第42話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】18
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諸々の騒動から数日後。
ユートは実に解放的な1日を過ごした。
生徒会長は約束通り、ユートを生徒会からやめさせてくれたのだ。
旧魔王軍幹部の襲撃については、情報が錯綜しているようだったが、国の上層部や学園の大人達が上手い具合に誤魔化しているらしい。
ユートにとっては、平穏な日常が戻ってきたのである。
風紀委員達とは、学園内ですれ違うくらいはする。
しかし、怯えた顔をされて避けられていた。
死者蘇生、それもバラバラになった者の蘇生など伝説の聖女か賢者くらいにしかできないことだ。
それを、ただの一般人、それも文字通り何処の馬の骨ともしれない奴がやってのけたのである。
不気味がられるのは当然の事だった。
他の生徒たちにはこの事は伝えられていたが、それよりも生徒会役員を辞めた、あるいは辞めさせられたという話の方が、話題になっていた。
だから、嫉妬こそなくなったものの、誹謗中傷は相変わらずだった。
むしろかなり酷くなったと言っていい。
なにしろ、ガーラ襲撃の際にユートは表向き学園にいなかったのだ。
役立たず扱いされて当然だった。
しかし、ユートは快適だった。
好きな時間に寝て、今日から趣味に勤しむという日常が戻ってきたのだから。
生徒たちの間では、黒マント男のことが噂になりつつあった。
子供たちを救ってくれた英雄だ、と捜し始めている家もあると言う。
いざという時、役に立たない英雄より、助けてくれた怪人の方が余程英雄らしいということだった。
ユートが風紀委員以外のけが人や死者となった生徒も蘇生させたことは、どうやら都合よく記憶から消えているらしい。
「なんでまだ学園にいんの、あいつ?」
「さぁ??」
「大変な時に、学園から逃げたんだろ」
「そう聞いてる」
「役員もクビになったっつーのに。
ほんと、恥知らずだな」
一日中、こんな言葉を投げかけられた。
しかし、ユートは寝てたので耳に入ってすらいなかった。
ユートを目の敵にしている生徒たちにとって、やはり風紀委員達を蘇生させたことなんて、記憶の彼方なのだ。
アイリやエディからは、黒マント男について、お前だろと問い詰められたが、違うの一点張りで通した。
もしもそこでその事を認めてしまったら、ユートが旧魔王軍の大幹部を討ち取れるだけの実力者であることを認めることになる。
それだけではなく、ユートが本来なら魔族にしか使えないはずの暗黒魔法すら楽々使うことのできる存在と認めてしまうことにもなるのだ。
正確には人間は暗黒魔法を使えなくは無い。
けれども、それには寝たきりか死というリスクがある。
だからこそ、本当のことを馬鹿正直に話す訳にはいかなかったのである。
この対策はすでにしておいた。
なにしろ、ユートには完璧な
黒マントの人物が魔族相手に学園で暴れていた頃、ユートはチェスタとともに学園近くの喫茶店にいたというアリバイがあるのだ。
これは生徒会長達がきちんと裏取りをしたので、証明されている。
種明かしをすれば、ユートの実況を楽しみにしているという喫茶店の副店長と、その上司である店長が口裏を合わせてくれたのだ。
チェスタのみならず、喫茶店の従業員がまさかユートと掲示板で繋がっている、ということを知らなければ、表向きそんな口裏を合わせる必要が無い。
だから、アリバイを信じてもらえたのである。
イーリスはいつものように、ユートを庇おうとした。
けれど、やはりいつものように他の生徒に止められてしまう。
ユート自身も、
「本当のことだから、イーリス様も気にしなくてイーヨ」
なんて口にした。
そんなこんなで、放課後となった。
誰もいなくなった教室に、ギシギシと縄が揺れる音が聞こえてきた。
『まったく、貴族のクズ共なんて見捨てれば良かっただろ』
ユラユラとブランコのように揺れながら、幽霊の少年が言ってくる。
「そういうわけにもいかないもんでね」
幽霊の少年は呆れ顔のまま、揺れていた。
ユートは構わず携帯端末を取り出すと、操作した。
掲示板を表示させる。
次の実況先を決めるのだ。
「さて、と。
とりあえず安価かな」
本当に久しぶりに、ユートは楽しげな笑みを浮かべるのだった。
■■■
【報告スレ】
1:魔眼保持者
次の凸先、安価しに来た
あと、ついでに報告も
2:魔眼保持者
この前のメチャ強な魔族について知りたいと思って
3:名無しの冒険者
お、
4:名無しの冒険者
待ってた
5:名無しの冒険者
あ、建ってる
6:名無しの冒険者
>>2
なにかわかったんか?
7:魔眼保持者
俺を誰だと思ってる
魔眼保持者だぞ、魔眼保持者!
実は倒した時に色々情報をすっぱ抜いておいたんだ
8:名無しの冒険者
それ、流しても大丈夫なん?
9:魔眼保持者
大丈夫大丈夫
注意喚起も兼ねて、王宮、つーより我らが女王陛下がそろそろこのこと公表するから
情報ギルドにはもう流れてるはずだ
10:名無しの冒険者
マジか
11:魔眼保持者
とりま、あの魔族の目的は
ほぼほぼ、考察厨兼迷探偵が考察したとおりだった
ただ、向こうも情報が錯綜してたらしくてな
立て続けに、企てが失敗→それには、どうやら英雄ヴィンセントだけではなく、ほかのメチャ強な奴が関わってるかもしれない、と推測が立った
同時に、【英雄さん】の噂も耳にしていた
ほかにも、王立魔法学園の生徒にこの【英雄さん】と繋がりがある人物がいるかも、という情報が入ってきた
その情報もとにあの魔族、ガーラは生徒を襲って、【英雄さん】に繋がりがある生徒を見つけ出そうとしていた
生徒を殺してたのは、もしかしたら【英雄さん】が生徒の中にいるかもって考えたから、らしい
12:名無しの冒険者
あー、考察スレだかどっかで話題になってたやつか
13:名無しの冒険者
つーか、その英雄さんって、スレ主のことじゃん
14:魔眼保持者
ま、そうなんだけどな
15:魔眼保持者
俺の顔を知らなかったのは
単純に俺と【英雄さん】が結びつかなかったから
つーのも、旧魔王軍の残党にも派閥みたいなのがあるらしい
今回のガーラの派閥と、指輪の研究してる派閥は仲悪いらしい
んで、旧魔王軍の残党の本部ってのが別にあって
ここの主導権争いを、この2つの派閥がせこせこやってるみたいだ
16:名無しの冒険者
残党の中でも派閥争いあんのか
17:名無しの冒険者
そりゃ、あるだろ
組織だもん
18:名無しの冒険者
うわぁ、パワーバランス崩れたから
残党は残党で一波乱ありそう
19:魔眼保持者
ぶっちゃけ、どう出てるくるかわからない状態らしい
現状、国としては今の魔族の国とは表向きは仲良くやっていきたいってのが本音みたいだ
魔族側もそれは同じらしい
なにしろ、戦争でズタボロになって
ようやく復興してきたところで、このトラブルだ
20:名無しの冒険者
今の魔王からすると、余計なことすんな状態だな
21:名無しの冒険者
表向きってのが、不穏だな
22:魔眼保持者
正直、今の魔王は穏健派で
かなり人間に対して友好的らしい
でも、人間側からしたらそうでもないだろ
23:名無しの冒険者
まぁなー
24:名無しの冒険者
政治、むずかちぃ
25:魔眼保持者
ま、難しいことはここまでにして
安価すっぞ!安価!!
嫌われ魔眼保持者の学園生活 ~掲示板で実況スネーク活動してたんだけど、リアルで身バレしそうwww~ ぺぱーみんと @dydlove
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