体験談1ー川角牧人氏ー

 あれは一昨日の昼頃だ。

 天気も良かったし、気分転換にと思って散歩に出ていたんだ。

 そうしたら、突然大きな揺れが起きた。

 普通なら携帯は地震発生を知らせるアラームを響かせる。なのに、その時は沈黙を保っていた。

 立っていられなかったから近くの電柱にしがみついた。本当は危険なのはわかっていたけどそれどころじゃなかった。

 揺れがおさまったのは30秒後位だ。ため息をついて電柱から離れた。

 そしたら、どうだい。あたり一面瓦礫の山だ。自分の立っている所だけが無事だった。

 奇跡的に助かったのだと思った。

 だけど、すぐに変だと思った。確かに激しい揺れだったけれど、こんな悲惨な状況になる一部始終を見ていないどころか、建物が倒壊するような音も聞いていない。

 混乱してその場で立ち尽くしていると、瓦礫の山から何かがこちらに向かって歩いてくる。

 じっと見つめていると、何かはこちらに向かって手を振った。

 それに応じるように自分も手を振った。

 その瞬間に頭が真っ白になって、視界が赤と黒に染まった。

 そこからは何も覚えてない。

 でも、目を覚ました時には家のベットに寝転がっていたんだ。

 夢かと思ったけど、あの経験は現実だったようにしか思えないよ。

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