夜に沈んでいく……。




「それじゃあ最初のサイコロ振るねー」


 コロコロ。


 私の部屋で4人が集まってモノポリー。

 前と違うのはみんながミサンガを付けてること、私とみーちゃんが付き合ったこと。きっとそれだけじゃないけども。葡萄やいちごちゃんとの関係性も前とは少し変わったかも……?


 出目は6と6。


 私はコマを持ってどんどん進めていく。

 きっと関係性もたくさん進んだと思う。悪い方向にだって何度か進んだけど、今はいい方向に進んでるって信じてる。


「電力会社のマスだよー、林檎は買う?」


 銀行役を務める葡萄からそう訊かれる。

 手首には『ぶどう』色のミサンガが付けられていて、すごく似合ってる。

 葡萄はどんな願いを込めたのかなぁ。


「あー、買う!」


 そう言って150ドルを葡萄に渡す。

 ついでにその時に見えたミサンガに口を出す。


「そのミサンガほんと似合ってるよねー」

「えぇー、そんなお世辞言われても何も出ないよー? んーでも100ドルにまけてあげようか?」

「出てくるのはやい!」


 私は笑いながらそう言う。

 でも少し気になってたことが。


「あ、でも葡萄はどんなこと願ったの?」

「それうちも気になっててん! ぶどっちはどんなお願いしたんやろー?」

「ヒ・ミ・ツー! まあ真面目にちょっと秘密だから、探らないでくれると嬉しいかな」


 あれ? 葡萄にしては珍しく真面目かも……?

 き、気になる……。


「わかった! うちはこれ以上詮索しないね! おしゃれ! かわいい!」

「ありがとー!」


 みーちゃんはコロッと話題を変えて葡萄と仲良くなってる。みーちゃんもいい子になった気がして嬉しい。むしろ私は葡萄のその秘密が気になっちゃって探りたくてしょうがない気持ちになっちゃって、私はまだまだだなーって感じる。みーちゃんのこと見習わなきゃ。


「似合ってる! かわいい!」

「いちごもそのミサンガ似合ってると思うよ〜」


 と、葡萄のミサンガ褒めちぎり大会に。


「い、いやーそんなに褒められちゃっても……へへ。ま、まあ、と、とりあえず続けよ!」


 そんなわけでみんな進めていく。

 しばらくターンを進めて、みんなそれぞれの土地に家が何件も建って、中盤真っ盛り。そんな中、私のターン。


 コロコロー。

 出目は1と1。

 ゾロ目はもう一度自分のターンだから嬉しいけど……。2って……。


「は〜い、そこはいちごの土地! えーと、家がこれだから……800ドルを請求します!」


 いちごちゃんはミサンガをした手を出して800ドルを要求する。


「あ、そのミサンガかわいいよね!」

「そんなこと言われてもいちごは値引きしないよ〜?」

「うぐー、だめかぁ……はいこれ」


 私は諦めたように800ドルを渡す。手持ちの資金のほとんどが無くなってもうだめかも……。


「は〜い、ありがとね〜!」


 いちごちゃんの笑顔を見ると、その可愛さにもういいかな、なんて思えてしまって、前のモノポリーのことを思い出してしまう。


 あの時の私はいちごちゃんに見惚れて、私の気持ちの面ではある意味出目は1と1で、うまく成長できなかったかも。でもあの時の私があって今の私がいる。葡萄がいたからこそあそこから立ち直って、いちごちゃんとも仲直りできて、でもその経験はその時の未熟な私から生まれたものだと思うから。


 今もきっと未熟な部分はたくさんあると思うけど、でもでも成長はできてるはず……!


「え、りんちゃんお金取られたのに嬉しそうにしてへん? うわき……?」

「え、違う! ごかい! ほら、いちごちゃんがミサンガしてくれて嬉しいな、みたいな」

「そう? んーまあいいや、そうやんな、ミサンガすごくかわいくて似合ってる」

「ね!」

「ふたりともありがと〜」


 どんなお願いごとしたのかな……。気になるけど、やっぱりやめておこう。きっと私とみーちゃんで結んだ願いのようにあんまり言いたくないことなんだろうから。うん、私成長できてる、えらい……と思う。




 そのまま時が進み、終盤の誰かの土地に止まったら即ゲームオーバーの一触即発の状況に。

 そんな中私のターン。


 ころころ。

 1と6。

 駒を進めていく。

 いち、にー、さん、し、ごー、ろく、しち!

 あ!


「はーい、2500ドルです! りんちゃんありがとー! ってあれ、そんなにお金ない……?」


 とみーちゃんが言う。そんなお金、ない……。


「は、破産です……」

「ふふふ……それじゃあまたあれやろっか」


 あれ?

 あれってなんだっけ、確かに何かした気はする……。


「りんちゃんは破産しちゃったので、それくらいならうちのところに来て一緒にやろうよ!」


 そう、確かそんなのだった!


「りんちゃん、うちと『けっこん』という形で一緒にやってこーねー!」


 あれぇ……? そうじゃなかったような……?

 けっこん……? けっこん!!!


「あ、あの……よろしくお願いします……」


 私は嬉しくて恥ずかしながらもみーちゃんの側に行き、言葉通り手中に収められて、頭を撫でつけられる。


 けっこん……。

 私はゲームのことなんか忘れてみーちゃんと結婚したら……を想像して、顔が綻びきってるのを感じても嬉しさに止められなくなる。


 葡萄がいちごちゃんの方を向いて口を開く。


「ねえ、いちごちゃん、もうこれ実質みかんちゃんの勝ちじゃない?」

「確かにね〜、なんだか勝てる気がしないよね〜、ふふ」

「でもせっかくだからわたしらも『けっこん』しちゃおっか」

「いいよ〜! いちごたちもまだ負けてらんないもんね!」

「わたしらのラブパワー見せてやるー! って言いたかったけど流石に本物見せられるとそうも言えないかも……」

「こっちは本物やからね、ふん、掛かってきぃ!」


 というわけで、結局。

 葡萄&いちごチームはみーちゃんの2500ドルに引っ掛かってゲーム終了。私たちのラブパワーの勝利! ってことになるのかな……?


「やったねりんちゃん!」

「うん! けっこんしちゃったね!」

「せ、せやな!」

「林檎とみかんちゃん、けっこんおめでとー!」「おめでと〜!」


 葡萄といちごちゃんが冗談めかしてそう祝福してくれる。本当に結婚したわけじゃないけど、もう気分は結婚でしかなくて


「うん、私みーちゃんと結婚したの! ありがとね! ね、みーちゃん!」

「うん! うちら結婚しました! えっと……これからも幸せな家庭を築けていけたらいいなと……ってなにこれ結婚スピーチになってるじゃん!?」


 みんなそれに大笑い。

 私も笑っちゃったけど、冗談だけにはしたくなくて、みーちゃんの耳元に囁く。


「でも大人になったらほんとに結婚しようね」

「……うん!」


 みーちゃんはさっきまでの笑い声とは一変して、黙って顔を赤くさせてしまう。


「あれ、林檎、みかんちゃんに何言ったのー? みかんちゃん顔真っ赤にしておかしくなってるよー? うーん?」

「ひ、ひみつ!!!」




 私がみーちゃんとこんな関係になれたのは、私とみーちゃんだけじゃ絶対にできなかった。

 葡萄の支えがなかったら私、自暴自棄になってたかもだし、いちごちゃんがみーちゃんの支えになってくれなかったらきっと今のみーちゃんもいない。


 だから私はみーちゃんも、葡萄も、いちごちゃんも、私が愛せるだけ愛したいと思う。この気持ちはまるでみっくすじゅーすみたいに混ざった気持ちかもしれないけど、きっと大切なものだと思う。


 そんな大切を抱えてるから、きっと葡萄やいちごちゃんと特別に繋がる世界線もあったのかもしれない。


 だけど私はみーちゃんとがいいの。たくさん気持ちを通い合わせたみーちゃんが特別いいの。だからみかん風味のみっくすじゅーすで気持ちを満たして今日も明日も生きていく。そうして大人になったら……みーちゃん、結婚しようね!

 


 

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みっくすじゅーす。 だずん @dazun

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