体験談4ー原拓人氏ー

 あれは変な出来事だった。

 俺の趣味は登山でな。その日は八ヶ岳連峰、赤岳の登山に仲間三人と向かったんだ。一泊二日の計画で、天気も二日間良い予報だったから安心して登り始めたんだ。

 俺も仲間も登山好きで皆んなそれなりに登山経験があった。勿論、山ってのは危険と隣り合わせだ。油断せず一歩一歩踏み締めて登っていった。

 途中、仲間の1人が足が痛いと言い出した。おろしたての靴を履いていたからそれが原因だと思った。

 一度靴を脱がせて、見てみると足裏に魚の目が二つ出来ていて、踵の方が靴擦れで血が滲んでいた。

 何でこんな足で来たんだって言ったらどうしても登りたかったんだって言うんだ。

 馬鹿なやつだなって言って仕方ないからすぐに下る事にしたんだ。

 俺は登りたかったけど足痛めてる仲間を1人山を降りろっていうのも酷だから皆んなで降りて、近くでホテルとって飲もうってなった。

 話がまとまって山を降りようとした時に不気味な雰囲気に包まれた。

 俺は辺りを見渡して、静かに様子を伺っていたんだ。

 そうしたら上の方でトボトボと歩く人影があった。もしかして幽霊かと思ったんだけど、そうじゃないって直感的にわかったんだ。

 時間が経つにつれて人影は増えていってだんだん俺も怖くなってきたんだ。

 そんな時に、人影の中にいた黒い影がこっちに向かって手を振ってきた。

 俺は手を振りかえした。普通得体の知れない相手に手を振りかえしたりしないと思うんだが、その時はそうする必要があるって思ったんだ。

 そうしたら不気味な感覚は消えて、何事もなかったかのように仲間は話している。

 俺は幻覚を見たのかとおもったのだが、どうもそうではないとわかるんだ。

 それから、俺たちは山を降りたよ。けど、あれは本当に不思議だったよ。

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