135 開戦派の動向を探る依頼の達成

 午後の議会。議会に逃げることなく出席したリードリヒ・サトゥルヌスさんは、アルベール・オーベルさんの報告により窮地に立たされることとなった。

 サトゥルヌス家への非難と責任の追求が折り重なり、共和国への謝罪の意味も込めて、開戦派の首魁であったリードリヒ・サトゥルヌスさんには死罪が言い渡された。


 リードリヒさんは困惑した表情でそれを黙って聞くと、力なく頷いて返事をした。

 連れて行かれるリードリヒさん。

 そうして共和国の使節団への正式な謝罪が議会で決定された。


 まさか実際にリードリヒさんの首を添えるわけでもないだろうが、共和国の使節団への正式な謝罪が議会で決定されたのはとても大きい。今回の事態の終幕にふさわしいだろう。


 午後の議会を聞き終えた私達は宿へと戻ると、お風呂に入り、戦の疲れを落とすように目一杯眠った。




   ∬




 翌朝。冒険者ギルドへと寄った私達。

 レアさんが私達に対応する。


「こんにちはセーヌさん。Sランクの開戦派の動向を探る依頼。達成と判断させて頂きます。こちらSランク依頼達成報酬の2万エイダです。それからニール王から今回の騒動の褒美として一人10万エイダを預かっています。それからセーヌさんには男爵位を与えるとのことで、リライアブルの性も授かりました」

「リライアブル……では今後はセーヌ・リライアブルと名乗らなければならないのでしょうか?」


 私が驚きと共にそう尋ねると、レアさんが首を横に振る。


「ラフバインさんも数々の偉業で王から姓を授かっていますが、本人は名乗っていません。ですからこればかりはセーヌさんの自由ですよ」

「そうですか……それでしたら、今後もセーヌとお呼びください皆さん!」


 私がそう言うと、リエリーさんが「はい! セーヌさん!」と言い、ネルさんが「了解。セーヌさん!」と微笑んだ。


「それから、ファルゲンさんとラフバインさんから、セーヌさんを超級冒険者にとご推薦頂きました。私としてもセーヌさんの今回の活躍を鑑み、特級から超級への昇格を決定しました。おめでとうございますセーヌさん。超級冒険者に昇格となります」

「それは……私なんかが良いのでしょうか?」

「はい。それだけの活躍をして頂けたかと……!」


 レアさんが私の顔を見て微笑む。


「そう言って頂けるととても嬉しいです。超級冒険者、謹んで拝命させて頂きます!」


「おめでとうございますセーヌさん!」

 

 リエリーさんが祝福してくれる。


「良いなぁ私もなってみたいです!」

 

 ネルさんが羨ましがる。


「そうだ! それでしたらリエリーさんとネルさんのお二人を特級冒険者に推薦できますよね!」


 私が思いついたように言うと、リエリーさんが「私は辞退させてくださいセーヌさん。まだツバキさんに教えて頂いた特級片手剣術も満足に習得できていませんので……」と私の申し出を辞退する。


「そうですか……それではネルさんは?」

「はい! 是非よろしくお願いします!」

「分かりました。それではそのように……」


 口頭でも良いのだろうか? レアさんの顔を見る私。


「分かりました。ネルさん、特級冒険者に昇格となります。おめでとうございます」


 レアさんがネルさんに微笑む。


「やった! セーフガルドでは上級止まりだったのでとても嬉しいです!!」


 私達は冒険者カードをレアさんに預けると、それぞれ階級を更新して貰った。


 そうして再び自分で冒険者カードを水晶に当てる。


 【超級冒険者S】。

 超級冒険者としての経験を飛躍的に成熟させる。

 また特級冒険者への昇格をギルドに進言できるようになる。


 【見破るA】。

 隠れている存在を元素の流れから見破る事ができるようになる。


 【同族殺しC】。

 同族を殺した者に与えられる。

 同族を相手にする際に有利に立ち回れる。


 きっとラフバインさんやファルゲンさんと行動を共にし、それから昇格したからだろう。

 超級冒険者スキルをSランクで得られていた。


 次に特級暗殺者の居場所を見破ったからだろう。見破るスキルを得られている。


 そして同族殺しスキルを獲得している。

 私も今回初めて人を殺めた。

 このスキルはその印であり、私に背負わされた十字架でもあるのだ。

 今後もできるだけ人は殺さず在りたいと思うが、しかしそれは甘えなのだろう。

 やるべきときはやるしかないのだ。


 水晶でスキルの確認を終えると、私達はレイナ姫へ依頼達成の挨拶をしに行くことに決めた。

 王城区でレイナ姫への面会申請を出して冒険者ギルドで返事を待つと、お昼すぎにはまるでそれが当然とばかりに冒険者服に身を包んだレイナ姫がレェイオニードさん、リネスさんの二人を伴って私達の元へとやってきた。


「セーヌさん! 今回も本当に有難う。助かったわ!」


 レイナ姫が私の手を取り言う。


「いいえ、私は私に出来ることを頑張っただけです」

「そうよね! セーヌさんはそういう人だったわ! また何かあったら呼ぶんだから、覚悟して頂戴ね!」

「はい……! そのときはまた精一杯頑張ります」


 私達はレイナ姫への報告を済ませると、宿へと戻った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仲間を集めるために冒険者ギルド受付になったセーヌさん。ユニークスキル研修生Sの効果で、教えて貰ったスキルがSランクに!最強の弟子は地道に日々を過ごします~今日も1日頑張りますっ!~ 成葉弐なる @NaruyouniNaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ